長く愛されるアートのような服づくりを―――
森ガールのカリスマだった野口アヤさんの現在地

アートギャラリーのオープン、そして脱トレンドを果たした服づくりへ

その後、【Salon de Balcony】は2017年に終了し、本店にしていた代官山の古民家はアートギャラリーへと変貌を果たします。


「ファッションと同じくらいアートも好きで、美大で勉強もしてたから、ずっとアートギャラリーをやりたいという気持ちがあって、だんだんその想いが強くなったんです。それで【Balcony】を辞めて、この建物の1階をアートギャラリー、2階をオフィスへと改装し、2017年に『SISON GALLERy』をオープンしました。でも20年以上服作りをしていたものだから、ブランドを辞めて一年後にはまた服を作りたくなってしまって(笑)。やれる範囲、かつ、やりたい範囲で自分のものづくりをすることにしたんです」

野口さんの現在のブランド【ayanoguchiaya】は、型数こそ少ないけれど、一着一着への向き合い方がとても濃厚。【Balcony】のエッセンスはありつつも、装飾性は削ぎ落とされたぶん、工程へこだわり、たくさん作れないからこそ、販売方法は展示会と期間を絞ったオンラインでの受注のみと非常にミニマムです。

「【ayanoguchiaya】はいわゆるセミオーダー式なんですが、お客様の希望や体型に合わせてカスタム対応もしていて、その人のためだけの服を作っている感覚です。なるべく自分で、目の届く範囲でやっているからできることなんですよね。そうすることで、気持ちや手間をどのくらい込めたものなのか伝わりやすいし、手に取る人にも絶対に喜んでもらえる。私が作っているのは服だけど、アートも同じことかな、と思っています。アートも一点ものですもんね。それもすごく手の込んだ。アーティストとも共感し合って、ほぼ毎回コラボレーションしています。今年の春夏の新作では吉野マオさんとコラボしてて、私が初めて購入した吉野さんの作品を生地に使って【ayanoguchiaya】で毎シーズン出している型のスカートやパンツを作りました。展示会でも大好評で、特にパンツは一番オーダーいただいたんですよ」

「洋服が消費されて捨てられて、新しいシーズンに新作が出て、というサイクルから離れたかったんですよね。だけど、それって洋服を作ることと矛盾してる。やっぱり新しい何かを作らないと買ってもらえないし、買うなら目新しさを求めてると思うし。そのバランスがすごく難しい。今はトレンドではなく、アートとのコラボで新鮮さを表現できたら、と思っています。洋服もものづくりの一環だから、洋服もアートも陶芸も同じ壇上で考えたいんですよね。【ayanoguchiaya】の新作展示会で新しさを表現する柱にしているのは、アーティストの作品を使ったコラボテキスタイルと、それに合わせて定番アイテムを色や素材で変化をつけることの2本。このギャラリーの建物のように、長く大切に愛される服づくりが今の私のテーマです」

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4月12日、13日に石井佳苗さんらと衣食酒住イベントを開催

『SISON GALLERy』では「古いものを大切に未来へと繋いでいきたい」という野口さんの思いに共感するクリエイターと一緒に、不定期でマーケットイベントを行っています。今年は「衣食住酒」


がテーマのフリーマーケットを開催予定。


インテリアアイテムや器、服やアクセサリーなどのセカンドハンドを選びながら、ナチュラルワインとお寿司でひと休み、と春の休日をゆっくりお得に楽しめる、まさに「衣食住酒」な内容。


「衣」を担当するのはもちろん野口さん。「食」は1日目を金工作家で菓子制作家の川地あや香さん、2日目を寿司屋で服飾作家の井出雄士さんが担当。


「住」は大人気のインテリアスタイリスト石井佳苗 さん、「酒」は『Wine shop bulbul』オーナーの鈴木純子さんが担当します。


「仕事柄増えに増えたファッションアイテムを出品します。今回はかなりたくさんになりそう。石井さんも、5年ぶりに倉庫大放出するとあって、インテリアアイテムから復職系まで、思い切って出品してくれるそう。ショッピングバッグや梱包材をお持ちになってご来場ください」

Flea market “衣食住酒”


開催日:2025年4月12日(土) 13日(日)


時間:11:00〜18:00


場所:SISON GALLERy 東京都渋谷区猿楽町3-18

Photograph/YUUMI HOSOYA


Text/ERI NISHIMURA