【MotoGP】マルク・マルケス、なりふり構わぬ戦略でアメリカズGPスタート中止もぎ取る「自分の戦略に確信があった」

 MotoGP第3戦アメリカズGPの決勝レーススタート直前に、マシンを乗り換えることを決断して混乱を引き起こしたマルク・マルケス(ドゥカティ)だが、そこには彼の明確な意図があった。

 アメリカズGP決勝は、スタート直前に大混乱が発生した。ウエット宣言がされ、フラッグ・トゥ・フラッグによるマシン乗り換えが許可されていたが、ウォームアップのスタート直前にマルケスはグリッドからピットへと猛ダッシュ……スリックタイヤを履いたマシンに乗り換え、ピットレーン出口に並んだのだ。

 そして、他のライダー達はこれに反応してピットレーンになだれ込み、状況は大混乱。レースディレクションは赤旗を出し、レースは仕切り直しになった。

 マルケスはその後の決勝レースで中盤に転倒して勝利のチャンスを失ったが、スタート前の一連の動きはレインタイヤの選択は失敗だと考えたマルケスが仕掛けた戦略的な動きだった。

 レース後、マルケスはMotoGP.comに対し次のようにスタート直前の動きを説明した。

「僕はルールはしっかり理解している。そしてどうすればいいのか、どうやれば限界を走れるのかを常に考えている」

「スタートの7分前に、チーフメカの(マルコ)リガモンティにセカンドバイクの用意はできているかと聞いたんだ。彼の答えは“イエス”だった。そこで僕は『グリッドを離れるかもしれない』と言っていた」

「それは何故か? 僕はレインタイヤが既に適切な戦略ではないと見ていて、(グリッドを)離れることを予想していたからだ。実際、グリッドを離れたとき、10人以上のライダーが僕のマネをすれば、スタートが中止されるだろうことは分かっていた。そしてまさにその通りになった」

「僕は自分の戦略に確信があった。仮にライバルが真似をしなくても、僕は最後尾からスタートして、レース中に追いつこうとすることができただろう。ペースはあったからね」

 なおマルケスが言及しているスタートの中止については競技規則第1.18.16条にある『安全上、10名より多いライダーがピットレーン出口からスタートする場合、スタートを遅らせ、新たなスタート進行を行なう』という条文が念頭に置かれている。

 ただ今回マルケスに追随して乗り換えを選んだのは11人に達していなかった。しかしレースディレクターのマイク・ウェッブは、安全上の懸念を理由に赤旗とすることを決定……人数こそ足りなかったがマルケスの思惑通りに仕切り直しとなったというわけだ。

 なおレースディレクターによるコメントは、以下の通りとなっている。

「安全上の懸念から、我々はディレイ、そしてクイックリスタート手順を求めた。ピットレーンにいたライダーやバイク、スタッフの人数を考えると、ウォームアップラップを開始することは不可能だった」

「リスタートは前例のない状況に対して対応する最も安全な方法だった。我々はこの状況をチームと共に分析し、ルールを見直すつもりだ」