【後編】ミシュラン掲載店など有名シェフが続々プレゼン!「東京の多彩な食と心を紐解く旅」へ

東京の食の魅力発信2025実行委員会および東京都は、東京の多彩な食の魅力を体験してもらうプレゼンテーション・イベント「東京の多彩な食と心を紐解く旅」を、2025年3月に開催しました。レポート後半の今回は、ミシュランガイド掲載店でもある「精進料理 醍醐」による【未来】の料理をお届け。【江戸】【現代】【未来】と続いてきた、最後のプレゼンテーションでは「食の都、東京」と呼ばれるゆえんが少しずつ明らかに。

「精進料理 醍醐」野村祐介氏による、目からウロコの食文化解説

右が「精進料理 醍醐」4代目の野村祐介氏。記者たちに食文化を語る

イベントの【未来】の料理を担当された「精進料理 醍醐」(東京・神谷町)は、「ミシュランガイド東京」に2007年から18年連続で掲載されている名店。

さらに「ミシュランガイド東京2025」で新たにグリーンスター(持続可能なガストロノミーに対するシンボル)を獲得し、2部門で選出されて注目を浴びています。

今年、創業75周年を迎える老舗料亭の4代目 野村祐介氏は、店では懐石形式で精進料理を提供していますが、もともとはフランス料理店で修業した経験もあります。バーテンダー勤務の経験もあり、ソムリエの資格も保有。パリ2024パラリンピック競技大会パラ応援大使も務められ、東京観光大使でもあります。

東西の食文化の比較と、それぞれの発展の仕方について話す野村氏

イベントの冒頭で野村氏は、実はすしやうなぎ、そばが江戸時代は屋台の食文化として定着していたことや、「日本の水が世界的に見てもやや軟水であることから、鰹やサバなどのだし文化が開花しました」などと説明。

さらにみやびな文化を長年発信してきた京都では、川魚がメインに使われ、それに合うような繊細な味わいの野菜料理や薄口しょうゆが発展したこと。

一方、武士たちによる豪華絢爛な文化を発信した江戸では、東京湾で新鮮な魚介が水揚げされたので、それに合う濃口しょうゆを多用してきたこと。

その影響で江戸時代のうなぎの蒲焼は、甘からい濃厚な茶色のタレになったことなどを説明されました。

(広告の後にも続きます)

すべての人のためのヴィーガン懐石で伝える、持続可能な多様性

カボチャやこんにゃく、ポルチーニなどに味噌ダレをかけた「朴葉焼」。

【未来の多彩性プレゼンテーション】のテーマは「Sustainability & Diversity」。「食とは誰もが楽しむもの。国籍も宗教も、年齢も問わず、すべての人に開かれているべきもの」という野村氏の思いが詰まったお料理の数々。

1品目の「朴葉焼」はカボチャやこんにゃく、ブロッコリーなどに濃厚な味噌だれをかけた料理。ネギ味噌や九条ネギ、山山椒なども使っているのでかなり風味が豊か。世界三大きのこの一つであるポルチーニやモリーユといった、フレンチでもおなじみの高級食材も使われていて満足感もあります。

枯葉ですら、もったいない精神で「朴葉焼」に活用すれば、芳醇(ほうじゅん)な香りを料理にまとわせられ、創作性の高い見栄えに工夫できる。そんな野村氏のメッセージも受け取れます。

3月らしくひな祭りを感じさせた「八寸」

「八寸」はうまみの広がる八色椎茸、長芋、麩、金柑、菜の花、豆腐など。紅・白・緑の3色のひしもちに見立てた豆腐(上写真の右上側)には、金柑や桃の花、梅の形に仕上げた京人参が飾られています。弥生の月らしくひな祭りが可愛らしく表現され、私たちの目を楽しませてくれます。

一期一会という言葉は、人と料理にも言えること。「今、ここでだけ味わえる価値」を追求した料理は、季節の移ろいやそのはかなさまで感じさせます。

プラントベースフード(植物性食品)を使用した完全なるヴィーガン料理、精進料理ながら、物足りなさはみじんも感じられなく、高貴な精神性がそこには静かにたたずんでいます。