【三浦泰年の情熱地泰】予選で苦戦するブラジル、最速で決めた日本。W杯や代表への価値観も移り変わる?

 南米ワールドカップ予選――。

 ブラジル代表がアウェーの地、ブエノスアイレスでアルゼンチン代表に1-4で負けた。オンタイムで確認していなかった自分は、サンパウロの知人から電話をもらいショックを受けた。
 
 その頃、日本代表は早々とワールドカップ(W杯)8回連続出場を決めた。(決めていた)世界最速で決めた日本。何年か前までは予選のプレッシャーと緊張感をはね返し、苦しみながらも必ず予選を突破して国民の期待に応え、国民と共に喜びを分かち合ってきたW杯予選。

 ブラジルは何年か前までは南米予選を通過するのは当たり前。負けるという事の方が珍しく、強豪国が出揃う南米チームの中でも常に違いを見せながら予算を突破してきた。

 アジアと南米の予選の比較はできないが、我々の世代は1994年アメリカW杯の予選で敗れドーハの悲劇と呼ばれる経験をした。その一方で、ブラジルは本大会も選手層の厚さをしっかり示し4度目の優勝を遂げた。

 8年後は2002年日韓W杯。日本は1998年フランスW杯を自力で突破し、自国開催を実現し、ブラジル代表は1998年こそ優勝を逃したが、2002年は日本で決勝でドイツに2-0で勝利し5度目の優勝。

 お互い前回のカタール大会まで日本は7回連続で、ブラジルは全大会出場を継続してきている。

 僕が生まれた1960年代からプロリーグ(Jリーグ)が開幕される前の1980年代では、日本のW杯出場は現実的なものではなく、夢で見に行くもの…いや、夢見ることさえ難しい大会だった。

 敗戦後、電話の向こうでサンパウロの知人が「皆んなが笑ってるよ」と困り声を上げていた。ブラジル代表は普通のチームだと…。

 片や日本となると、「今夜の試合はどうなると思いますか?」はもちろん、「日本は何故、こんなに強くなったのですか?」という率直な質問をされる。

 同時に、昔の苦しみながら予選を突破していた頃から応援しているサポーターや私の知人などは「何かが違う」。昔は突破の懸かった試合はテレビの前で、正座で見ていた…と。もっと緊張感が見る側にもあったと。中には突破の懸かっている試合でありながら「大丈夫だなーと思った瞬間に寝てしまったよ」という人もいる。

 ブラジルのサッカー文化の中で育ってきた人々は、メディアも含めやはり厳しい批評をしているという。ヨーロッパ組が中心に構成されている代表に対して、選手のメンタリティーについて鋭い指摘をしている。若くしてヨーロッパへ移籍していくのが通常になり、若く母国ブラジルを離れている彼らにとって、クラブとセレソン(代表)どちらが大事なのか? 代表にエントリーされ、ヨーロッパの目に叶うまでは必死だった彼らの今のプレーは、ブラジル国民にとって納得いくものではないようだ。
 
 遅くなってしまったが、日本代表「ワールドカップ出場おめでとうございます」。

 いや、その言葉はとっくに多くの祝福を受け、もう本大会へ向けて各選手はより“自身”を深めているのでしょう。

 
 そして日本サッカー界が抱く目標はワールドカップ優勝。この目標を掲げることは、どうであるかは別として、プロのスポーツの世界でやる前から負ける前提を目標にするのは可笑しい話。目標が優勝は悪くない。

 日本にとって8回目であり、全大会出場しているブラジル代表の国民がもう普通のチームだと言うならば、今の時代になり日本が優勝する可能性も私の知る1900年代と比べれば上がっているであろう。

 子供の頃、父の撮ってきた8ミリビデオで70年メキシコW杯のペレを知り、74年西ドイツW杯の時はサッカー少年になっていた。そして78年アルゼンチンW杯で初めて衛星放送で生でのテレビ観戦。アルゼンチン代表ーオランダ代表の決勝を夜中、朝方までテレビ観戦した。

 82年スペインでブラジル代表に虜に。そこから目指す86年で2度目のメキシコ大会でマラドーナが活躍。その頃から“目指す”W杯にはなったものの、僕にとって未だワールドカップの価値は凄い。

 日本がW杯優勝を有言して実行するという。プロの世界では難しい目標。そんなに甘くはないという気持ちと、もしかしたら実現してくれるかもしれないという楽しみもあるが、まだ一度も世界一になった事がない日本は密かに狙うベスト8からのベスト4、いや優勝と小さな声で「つぶやく」くらいでよいのでは…。

 しかし素晴らしい予選だった。本番に向けて良い準備をしてほしい。

 日本代表への想い! 心はひとつだ!!

2025年4月1日
三浦泰年
【三浦泰年の情熱地泰】WBCの熱狂はスポーツ界にどんな影響を与える? エンタメ性抜群のバスケ界も見逃せない!

【三浦泰年の情熱地泰】亡き父は、この問いにどう答えてくれるのか… しっくりきたアンサーはピッコリ監督の言葉

【三浦泰年の情熱地泰】信頼する人に信頼される――そんな幸せな関係を築いて“新たな任務”に自分らしく励みたい