
ノッティンガム・フォレストの最後のPKキッカーが成功させると、タッチライン際で見守っていたブライトンの三笘薫は、思わず両手で顔を覆った──。
3月29日に行なわれたFAカップ準々決勝のノッティンガム・F戦。試合は0-0のまま前後半で決着がつかず30分の延長戦に突入したが、ここでもゴールは生まれなかった。
PK戦ではブライトンの3番手ジャック・ヒンシェルウッド、4番手ディエゴ・ゴメスが相手GKのセーブに阻まれ失敗。後攻のノッティンガム・Fは3番手のネコ・ウィリアムズが失敗したのみで、残り4人が成功した。PK戦スコア3-4で、ブライトンはベスト8でFA杯敗退が決まった。
この試合で三笘は、4-2-3-1の左MFで先発した。3月25日に行なわれたW杯アジア最終予選のサウジアラビア戦をコンディション不良で欠場したが、ノッティンガム・F戦の前日会見でファビアン・ヒュルツェラー監督が「ミトマは順調。試合に出場できると思う」と話していたとおり、日本代表MFはスタメンに名を連ねた。
しかし長距離移動の影響か、あるいはコンディション不良を抱えていた影響なのか、全体的に動きが重かった。27分には右足のアウトサイドキックでパスを出したが、FWダニー・ウェルベックと呼吸が合わず通らない。
45分にはダブルマークがついている状況から縦に仕掛けたが、三笘のクロスは相手DFに当たってチャンスにならなかった。最終的に、決定機に絡めないまま72分に交代となった。
チーム全体としても、ノッティンガム・Fの分厚い守備に苦しんだ。ただ、延長戦の109分に途中出場のゴメスがフリーでヘディングシュート、119分にジョアン・ペドロがネットを揺らすも、こちらはオフサイドと、ゴールまでの形は作っていた。しかしリーグ4位の失点の少なさを誇るノッティンガム・Fの堅守を崩せず、PK戦で涙を飲むことになった。
試合後のミックスゾーンで、三笘は静かな声で振り返った。
「相手が良かったですけど、自分たちにミスが多く、あちらもミスが多い試合でした。最後までチャンスを作っていたところは良かったと思いますけど、最後のクオリティ(に難しさがあった)。相手も後ろで数的優位を作ったりして、難しい展開でした」
(記者:チャンスもあったなかで、PK戦まで行ってしまった)
「もともと空中戦や球際が強いチームで、個人の能力も高いチームです。そこは分かってましたけど、セカンドボールを中心にもっと自分たちのペースでやれたかなっていうところはありますし。もっと我慢強く戦わないといけない試合でしたけど、それもタラレバになりますね」
では、三笘は自身のプレーについてどのように考えたのか。「監督からは中に入るところだったり、(指示として)いろいろ言われてました。だけど、最後(=ファイナルサード)のとこで、ボールを運べるとこは運べていたので、なるべくそっちで起点を作ろうかなと思っていた」という。しかし「フィジカル的には問題なかったですけど、判断的なミスは多かった」と自身のプレーを反省。三笘としても、思うようなプレーができなかったと振り返った。
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この一戦で物議を醸すシーンがあった。
64分、三笘がPA内で相手MFのエリオット・アンダーソンにスライディングタックルを仕掛けた。アンダーソンが転倒し、主審はPKの判定を下す。すると三笘は、主審に対して指を左右に振って、珍しく猛抗議。PKではないと主張した。
リプレーを確認すると、たしかに三笘がスライディングタックルを仕掛けた足はアンダーソンに当たっておらず、腕がかすかに相手の身体に触っただけだった。主審はオンフィールドレビューを行ない、判定をノーファルに変えた。
この場面について、三笘は次のように語った。
「僕は(相手がドリブルで仕掛けた)コースに入ったつもりだったので、(PKは)ないと思いました。ですが、主審が流れで吹くこともあると思うので、主張するところは主張しました」
現役時代はシェフィールド・Uやトッテナムで活躍し、現在は解説者を務めるマイケル・ブラウン氏は、英BBCラジオで「PKを与えるわけにはいかない。長い時間がかかったが、正しい判断ができた」とし、主審の判断は正しかったとコメント。英紙デーリー・メールが「三笘の腕で、アンダーソンの足を払いのけたように見えた」とする意見もあったが、英メディアでは判定を覆した主審の判断を後押しする報道の方が多かった。
三笘としては冷や汗をかいたが、オンフィールドレビューを含めて正しい判定に救われた格好だ。
今一度、振り返ると、ノッティンガム・Fはプレミアリーグ24節(2月1日)で0-7の大敗を喫した因縁の相手でもあった。
7点の大差をつけられた試合後、チーム全体が意気消沈した。そのなかで三笘は足取り重い選手たちをサポーターの元へと先導し、静かにリーダーシップを発揮した。試合後、サムライ戦士は「恥ずかしい試合をしてしまった。僕自身もプレーして…言い訳できない試合をしました。サポーターに申し訳なかった」と反省しきりだった。
しかしこの敗戦から、ブライトンは見事に復調した。惨敗を糧に変え、国内リーグで4勝1分けの無敗で上昇気流に乗ったのである。
そこで、三笘に聞いてみた。「プレミアリーグで、7点差で負けてしまった相手が今日の相手でした。チームとして、どんな気持ちで今日の試合に臨んでいたか」と。三笘は次のように答えた。
「やるべきことをやるというとこだけですね。相手の得意のところを消すことは考えてましたけど、それでも相手のスピードやフィジカル的なところで、やっぱり負けるシーンが多くて。流れに乗れなかったです」
惨敗後のチームの様子をもう少し細かく語っていたのが、オランダ代表DFのヤン・ポール・ファンヘッケである。0-7の大敗後、気持ちを切り替えるため、選手たちには数日のオフが与えられた。そしてトレーニングに復帰すると、選手の誰もがこう思っていたという。「あんなことは、もう二度と起こらないと、選手の誰もがそう思っていた。一様に燃えていたね。あの時から、何かが変わる感じはしていたんだ」。
今回のFA杯準々決勝でノッティンガム・Fを下せば、ブライトンにとってまさしく理想的なストーリーになった。しかし、勝負の世界はそう甘くない。FA杯のタイトルも、準決勝から会場となる聖地ウェンブリースタジアムでのプレーも、いずれも叶うことはなかった。
だが三笘は、ここでもう一度、気持ちを高めることが必要と力を込める。
「悔しいですけど、すぐ連戦に入りますし、そっち(=プレミアリーグ)に望みをかけるしかない。ここからが踏ん張りどころ。全ての選手が、この敗戦をもう一度、バネにできるかというところですね」
ブライトンと三笘の次戦は、4月2日にホームで行なわれるアストン・ビラ戦。勝利で、FA杯の悔しさを晴らしたい。
取材・文●田嶋コウスケ
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