
元ドイツ代表FWのトーマス・ミュラーが、2008年のプロデビュー以来在籍してきたバイエルンとの契約を延長しない方針であると、同国のスポーツ紙『kicker』が報じている。
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クラブ史上最多となる12度のブンデスリーガ優勝に貢献し、チャンピオンズリーグも2度制覇、ドイツ代表としても2014年に世界一に輝き、2010年大会では得点王に輝くなど、輝かしいキャリアを築いてきた35歳は今季、23試合に出場したが、そのうちスタメン入りはわずか8試合止まりと、プレー時間は大幅に減少していた。
それに加え、クラブは厳しい財政状況に陥っており、財務赤字を避けるためには、今夏に開催されるクラブワールドカップの出場ギャラ(3000万ユーロ=約48億円)に頼らざるを得ないほどであるということで、このクラブ史に残る偉大な選手との契約を更新しないことで数千万ユーロ規模の財政的負担を軽減する道を選んだのだという。この決定を2週間ほど前にスポーツディレクターのマックス・エベールから伝えられたというミュラーだが、彼自身はあと1年のプレーを望んでいたと同メディアは伝えている。
一方、日刊紙『Bild』はこれをまだ公式発表された確定情報ではないとしながらも、こちらも以前から報じてきた通り、ミュラーがユース時代を含めて25年間を過ごしたクラブとの契約を終える可能性が極めて高いとしており、今夏以降の彼がいかなる道を辿るかにも言及し、「6つのシナリオ」を挙げた。
ひとつ目は、クラブが翻意して新たな1年契約を結ぶというものだが、同メディアは「最も可能性が低いが……」と付け加えている。ただし、クラブW杯に出場するために、2週間ほど契約を延長する可能性は残されているようだ。
続くシナリオは「現役引退して第2の人生へ」。完全にサッカー界を離れ、家族とともに静かな生活を楽しむというもので、妻のリサとともに経営するバイエルン州オッターフィングの「ヴェットルカム牧場」で馬の世話に専念し、大好きなゴルフを楽しむという選択肢である。 3つ目に挙げられたのは「バイエルンのフロント入り」で、豊富な人脈を持ち、国際的なサッカービジネスに精通しており、コミュニケーション能力も抜群のミュラーを、クラブ首脳陣が何らかの形でチームに残したいと考えていると同メディアは見ているが、一方で「すぐにフロント入りした場合、長年のチームメイトと近すぎる関係が悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念もしている。
続いて、テレビ解説者としての活動も有力な選択肢であり、実際に複数の放送局がすでに彼へオファーを出しているという情報を同メディアは掴んでおり、「彼のユーモアと知識を活かした解説スタイルは、多くのファンに歓迎されることだろう」と太鼓判を押す。
一方、「指導者の道へ進む」ことは現時点で可能性が低いと思われるが、彼は昨年11月に応じたインタビューで、これを選択肢からは除外していなかった。元チームメイトのミロスラフ・クローゼ(現ニュルンベルク)やマルティン・デミチェリス(CFモンテレイ)のように、ユース世代の指導を経てプロ監督へステップアップする道も考えられるという。
そして6つ目のシナリオは、「他クラブで現役続行」。「ヴァンサン・コンパニ新監督の下、出場機会は限られているものの、ピッチに立った時のミュラーはまだまだ楽しそうに見える」と綴る同メディアは、「欧州トップレベルで3日に1試合のペースでプレーするのは難しいが、経験とサッカーIQは依然として高く、多くのクラブにとって貴重な戦力になれる」という彼が、新天地でのプレーを選択する可能性は十分にあると見ている。
その行き先として最も有力だとされるのが、アメリカ・MLSだ。それは「欧州クラブと対戦する機会が少なく、バイエルンと敵対しなくて済む」「アメリカでは絶大な人気を誇り、商業的にも大成功が見込める」「2025年夏のクラブW杯(米国開催)や、2026年W杯の宣伝効果も抜群」という理由からのもので、「この移籍が実現すれば、バイエルンやドイツ・サッカー界にとっても、プラスの影響をもたらすだろう」とのポジティブな見解を示した。
構成●THE DIGEST編集部
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