性能の向上と共に、ゲーム機の価格は上がるばかりです。しかし、低価格・低性能でも困るため、ユーザーが納得するラインを見極めるのが課題のひとつと言われています。そんななか、SIEと任天堂が示した近年の例に注目してみました。



国内向けの「スイッチ2」は4万9980円。欧米では、449.99ドルで販売される

【画像】えぇえ…めっちゃ楽しみ! コチラが発表されたスイッチ2用ソフトです(6枚)

「スイッチ2」国内専用版で価格抑制

 任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」(以下、スイッチ2)の詳細が、4月2日実施の配信映像で明らかとなりました。発売日は2025年6月5日で、バリエーションによって異なるものの、日本語・国内専用版の希望小売価格は4万9980円です。

 スイッチ2向けのゲームタイトルも発表されたほか、性能の概要や「おすそわけ通信」といった機能面の情報も判明しており、SNSではスイッチ2の話題が飛び交っています。

 スイッチ2自体も気になりますが、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が「PlayStation 5」(以下、PS5)で打ち出した価格の方針と、任天堂による今回の発表を照らし合わせると、それぞれの異なる姿勢が浮き彫りになります。

予想を超える世界情勢の直撃を受けたSIE

「PS5」が発売された2020年11月時点では、希望小売価格は5万4978円(Digital Editionは4万3978円)でした。

 当時はまだ円安が進んでおらず、欧米向けの価格と比べてもおおむね同程度でした。しかし、2022年に入ると状況が一変します。この年の9月、SIEは世界的な経済環境を受け、PS5にとって初の価格改定を発表しました。

 ただし、この時における国内向けの値上げ幅は5500円。値上げ自体は消費者にとって厳しい話ですが、他国の値上げ幅よりも控えめです。また円安の影響で、国内から見ると欧米のPS5の価格は、相対的に高くなっていました。

 この後、2023年11月に新型のSlimモデルに切り替わり、同時に価格も上昇。さらに、2024年9月にも価格改定が行われ、国内向けの価格は7万9980円まで上がります。国内向けに抑えていた価格ラインはすでに取り払われており、他国と変わらない水準に引き上げられる結果となりました。

 PS5における価格改定は、予想外の円安や世界的な物価の高騰、コロナ禍による生産性の低下など、不運に見舞われた面が大きく、やむを得ない事態といえます。しかし、消費者にとって嬉しい話ではないのも事実で、残念といった声も少なくありません。

国内と海外の価格に、大きな差を設けた任天堂

 世界的な状況の悪さはいまも続いており、スイッチ2の価格もどうなるのかと危ぶまれていました。ふたを開けてみると、日本語・国内専用版の価格は4万9980円と、5万円に収まる範囲でした。

 これまでの任天堂の路線を考えると高価格ではあるものの、昨今の情勢は消費者も肌で感じており、満場一致で価格に不満が出ているといった向きはありません。「子供へのプレゼントとしては難しい」といった声もありますが、性能を考えれば健闘しているといったコメントもSNSに広がっています。

 国内における価格面の反応が好意的な理由のひとつとして、他言語対応版の存在が挙げられます。日本語・国内専用版は、対応言語が「日本語」のみで、「国/地域」を「日本」に設定しているニンテンドーアカウントのみと連携できます。他言語対応版は、そうした制限のないものです。

 一見すると、他言語対応版の方が優れているように見えますが、他言語対応版の価格は6万9980円と、日本語・国内専用版と比べ、2万円もの開きがあります。もちろん、ゲーム機としての性能や同梱内容は、まったくの同一です。

 なお北米向けの価格は449.99ドルで、ざっと換算すると日本円で6万7000円ほど。他言語対応版を含め、海外展開はこの価格帯が中心になると予想されており、言語面などで制限があるとはいえ、日本語・国内専用版の4万9980円は破格といえるでしょう。

 厳しい世情のなか、限定仕様を打ち出すことで、国内向けにスイッチ2を割安な価 格で提供する任天堂。一方、国内向けの価格抑制を断念し、横並びに切り替えたSIE。

 両者の判断が、今後のゲーム市場にいかなる影響を及ぼすのか。今後の展開も目が離せません。