
大阪・関西万博の大阪府内の小中学校への“無料招待”をめぐり、周辺地域で「参加を強制しないで」との抗議活動が起こっている。4月13日に開幕を迎えるが、開幕直前のバタバタはまだまだ続いていきそうだ。
関西万博に行かせたくない4つの理由
世界最大のオンライン署名サイト「Change.org」で2万5000以上の賛同を集めているのは、“関西万博への校外学習を強制しないで”というもの。豊中市の児童生徒と保護者からなるグループが主体となってこの活動をしている。
この署名活動の発端となったのは2024年5月、関西万博への校外学習(遠足)として参加意向調査が大阪府内の小中学校に対して行なわれたが、選択肢が「参加予定」「検討中」の2択しかない、不公平なアンケートだったという。
これに対して、交野市の山本景市長は異を唱えて同月に会見で、「交野市の小中学校は学校単位で参加しなくてもよい」と見解を表明していた。続いて、吹田市、熊取町、島本町も自治体全体としての遠足事業不参加を表明している。
豊中市の団体が校外学習での万博参加の強制を拒否したい理由は大きくわけて4つある。
1つ目は、万博の会場になっている夢洲でガス爆発事故があったこと。会場の夢洲が、さまざまな化学物質を含む産業廃棄物や汚泥の土壌で成り立っていることが懸念され、有毒ガスが噴出したとしても不思議ではなく、本当に安全が確保されているのか不安だという。
2つ目はアクセスの悪さ。豊中市から会場へは集合などの時間も含め、短く見積もっても片道2時間ほどかかるため、お弁当の時間、終業時刻までに学校に帰ることを想定すると、現地での活動時間はほとんどないと考えられる。さらに駅での集団乗り換えも難しく、専用のバスの手配も困難な状況だという。
さらに災害時の対策が十分ではないこと、学校の先生が事前に下見をして計画を立てられないことなどを理由としてあげている。
ただ、同団体は万博そのものを否定しているのではなく、あくまで学校単位での見学参加の強制はやめてほしいとの意向を示している。
この件について、現場では実際にどんな声があがっているのか。大阪府豊中市の中学校教員が集英社オンラインの取材に応じた。
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「もちろんウチの学校も行きません」豊中市の教員が語る
「署名の存在は知りませんでしたが、市内の教員のあいだでは『あんなもん行けるかー』という声が多いのは事実です。もちろんウチの学校も行きません。というか行けません。
とはいえ、1年ほど前に招待を受けた段階から『行かない』ことを即答で表明すると、教育委員会から『なぜそんな早い段階から行けないと決めつけるのか?』『行けるように工夫して段取りできないか?』といった指摘が入る恐れがあります。
なので、とりあえず『検討中』にしておいて、開催1カ月前の今年3月に入ってから『行かない』ということを表明しました」(豊中市の中学校教員、以下同)
具体的に行けない理由について、まずは交通事情の問題がある。生徒数の多い学校では、電車で引率するのは現実的ではない。だからといって自分たちでバスの予約がとれない上、万博協会にバスの予約を依頼すると、日付を指定されてしまう可能性があるというのだ。
「学校には車椅子ユーザーの子もいます。会場内のトイレなど施設の設備がどうなっているか不確定要素が多い中で、たくさんの生徒を引率するのは無理があります。そのへんを下見したいと思っても、『開催前には下見ダメ。下見したからには絶対に来い。下見した結果行かへんは許さん』って言われてしまうことを思うと、不参加が妥当な判断だと思います。
まあトイレに関しては、建設費が2億円とのことなので、バリアフリー自体は対応しているとは思いますが……。当初は『多くの学校が招待で行く予定』というニュースを見かけましたが、『ホンマかな?』と周囲の学校の先生たちとも話していました」
昨年5月に大阪府は、府内の学校を対象にした意向調査の途中経過を発表し、約75%が参加を「希望する」と答えていた。
しかしこれは前述のとおり、選択肢が「参加予定」「検討中」の2択しかないうえ、調査を行なった約1900校のうち、その時点までで回答があった約1280校の中の約75%が参加を「希望する」と答えたにすぎない。
未回答が3割以上も占める中で、75%という数字を発表したのは誤解を招くと交野市の山本市長が苦言を呈していた。