アニメ『機動戦士Zガンダム』第14話「アムロ再び」での、前作主人公アムロ・レイの登場は多くのファンに衝撃を与えました。地球連邦軍に軟禁されていた元英雄が、まさかの輸送機で敵MSに体当たりする離れ業で復活。放送当時を振り返ります。
『機動戦士Zガンダム 第二部 アムロ・レイ』著:富野由悠季/イラスト:美樹本晴彦(角川スニーカー文庫)
【画像】超カッコイイ! こちらが『Zガンダム』アムロが操縦したMSです(5枚)
「アムロ出た?」「まだー」
『機動戦士Zガンダム』第14話「アムロ再び」では、ガンダムファン待望のアムロ・レイが登場し、シャアと再会する姿が描かれました。オープニングに登場していたため、いずれ出てくることは分かっていましたが、放送当初はどのように再登場するのかは明かされておらず、ファンをやきもきさせていました。当時を振り返ります。
「新しいガンダムが始まる」というニュースは、『機動戦士ガンダム』を聖典のごとく崇(あが)める青少年たちの間に、衝撃とともに広まった記憶があります。「ガンダム」は本放送こそ1979年でしたが、1980年代半ばまでは繰り返し再放送されており、当時の青少年たちの心には「ガンダム」が刻み込まれていたからです。
新たな「ガンダム」はどんな作品なのか。そこにも興味がありましたが、やはり気になったのは、アムロ・レイが出てくるのかどうかでした。当時の青少年にとってアムロは最強の代名詞であり、信仰にも近い憧れがあったのです。
『Z』の放送が開始され、オープニングにアムロをはじめとするホワイトベース隊のメンバーの姿が映し出されたときは、「本当にアムロが出てくるんだ!」という喜びとともに、扱いの小ささから「主人公じゃないんだな」とすぐに気付くこととなりました。
しかし『Z』を見ていても、シャア・アズナブルがなぜかクワトロ・バジーナと名乗って堂々と登場しているのに対し、アムロはなかなか出てこなかったのです。
筆者の周りでは「アムロが出てきたら見る」という友達もおり、『Z』が放送された翌週の月曜日、学校で「アムロ出た?」「まだー」という会話をした記憶があります。そのくらい、アムロの存在は大きかったといえるでしょう。
『機動戦士Zガンダム』ビジュアル。画像はプレスリリースより (C)創通・サンライズ
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ついにアムロ登場! まさかの方法で敵MSを撃退?
そうして迎えた第12話「ジャブローの風」の次回予告でアムロが復活すると知ったとき、大喜びした方も多かったでしょう。一年戦争を生き延び、仲間たちの元に戻って行ったアムロはいまどこで何をしているのか。またガンダムに乗るのだろうか。
さまざまな期待とともに始まった13話「シャトル発進」でしたが、かつての英雄は、ニュータイプを恐れた地球連邦軍により軟禁されているという衝撃的な状況が明らかにされたのです。
しかしそこはアムロ。続く14話「アムロ復活」で脱出の機会を見つけると、即座に輸送機を奪ってカツ・コバヤシとともに脱出します。加えて苦戦するアウドムラを支援するため、カミーユ・ビダンとクワトロと交戦中のアッシマーに、鈍足の輸送機をぶつけるという離れ業を見せつけました。
特にアッシマー戦では、アムロとシャアが互いの姿を見ていないのに「どいていろシャア!」「何をする気だ、アムロ!」と叫ぶシーンがあり、ふたりのニュータイプ性と因縁深さが描写されたことに背筋がぞくぞくした方もいたのではないでしょうか。
カミーユに「背中にも目を付けるんだ!」とニュータイプならではのアドバイスを送り、戦闘の度に高度な技量を見せていたアムロ。しかし、カミーユが宇宙に戻った時点で当面の出番は終わりとなりました。
アムロが復活したのは第35話「キリマンジャロの嵐」でしたが、このときファンを驚かせたのが、搭乗していたMS「ディジェ」です。ジオンっぽいデザインだったため「え? これがアムロの機体?」と唖然としたものです。結局アムロは脇役としての活躍にとどまり、シャアとの決着も付かず消化不良感もありました。
しかし、そのモヤモヤした気持ちは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の上映により一掃されることとなったのです。