
マラドーナ、バッジョ、ジダン、トッティ、デル・ピエロ……。華麗な技でイタリアの観客を魅了しつづけてきたファンタジスタたちだ。とりわけセリエAが最も華やかだった1980年代~2000年代前半には、そうした一流のファンタジスタがひしめき合っていた。では、過去50年の歴史で、最も優雅で芸術的だったのはだれか。ファンタジスタとしての価値をここに格付けする。
※選出対象
・1975-76シーズン以降にセリエAでプレー
・現役引退済み
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ファンタジスタ——。その言葉を聞くことは、いまではめっきり少なくなった。
あえて日本語で直訳すると「想像力の人」。意外性とスペクタクル性に満ちたプレーで観る者を驚かせ魅了する、想像力と創造性に溢れたプレーヤーに対して特権的に与えられてきたのがこの呼称だ。しかし、パワー、スピード、インテンシティーがすべてを支配するモダンフットボールの世界に、そんな優雅で芸術的なプレーヤーの居場所はもはや残されていない。あのリオネル・メッシですら、ファンタジスタとして括ることに違和感を覚えるのは、彼のプレーがあまりに効率的で、無駄や“遊び”が削ぎ落とされているからかもしれない。
それでは、ファンタジスタという言葉が最も似合うのはだれだろうか。
セリエAの歴史を振り返れば、ファンタジスタの全盛期はやはり、1980年代初頭~2000年代初頭までの20年間だ。80-81シーズンに、十数年禁止されていた外国人選手の獲得が解禁されたことで、ジーコ、ミシェル・プラティニ、ディエゴ・マラドーナといったサッカー史に名を残す偉大なファンタジスタが主役を演じ、イタリアからもロベルト・バッジョ、ジャンフランコ・ゾーラ、ロベルト・マンチーニ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、フランチェスコ・トッティという芸術的な「10番」たちが生まれた時代である。その中でも「別格」だったのは、マラドーナとバッジョだろう。
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「意外性とスペクタクル性」という観点で見れば、マラドーナを超えるプレーヤーはいない。彼と比べれば、同じ時代を過ごしたジーコやプラティニのプレーは、合理的にすら見える。単にトリッキーで華麗なテクニックを駆使する“マジシャン”としてなら、ロナウジーニョも引けは取らないかもしれない。
しかし、マラドーナにはそれに加えて、我々の想像を超えたドラマを生み出すカリスマ性が備わっていた。86年のメキシコ・ワールドカップ(W杯)。たった5分の間に「神の手ゴール」と「5人抜き」という、観る者を唖然とさせるふたつの“スーパーゴール”を決めて見せた準々決勝のイングランド戦は、その象徴だ。
バッジョは、マラドーナのようにとんでもなく派手なプレーを見せたわけではないが、パスを引き出してゴールに向かうまでのアイデアの豊富さと、きわめて繊細なテクニックが特別だった。キックフェイントを駆使して迫り来るDFを次々と抜き去り、最後はGKにまで尻もちをつかせてから悠々と流し込む。さらに、バッジョにとっての美学であるかのように、シュートは必ずと言っていいほどサイドネットを揺らした。そして彼もまた、特別なドラマを生んだファンタジスタだった。自らのゴールでイタリアを決勝に導きながら、最後のPK失敗で準優勝に終わった94年アメリカW杯は、バッジョを孤高の存在たらしめている。
ふたりのうち、どちらを史上最高のファンタジスタに選ぶかは、読者の皆さんの判断にお任せしたい。
彼らを別格とするならば、それに続く評価に値するのは、プラティニ、ジーコ、ジネディーヌ・ジダン、トッティだろう。プラティニとジーコは、トップ下から華麗なパスで攻撃を演出し、ゴールよりもアシストをその真骨頂とする古典的な「10番」だった。エスプリとエレガンスに溢れたプラティニ、ピッチを俯瞰しているかのような絶妙なパスをゴール前に送り込むジーコは、マラドーナと並んで80年代を代表する偉大なファンタジスタだった。
ジダンは、その独特なフェイントと繊細なボールタッチによって守備者のタイミングを外し、まるで自らの周囲に時空の歪みを作り出すかのようにプレーする唯一無二のタレントだった。アシストと比べてゴールはそれほど多くないが、98年のフランスW杯決勝での2発をはじめ、歴史的な得点が印象深い。トッティは、ファンタジスタの活躍の場がどんどん少なくなっていった00年代、そして10年代に至ってもなお「偽9番」という新境地を開くことで第一線で生き延びた“最後のファンタジスタ”のひとりだ。ストライカーとして振る舞いながらも、プレーの端々に観る者を驚かせようという遊び心が滲み出ていた。
三つ星評価とした5人も、プラティニらに肉薄する偉大なファンタジスタたちだ。ゴールよりもアシストを生き甲斐として、ジャンルカ・ヴィアッリ、ヴィンチェンツォ・モンテッラ、クリスティアン・ヴィエリといったストライカーにゴールを量産させたマンチーニ、キャリアの後半を送ったチェルシーで「マジックボックス」と呼ばれ愛されたゾーラ。マヌエル・ルイ・コスタは、華麗なドリブルと芸術的なスルーパスでフィオレンティーナのシンボルとなった。
ユベントスでバッジョの後継者として台頭し、15年以上に渡って10番を背負ったデル・ピエロは、もし23歳で膝に大怪我を負っていなければ、ファンタジスタとしてバッジョやトッティと肩を並べる存在であり続けたかもしれない。ロナウジーニョはバルセロナ時代であれば、もっと高く評価すべきだろう。ただし、ミラン移籍時はキャリアの斜陽期だったこともあり、セリエAではその才能の片鱗を見せるだけに留まった。
もちろん、二つ星、一つ星評価としたファンタジスタたちも、その華麗なボール捌きやアイデアに満ちたパスワーク、そして驚きに満ちたゴールで我々を楽しませ、セリエAの歴史にその名を刻んだプレーヤーたちである。
【ファンタジスタ格付け一覧】
※カッコ内の見方→(セリエAでの主な所属クラブ/国籍または代表)。同等級内の並びは生年月日順。
■五つ星
ディエゴ・マラドーナ(ナポリ/元アルゼンチン代表)
ロベルト・バッジョ(ユベントスなど/元イタリア代表)
■四つ星
ジーコ(ウディネーゼ/元ブラジル代表)
ミシェル・プラティニ(ユベントス/元フランス代表)
ジネディーヌ・ジダン(ユベントス/元フランス代表)
フランチェスコ・トッティ(ローマ/元イタリア代表)
■三つ星
ロベルト・マンチーニ(サンプドリアなど/元イタリア代表)
ジャンフランコ・ゾーラ(パルマなど/元イタリア代表)
マヌエル・ルイ・コスタ(フィオレンティーナなど/元ポルトガル代表)
アレッサンドロ・デル・ピエロ(ユベントス/元イタリア代表)
ロナウジーニョ(ミラン/元ブラジル代表)
■二つ星
ジャンカルロ・アントニョーニ(フィオレンティーナ/元イタリア代表)
ジュゼッペ・ジャンニーニ(ローマなど/元イタリア代表)
デヤン・サビチェビッチ(ミラン/元ユーゴスラビア代表)
アルバロ・レコバ(インテルなど/元ウルグアイ代表)
アントニオ・カッサーノ(ローマなど/元イタリア代表)
ヴェスレイ・スナイデル(インテル/元オランダ代表)
ハビエル・パストーレ(パレルモなど/元アルゼンチン代表)
■一つ星
エバリスト・ベッカロッシ(インテルなど/イタリア国籍)
ゲオルゲ・ハジ(ブレシア/元ルーマニア代表)
ドラガン・ストイコビッチ(ヴェローナ/元ユーゴスラビア代表)
フリスト・ストイチコフ(パルマ/元ブルガリア代表)
ユーリ・ジョルカエフ(インテル/元フランス代表)
レオナルド(ミラン/元ブラジル代表)
ファン・セバスティアン・ベロン(ラツィオなど/元アルゼンチン代表)
ドメニコ・モルフェオ(パルマなど/イタリア国籍)
アレッサンドロ・ディアマンティ(ボローニャなど/元イタリア代表)
文●片野道郎(ジャーナリスト/翻訳家)
※ワールドサッカーダイジェスト2月6日号の記事を加筆・修正
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