
石破茂首相(C)週刊実話Web
商品券配布問題で内閣支持率が急降下した石破政権。だが、瓦解する様子はなく、微妙に安定した超低空飛行を続けている。
自民党は夏の参院選では惨敗との見方は強いが、「石破おろし」は起きそうもない。
大敗したら立憲民主党との大連立で延命を図ればよいと首相周辺は考えているようだ。
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その場合、立憲が分裂する可能性は高い。
野党がバラバラになって都合が良いのは石破首相だ。
石破政権は強いの? 弱いの? 自民内の保守系議員から支持を得ている高市早苗前経済安全保障担当相と小林鷹之元経済安全保障担当相は距離を縮めることなく、保守系議員の糾合は一向に進んでいないのだ。
小泉進次郎元環境相は「自民の文化で変わらなければいけないのは、支持率が下がったらすぐにトップを引きずり降ろそうとすることだ」と石破退陣論を牽制している。
ただ、党内に権力闘争はなく、各議員は牙を抜かれたかに見える。
なぜ、こんな状態が続いているのか。
全国紙政治部記者がこう解説する。
「最大の理由は、石破首相が退陣し、総裁選が行われたとしても、選ばれた新総裁は必ずしも新首相になれるとは限らないからです。仮に、新首相になれても少数与党では思うように政権運営はできません。こんな状態では『石破おろし』は起きませんよ」
実際、新総裁が誕生しても、国会での首相指名選挙で勝たなければ新首相にはなれない。
この現実は重い。衆院選をしないで政権交代が起こり得るからだ。
昨年の衆院選後の特別国会では、野党各党は首相指名選挙でバラバラな対応をしたため、石破氏は首相になれた。
だが今回、新総裁に人気が出たら野党は結束して、その新総裁が首相になることを阻止する可能性がある。
これでは総裁選をしようという空気にはならない。
皮肉なことに少数与党であるがゆえに石破政権は延命できていると言えるのだ。
小沢氏は「野党が好きなのか」と呆れ顔
5回目の総裁選挑戦でようやく勝利し、首相になれた石破氏である。
そもそも「退陣する気はサラサラない」と石破氏側近は語る。
その一方で、低迷する支持率では自民は国政選挙に勝ち目はなく、野党にとっては政権交代の千載一遇のチャンスでもある。
衆院を解散させるために野党第1党の立憲は内閣不信任案を出すべきなのだが、妙に慎重だ。
牙を抜かれているのは自民党だけではないようだ。
立憲幹部の話。
「夏の参院選は石破総裁の自民党と戦うのが基本戦略です。内閣不信任案が可決されて退陣なんてされたときには、目も当てられない。解散されても野党間の候補者調整が間に合わない」
この弱腰には海千山千の小沢一郎衆院議員は呆れるばかりだ。
小沢氏は記者会見でこう言い放った。
「石破君の方が選挙に(都合が)いいなんて、他人の欠点やエラーを待って選挙をする感じだろう。エラーもなければ倒せないのも事実なわけだけど、こっち(立憲)がやっぱりヒットを打つぞと。エラーをただ眺めているだけでは、政権は遠のいているよ。万年野党が好きなのか」
立憲がこんな状況なら、石破首相が政権運営に強気でいられるのも頷ける。
とはいえ、このままでは参院選で自民が惨敗するのは目に見えている。
改選組だけで与党過半数割れになることはあり得ても、非改選組と合わせれば過半数割れすることはない――自民内では一時そういわれていた。
だが、最近は「全体で与党過半数割れする可能性がある」(自民幹部)との声が漏れ始めている。
それでも石破首相に焦りは感じられない。
政治部デスクはこう語る。
「イケイケの国民民主党がダメダメの自民と連立を組むことはあり得ません。日本維新の会の前原誠司共同代表は根っからの『反自民』で、こちらも連立の可能性はない。ただ一つ可能性があるのは、野党第1党でありながら存在感を示せず、没落気味の立憲です。立憲は参院選で躍進はせず、良くて横ばい。参院選後なら連立に応じる可能性はありますね」
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「大連立になったら党を割る」
自民内に立憲との連立を模索している動きがあるのは事実だ。
石破首相と立憲の野田佳彦代表は旧新進党に所属していた間柄である。政策的にもリベラルで考え方は近い。
それだけに立憲内の反自民勢力は野田氏の動きを警戒している。その筆頭は枝野幸男元代表だという。
枝野氏は周囲に「もし大連立になったら党を割る。党からこぼれ落ちるというレベルではない。まとまって党を割る」と言ってはばからない。
実際、党創設者とあって、党内での影響力はいまだに大きい。
枝野氏は「党が消費税減税を掲げた場合でも党を割る」と漏らす。
そう語るのも、消費税減税を目指す議員が増えつつあるからに他ならないからだ。
その取りまとめ役は江田憲司元代表代行だ。勉強会を開き、選挙公約に「食料品の消費税0%」を盛り込むよう訴えた。
50人前後が参加しており、無視できない規模に膨れ上がっている。
勉強会には前兵庫県明石市長で、夏の参院選に無所属で立候補する予定の泉房穂氏も招かれたことがある。
泉氏は小沢氏と近い関係にあり、党内政局の臭いがプンプンするのだ。
いずれにしても、立憲が分裂してくれるのなら、石破首相にとってはありがたい話である。
超低空飛行でも笑いが止まらないはずだ。
「週刊実話」4月17日号より