
森永卓郎 (C)週刊実話Web
「グレートリセット」の後、世界の経済社会ではグローバル資本主義と真逆のことが起きる──。
「モリタク」の愛称で親しまれた経済アナリスト、故・森永卓郎さんが残した“2025年の大予言”とは…。(全4回の3回目)
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それでは、グローバル資本主義はどのように崩壊していくのか。
私は「バブルの崩壊」がきっかけになるとみている。
いま毎月のように米国株や日本株が最高値を更新し続けている。
多くのエコノミストが現在の株高はバブルではないとしているが、その根拠は、株価収益率が80年代後半のバブル期と比べて、さほど上がっていないことだ。
ただ、ノーベル経済学賞を受賞したイェール大学のロバート・シラー教授が、「バブル期には利益そのものが水増しされる」という事実を発見し、その影響を取り除いたシラー・PER(CAPEレシオ)を開発した。
現在、米国のシラー・PERは35倍程度で、適正水準と言われる「10倍」に比べて3倍以上も割高になっている。
「投資の神様」のウォーレン・バフェットが提唱するバフェット指数(株価時価総額÷GDP)も、平時は1倍が標準だが、現在は2倍となっている。
つまり、いまの米国株価は本来の2~3倍の水準になっているのだ。
バブルがいつ崩壊するかは正確に予測できないが、歴史上すべてのバブルは崩壊してきた。
これまで人類が経験した史上最大のバブル崩壊は、1929年のアメリカで発生した。
20年代のアメリカは、自動車、家電産業が世界最強で、実力をはるかに上回る株価がついていた。
それがバブル崩壊で10分1に下落したのだ。
最近のバブルは「ドットコム・バブル」で、グーグルやアップル、アマゾンなどの「GAFAM(ガーファム)」に高い株価がついた。
それが限界に達すると、バブルの対象は電気自動車、人工知能と移ってゆき、いまやたった一社の半導体企業に過ぎないエヌビディアが、世界の株価をリードするという末期症状に陥っている。
バブル崩壊は間近だと言えるだろう。
人類史上最大のバブル崩壊は、当然、世界恐慌を引き起こすが、深刻な不況のときこそ、経済社会の構造転換が起きる。
順風満帆のときに大変革をしようとする人は、ほとんどいないからだ。
「大規模から小規模へ」シフトする世界
それではグレートリセットの後の世界は、どのようなものになるのか。
私は、グローバル資本主義と真逆のことが起きると考えている。
(1)グローバルからローカルへ、(2)大規模から小規模へ、(3)中央集権から分権へ、そして(4)AX(アート・トランスフォーメーション)だ。
(1)グローバルからローカルへ
グローバル資本主義では、世界で最も安い国から大量仕入れをしてコストを下げるのが基本だ。
しかし、平時にはそれでよくても、戦争や自然災害などが起きると、その仕組みが機能しなくなることが、明らかになった。
近年の半導体不足や2024年に起きた令和のコメ騒動などが、その典型だ。
私は「インド建国の父」マハトマ・ガンディーが提唱した「近隣の原理」が、スタンダードになると考えている。
近くの人が作った食品を食べ、近くの人が作った服を着て、近くの大工さんが建てた家に住む。
表現を変えると、まずは自産自消、足りない分を地産地消、それでも足りない分を国産国消にして、グローバル調達は最小限にとどめるのだ。
(2)大規模から小規模へ
グローバル資本主義では、グーグルやアマゾンなど世界的大企業が世界市場を席巻した。
しかし、グレートリセット後は、地域に根付いた中小零細企業が個性的なビジネスを行うようになる。
(3)中央集権から分権へ
企業レベルでも、行政レベルでも、政治レベルでも、現場が主導権を握り、さまざまな判断が地域を中心に行われるようになる。
(4)AXが進む
定型的な仕事をコンピューターやロボットが代替することで、人が創造するアートの部分が付加価値の大宗を占めるようになる。それがAXだ。
週刊実話増刊1月29日号『検証 2025年の大予言』(小社刊)より