パナソニックから「AG-CX20」「HC-X2100」「HC-X1600」登場。同時に発表されたカメラレコーダー3機種の魅力を解説

2025年1月22日パナソニックは、業務用向けにAG-CX20を、民生用向けにHC-X2100とHC-X1600を発表した。複数の機種の同時発表は注目を集めたものの、各機種の差異がわかりにくいという指摘も存在した。そこで今回、パナソニックへ各機種の差異と魅力を説明する機会を設けていただいた。また、貴重な機会であるため、ビデオグラファー照山明氏にも参加いただき、意見を求めた。

左から、コンシューマーイメージング事業統括 国内マーケティング部 辻 啓太氏、コンシューマーイメージング事業統括 商品企画部 神田海都氏、プロフェッショナルAV事業統括 プロAV商品企画部 並川 実氏、プロフェッショナルAV事業統括 プロAV商品企画部 三橋章悟氏

説明会に参加した株式会社ガイプロモーション代表の照山明氏

撮り逃しは許されないからこそカメラレコーダーに再注目

――まず照山さんにご意見をお伺いいたします。PRONEWSでは、先日のCP+2025のブース取材にカメラレコーダーを使用しました。その際に改めて取材現場のツールとしてカメラレコーダーの良さを感じたばかりです。

照山さんにとって、カメラレコーダーを使う意義は何でしょうか?照山さんのカメラに関するSNSの話題はLUMIXシリーズが中心ですが、カメラレコーダーが必要だと感じるのはどのような時でしょうか?

照山氏:

それはもう失敗が許されない時、撮り逃しができない取材系ですね。ミラーレス一眼カメラはNDフィルターを内蔵していませんが、カメラレコーダーは内蔵しており、すぐにNDフィルターを使用できます。また、被写界深度が深いため、失敗が少ないという点も重要です。

例えば私の場合、施設の取材などでLUMIXのGHシリーズを使用することが多いです。しかし本来であれば、今回発表されたようなカメラレコーダーを持っていきたいと感じています。カメラレコーダーはミラーレス一眼カメラのようにレンズ交換をする必要がないため、現場での負担が軽減されるというメリットがあります。

また、クライアントワークという観点からも、カメラレコーダーは絶対的に必要です。クライアントは画質の良さはもちろん重視しますが、現場によっては被写界深度が浅い深いとか、ボケるかどうかみたいなのは、実はあまり気にしていないケースが多い。しっかりと撮影できており、内容がきちんと記録されていれば満足されることが多いです。

結局、ミラーレス一眼カメラを使いたいというのは、私のエゴかもしれません。クライアントにとって機材は何でも良く、優先順位が高いのは、失敗が許されないこと、限られた時間の中で確実に撮影できるということです。そういった意味では、カメラレコーダーはまだまだ絶対的に必要です。

おそらく、ミラーレス一眼カメラユーザーも、仕事が増え、クライアントワークが増えてくると、若い世代も含めて、カメラレコーダーの良さに気づき、購入する人も増えてくるのではないかと感じています。

パナソニックから新しく登場したカメラレコーダー3機種「AG-CX20」「HC-X2100」「HC-X1600」

――特に20代を中心とした若手カメラマンの間では、これまでカメラレコーダーに触れる機会が少なかった方も少なくありません。そんな若い人達の間で素早く対応できる操作性などでその良さに気づき始めていると感じています。

次にパナソニックさんにお伺いします。まず、業務用のプロAV部門とLUMIXの民生部門が統合されたと伺いましたが、今回のカメラレコーダーもその影響を受けて実現した製品になりますか?

神田氏:

部門としては、2024年4月1日よりパナソニック コネクトのプロAV部門とLUMIXの民生部門が統合され、イメージングソリューション事業部となりました。民生機と業務機の垣根がなくなってきているため、力を合わせて取り組んでいこうという方針です。ちょうど私が両部門の商品企画を兼任しました。

並川氏:
パナソニックではしばらく放送用カメラレコーダーの新製品が出ていませんでした。しかし、プロ部門と民生部門が統合されたことで、放送用を含んだプロ用カメラレコーダー事業を再始動させようという動きが出ています。今回の3機種はその第一弾となります。

近年、レンズ一体型カメラレコーダーの需要も減少傾向にありましたが、統計を取って数字を追っていたところ、昨年あたりから下げ止まりが見られました。世界中で選挙が相次ぎ、ENGカメラレコーダーの需要が再び増加したためです。新製品が投入され始めたのは、このような背景があります。

辻氏:
私は民生側のHC-X1600やHC-X2100のマーケティングを担当しましたが、撮影チャンスを逃せないシチュエーションは、コンシューマーの世界でも同様だと考えています。

ミラーレス一眼カメラを使って映像制作を行う人が確実に増え、裾野が広がっています。システムの拡張性、つまりレンズ交換や外付けLEDライト、外部モニターなどのオプションが豊富な点が魅力でしょう。しかし、できることが増える分、シャッターチャンスを逃してしまう可能性も出てきます。そういった悩みの解決策として、カメラレコーダーのHC-X1600やHC-X2100が選択肢として浮上するのではないかと考えています。

もちろん、カラーサイエンスを重視し、ミラーレス一眼カメラでLog撮影して色編集を行う人も多いでしょう。用途やシーンによってミラーレス一眼カメラと使い分けていただくことが、コンシューマーのお客様、趣味で映像制作をする人たちの中でも今後増えてくるのではないかと思います。

その際に、先ほど照山さんもおっしゃっていましたが、ミラーレス一眼カメラから始めた人が、自分の撮りたいものを突き詰めた結果、カメラレコーダーにたどり着くケースもあるはずです。同じような道を辿るクリエイターにとって、HC-X1600やHC-X2100は有力な選択肢となると考えています。

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4K60P、小型軽量、高倍率ズームで多様なニーズに対応

――では、実際に今回発表された3機種共通の概要から教えてください。

神田氏:

今回発売する3モデルは、AG-CX20、HC-X2100、HC-X1600です。3モデル共通の特徴は、「取り回しが便利なコンパクトボディ」「4K60pを長時間記録可能」「広角25mm、光学24倍ズーム」の3点です。片手で簡単に持てるこのコンパクトボディで4K60pや光学24倍ズームを搭載しているカメラレコーダーは、現在は弊社の3モデルだけです。

メモリーカード・カメラレコーダーの「AG-CX20」

撮像素子には1/2.5インチセンサーを採用しています。1インチセンサーを採用していないのか?という意見もあるかと思いますが、これは前モデルからの企画でこだわったスペックです。

1/2.5インチセンサーを採用することで、カメラ本体のサイズを大幅に小型化することができます。さらに、高倍率ズームも実現できるため、屋外での撮影や取材など、撮り逃しが許されない場面で、ズームで被写体に寄りたいというニーズに応えられます。例えば、事故現場など近づけない場所からでも、ズームで撮影することができます。

また、バッテリー寿命が非常に長い点も大きな特徴です。コンパクトなボディにバッテリーを内蔵しながら、4K60Pで4時間35分の連続撮影が可能です。他社製品では2時間程度の場合もあるため、この長時間撮影は大きな強みです。

バッテリーパックは5,900mAhの「AG-VBR59」。4K60P長時間収録(4時間35分)が可能

ぴったりとツライチでバッテリーがボディに収まるのも特徴であろう

前モデルからの進化点として、USB Type-C給電にも対応しており、長時間撮影中にバッテリー残量が少なくなった場合でも、モバイルバッテリーで充電しながらバッテリー交換が可能です。

電源OFF時のみに限られるが、USB-Cポートにより、市販のACアダプターやモバイルバッテリーによる給電や充電が可能

ちなみに他の進化点としては、ビューファインダーにOLEDを採用し、アイカップも少し大きくすることで、より見やすく改良しています。


照山氏:
この1インチセンサー以下のクラスは、すべてのメーカーが製品を出しているわけではないようですね。

並川氏:

先ほど申し上げたように、民生部門の基礎技術、つまり、どれだけ小さく作れるか、コストパフォーマンスよく作れるかという点に当社の強みがあります。他社にも民生用ビデオカメラに長けたメーカーはありますが、このような小型カメラを作る技術がないと、やはり実現は困難です。

特に光学系が重要になります。どのように小型化するか、ENG用途で明るさを重視するか、望遠を重視するかという選択になりますが、当社としてはENG用途を考えた場合、ズームで寄れるカメラレコーダーを作ることを重視しています。競合他社と差別化を図るためです。

当社内でも、1インチセンサーで小型化できないか検討したこともありましたが、当社の技術資産を考慮すると、現在の方向性が競争軸として有利であると判断しました。AG-CX10を開発した際に、コンシューマー向けにHC-X2000、プロ向けにAG-CX10を同時に展開したのは、そのような経緯があります。今後については、3連リングのニーズもあるため、それらも含めて準備を進めているところです。

内蔵LEDライトを搭載し、薄暗い場所でも撮影が可能

タッチ操作に対応した3.5型の高精細(約276万ドット)LCDモニターを搭載

+48 Vファンタム電源/MIC/LINEが選択可能

神田氏:

3連リングのモデルと今回のモデルでは、主なユーザー層が異なります。今回のモデルは、カメラレコーダーの操作や設定に慣れていないディレクターの方でも使えるように、オート機能を充実させています。

また、年配の方で、以前はデジを使っていたものの、体力が衰えてきたため、より軽量なカメラを求めている方も多く、展示会などで説明すると、関心を持たれる方が非常に多いです。そのようなニーズもあり、現在、このサイズのカメラレコーダーが市場で求められていると感じています。

並川氏:

今、ようやく民生部門のカメラ、つまりLUMIXなどの光学資産を持つ部門や映像処理エンジンを作る資産を持つ部門と一緒に仕事ができるようになり、今回の3モデルが実現できました。

――一番気になるのは、「AG-CX20とHC-X2100の違い」と「HC-X2100とHC-X1600の違い」についてです。そのあたりの違いを詳しく教えてください。

神田氏:
AG-CX20にあってHC-X2100にない違いは、充実したネットワーク機能です。配信の現場で便利なNDI HX2やSRTに対応しています。弊社はリモートカメラなども開発しており、そこで培ったストリーミング技術を活かしています。NDIやSRTのシステムをすでに導入している方はぜひCX20を選んでいただければと思います。

並川氏:
NDI HX2とSRTに加えて、従来からご使用いただいているP2 MXFにも対応しています。

P2フォーマットは放送局のハウスフォーマットとなっており、P2 MXFに対応することで、P2フォーマットを採用されているお客様にご利用いただくことを意図しています。

神田氏:

HC-X2100とHC-X1600の機種間では、SDI搭載有無とハンドルユニットの同梱有無が大きな違いです。さらに、X2100にはUSB-Cを介した制御機能が搭載されています。例えば、USBテザリング機能です。スマートフォンと有線で接続して、スマートフォンのネットワークを介してライブ配信を行うことができます。さらに、USB-CをLANケーブルに変換してライブ配信することも可能です。また、デュアルコーデックに対応していることも大きな特徴です。デュアルコーデックでは、SDカードを2枚挿入し、それぞれに異なるフォーマットで記録することができます。

HC-X1600は、ハンドルが同梱されずに販売されている商品で、SDIが搭載されていない商品です。より安価に手軽に撮影したい方向けの商品になります。

機能差分の話からは逸れますが、今回、スマートフォンアプリ「HC ROP」でライブビューにも新たに対応しました。HC ROPは、リモート操作が可能なアプリですが、ライブビューを見ながらタブレットやスマートフォン上で操作ができるようになっています。

この機能は、既存モデルであるHC-X1500、HC-X2000、HC-X2、HC-X20などでも使用できるように展開中です。

新製品だけでなく、すでに製品をご利用いただいているユーザーにも価値を提供していくという姿勢は、LUMIX側でもファームウェアアップデートを頻繁に行うことで、ユーザーからの信頼を得ていると実感しています。その活動方針をカメラレコーダーにも展開し、すでに販売している製品でも、より快適に使用していただきたいという思いから、既存モデルであるHC-Xシリーズにも展開しています。

比較表

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