
3rd EP『アナザーダイバーシティ』を携えて、2月の大阪・UMEDA CLUB QUATTRO公演からキックオフしたレトロリロンの7大都市ワンマンツアー<RETRORIRON 3rd EP「アナザーダイバーシティ」Release One-Man Tour 2025>が4月6日、満員の東京・EX THEATER ROPPONGIでファイナルを迎えた。
涼音(Vo / AG)はMCで、「このEX THEATERは初めて自分が観たいと思ったアーティストのライブに足を運んだ場所」だと語った。ここに立つのは挑戦でもあったそうだが、この日のEX THEATERは満員御礼で、びっしりとレトロリロンのファンで埋まっている。自身のツアーファイナルで、ステージから見る景色は、格別なものだろう。ライブは、ツアーの充実感と、もっともっとという向上心、バンド4人のそれぞれの思いがかけ合わさったボリューム感のある内容となった。

SEが流れ会場に歓声や拍手が満ちるなか、永山タイキ(Dr)、飯沼一暁(B)、miri(Key)、そして涼音が順に登場。「東京!」とフロアに呼びかけた涼音は、「ありのままの自分らしく楽しんでほしい」と伝えると、EP『アナザーダイバーシティ』幕開けの「ワンタイムエピローグ」でショーをスタートした。頭から大きなハンドクラップが起き、シンガロングパートに声が上がる。ぐんぐんとボリュームを上げていく重厚なバンドアンサンブル、高らかに会場に舞い上がっていくような涼音のボーカルで、早くも一体感を掴んでいく感じだ。それぞれにスキルフルにして、卓越したバンドアンサンブルで聴かせるレトロリロンだが、そうした上手さだけではないバンドの気迫やノリが、エネルギッシュなグルーヴを生んでいる。
涼音がスタンドマイクから、ハンドマイクとなってステージを動きながら歌う「DND」ではドラムとベースのファットなリズムが観客の体を揺らし、たっぷりとした前奏で会場の温度を上げた「Restart?」は、柔軟で変幻自在なアンサンブルの妙味も響かせる。

「レトロリロンです、今日はありがとう!」と改めて涼音が挨拶をすると、フロアから長い長い拍手が送られる。「おぉ…顔がいっぱい」と心の声を漏らしながら、ツアーファイナルを迎えられたことを伝えた涼音は、「話したいことはたくさんあるがそれを音楽に、演奏に乗せたい」と続く曲へと突入する。
カラフルな照明が注ぐなかでプレイしたのは、ドラマ『晩餐ブルース』のオープニング主題歌にもなった「カテゴライズ」。洒脱に跳ねるmiriのピアノや飯沼のベースが、ヒリヒリとした鋭利な心の声を映した歌をスッと風に乗せて、軽やかに運ぶ。ジャジーな「カウントダウン・ラグ」でそれぞれのパートの見せ場を作り、続く「独歩」では心模様そのままにサウンドがうねりを帯び、リズムやムードを変えてディープでダイナミックな演奏で会場を飲み込む。そこに連なる永山のドラムソロも圧巻。このツアーを一歩一歩踏み締めてきたバンドの骨太さを感じられるブロックだ。
疾走感のある「たださよなら、命燃え尽きるまで」に続いて、浮遊感のあるミニマムなビートから高揚感のあるシンガロングへとドラマティックに上昇していく「Document」では、観客の歌声に「まだまだ! 東京元気ないんじゃない?」と煽りながら、フロアのエネルギーを糧にアンサンブルの馬力を上げて、「東京、最高!」(涼音)の声を響かせた。

しばし暗転の後、あらわになったステージは、ベッドや家具、フロアライトなどが配置され部屋を再現した空間となっていた。「大きなステージなので、調子に乗っちゃって準備しました」とは涼音の言葉だが、前半でのダイナミズムで魅せていくサウンドやステージ展開とはまた一味異なるプライベートで、そばにある音楽の温度が感じられるようなステージだ。
バンド結成の経緯や、「この4人で人生をかけてひとつのことをやるとは思っていなかった」ことなどを涼音は語る。そして「予期せず人生が変わることもあるんだなというなかで、唯一自分で曲を書いて歌うことは変わらない」と力強く話した。続けて過去の自分に贈るように歌ったのは、EP『アナザーダイバーシティ』収録の「救いのない日々よ」だ。涼音はベッドに腰をかけ、飯沼も椅子にかけて、ゆったりとエモーショナルに、日々を噛み締めるように音を紡ぎ歌う。静かで、熱い拍手が会場を覆っていった。
後半へ向かうMCは、miri、飯沼、永山が担当。ツアーの思い出を語ったり、ツアーの車移動の道中でやっていたゲームを会場のお客さんと行うなどのアットホームなこのパートは、通称“デンジャラスゾーン”と呼ばれ、何が起こるかわからないワクワクとヒヤヒヤがあったが、こんなフレンドリーさもまたバンドやそれぞれのキャラクターのひとつの魅力となっていったツアーのようだ。

「ヘッドライナー」でスタートした後半戦は、バンドとの距離もさらに縮まった感覚でシンガロングのボリュームも上がっていく。イントロの分厚いアンサンブルに涼音はステージを駆けるように盛り上げ、続く「きれいなもの」ではドラムと向き合ってギターをかき鳴らしてアンサンブルのテンションを上げる。ハンドクラップが高鳴り、観客の歌声も大きくなる。心地よい開放感が、会場を駆け抜けていく感覚だ。
涼音は、いい雰囲気が出来上がってる会場を眺めながら、自分が「どうしてもここでやりたいと駄々をこねた」というEX THEATERが満員で迎えらたことを喜び、「本当にありがとうございます」と伝えた。長い拍手が会場に響く。涼音は、音楽や人生について想いを巡らせながら、「まだ答えに辿り着いてないが、これからも自分から出てきたものを音楽にぶつけたい」と語った。また、「自分のためだけに曲を書いているけれど、それが何かの瞬間にぶつかって誰かの曲になったらいい」と伝えると、ラストは、永山の“ワン、ツー、スリー、フォー!”のパワフルなカウントから「深夜6時」、そしてタイトルにかけて「親友になって帰りませんか!?」と呼びかけて「TOMODACHI」へとグッとアクセルを踏み込んでいく。
メロディアスなベースに観客は体を揺らし、miriは笑顔で鍵盤を奏でる、涼音はベッドにひっくり返って歌ったり、バンドや観客を指揮するように盛り上げる。ラストの大きなシンガロングに「はは! 最高!東京」(涼音)と声を上げて、観客の熱気を全身で抱きしめるようなエネルギッシュなアンサンブルで締めくくった。

大きな拍手に迎えられたアンコールでは、今回のツアーでは行けなかった土地を回る5月からの<ONE-MAN ROAD TOUR 2025 -SUMMER- >をアナウンスし、「夢を見る」「アンバランスブレンド」を披露した。「アンバランスブレンド」ではステージの上からピンクの紙吹雪が舞い、会場にも大量の紙吹雪が降り注いだ。時に意地を張ったり報われなさに身を捩りながらも、自分の思いにまっすぐに進んでいく、その美しさを肯定する晴れやかなサウンドやコーラスが眩しく、ステージは華やかさを増す。
そして多幸感が会場を包むなかでサプライズ的に、ユニバーサルミュージックからメジャーデビューすることが発表された。フロアはさらなる歓喜に湧いて、「おめでとう!」の声が上がる。「これからもどうぞよろしくお願いします」(涼音)の声を飲み込むような大きな拍手と、ステージに積もった紙吹雪は桜の花びらの絨毯のようで、新たな旅立ちの季節にもぴったりなツアーファイナルとなった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎スエヨシリョウタ
■<3rd EP「アナザーダイバーシティ」Release One-Man Tour 2025>
01. ワンタイムエピローグ
02. DND
03. Restart?
04. カテゴライズ
05. カウントダウン・ラグ
06. 独歩
07. たださよなら、命燃え尽きるまで
08. Document
09. 救いのない日々よ
10. ヘッドライナー
11. 焦動
12. きれいなもの
13. 深夜6時
14. TOMODACHI
encore
15. 夢を見る
16. アンバランスブレンド
▼TOUR SCHEDULE
2月24日(月/祝) 大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
3月01日(土) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
3月07日(金) 宮城・仙台LIVE HOUSE enn 2nd ※追加公演
3月08日(土) 宮城・仙台LIVE HOUSE enn 2nd ※SOLD OUT
3月14日(金) 広島・SECOND CRUTCH
3月16日(日) 福岡・DRUM Be-1
3月29日(土) 北海道・札幌Bessie Hall
3月30日(日) 北海道・札幌Bessie Hall ※追加公演
4月06日(日) 東京・EX THEATER ROPPONGI ※オールスタンディング