U-20日本代表の10番・大関友翔を突き動かすロス五輪への決意。背景にあった悔しすぎた経験と川崎での新背番号「16」への想い【インタビュー】

 相手の立ち位置を見ながらその間にポジションを取り、ボールを引き出し、巧みなターンで前を向いて攻撃陣を活かす。状況によっては自ら持ち運ぶ。

 今季のJリーグが開幕する直前から約3週間に渡って中国で行なわれたU-20アジアカップで10番を背負い、ボランチとして大関友翔が見せたプレーは、まさに川崎で学んできたものだった。

 派手さはない。それでもその巧さに目を奪われる。サッカーにおいて重要な、そして何より基礎的な“止める・蹴る”の技術、ポジショニング、相手を見るという要素を、的確に表現し、なおかつ強化してきた得点力も発揮する姿に、彼の確かな成長を感じた人は多いのではないか。

 川崎アカデミーから昇格した1年目(2023年)は試合になかなか絡めなかったが、昨季レンタル移籍したJ3の福島では主力として躍動(32試合・8得点)。実戦経験が彼をひとつ上のフェーズに押し上げたのだろう。

「福島での1年は充実というひと言に尽きます。試合に出ること、結果を残すこと、それに加えて(世代別の)代表にも選んでもらい国際試合も戦えた。選手としての幅を広げられました。立ち位置、受け方、味方とのつながり方、ボールをもらう前の選択肢の増やし方、止める技術、相手の剥がし方など、細かいところですが、成長した分、余裕が生まれたのかなと思います。

 プロ1年目は試合に出られず、アピールすることに必死でしたが、試合に出ることで実戦への身体のもっていき方、アプローチの仕方なども学べました。自分が試合で100パーセントの力を出すためのルーティンじゃないですけど、日々の過ごし方も勉強できましたね。

 シーズン終盤になるにつれて疲労も溜まりましたし、大きな怪我はなかったですが、細かい痛みを抱えながらの試合もありました。それこそ代表に選んでもらえて、帰ってきて中2日で試合に臨むこともあったので、タフにもなったと思います。すべてが良い経験でした。J3のベストイレブンにも選んでいただけましたし、自分の価値を示せた1年かなと感じます。

 ただ(福島での4-3-3のインサイドハーフは)手探りでもありました。元々、自分は、受ける側じゃなく、出す側だった。ユースの時もボランチの位置から縦パスを刺したり、スルーパスを出すことが、自分のプレーだと考えていましたから。ただ福島には上手い選手が一杯いて、パスを引き出す側に回ったほうが自分が活きると考えました。また、結果を出すことを強く意識していたので、ゴール前に入っていく回数を増やしたかったという面もありました。ただあそこまで上手くいくとは想像していなかったです。受ける側にも出す側にもなれたことは大きいですね。

 一方でJ1はプレースピードが速い。最後に足が出てくるところなど、J1はもうひとつ伸びてくる感覚はあるので、より目を慣らしながらプレーしたいです」

福島で輝きを放ったMF大関友翔が川崎復帰を決めるまで。ケンゴさん、セキさん、周平さんに背中を押された言葉と“川崎の伝統を継ぐ者”への期待【インタビュー】
 
 その受ける側のイメージは、川崎の諸先輩のプレーからも学んできた。

「ヤスくん(脇坂泰斗)、ケンゴさん(中村憲剛/現・川崎FRO)、(大島)僚太くんもそうですが、やっぱり立ち位置で勝負している。相手からしたら本当に嫌なところに立っていますし、ターンできる位置にポジションを取っている。そういう姿を見るだけで学べることばかりですし、素晴らしいロールモデルの先輩たちばかりなので、イメージを膨らませています。

 ケンゴさんには立ち位置もそうですし、止めた時、止める前にどんなことを考えておくのかなど、ユースの時から教えてもらいました。ただ日々課題も出るので、それを直接聞いて、ヤスくんらにもアドバイスをもらったりして、レベルアップしている感じです」

 対して福島やU-20日本代表で得た自信を川崎でも表現するためには守備面の向上もテーマになる。それこそ今季の川崎は鬼木達監督から長谷部茂利監督に指揮官が交代し、組織的なディフェンスをベースに、勝つ確率をより上げるサッカーにも取り組んでいる。

「(4-2-3-1で)ボランチとトップ下、どちらもできるようになりたいですが、良い形でボールを奪う、相手の時間を作らせないという点はどちらにしても大事で、中盤の選手主導でやるべきだと思います。ボランチのかけ声ひとつでチームを動かすことが、今の自分の課題だと感じています。

 チームとしての守備のハメ方もありますし、ここで取りたいっていう狙いもある。そこに持っていけるように指示をするのは、ボランチの役目でもあるので、そこのコーチングは身に付けたいですね。

 シチュエーションや相手によっても変わりますが、中を締めて外に追い出す場面や、中途半端に奪いにいくのではなく、チーム全体で動くためのスイッチを入れるファーストディフェンスも大事です。そのスイッチもボランチの仕事なので、しっかりやりたいです。

 そして自分から周囲に要求できるようになること。自分主体でやっていく場面を増やさなくちゃいけないですが、周りはすごい人ばかりなので、説得力を増せるように、プレーで見せていく必要もあると思います」

【画像】小野伸二や中村憲剛らレジェンドたちが選定した「J歴代ベスト11」を一挙公開!

【画像】際立つデザインがずらり! Jクラブの2025年シーズン新ユニホームを特集!

【画像】サポーターが創り出す圧巻の光景で選手を後押し!Jリーグコレオグラフィー特集!
 
 大関といえば、福島時代は尊敬する中村憲剛を意識して14番を背負ってきた。ただ、現在の川崎ではアカデミーの先輩である脇坂泰斗が伝統の14番を継承しており、大関は新シーズンで「16」を背負う。かつて大塚真司、鄭大世、楠神順平、大島僚太、長谷川竜也らが付けた番号で、前任者は昨夏、プレミアリーグ2部のストークに移籍した瀬古樹だった。

「(川崎1年目で付けていた)28はパト(リッキ)が付けていますし、クラブのほうから16はどうかと聞いていただいて、自分で選べる立場ではないので、付けさせていただきました。

 16番は多くの偉大な方たちが背負った番号。直近では、(瀬古)樹くんが付けていて、樹くんには本当に良くしてもらいましたし、定期的に連絡も取っていました。だから、尊敬する先輩の番号を背負えるのは誇らしいですね。

 実は樹くんとはシーズンが終わった頃に『来季どうするんだ』みたいな話をしていて、冗談で『16、空いているから付ければ良いんじゃん』みたいなことを言われていたんです。だから実際に16をもらうことになり、樹くんに連絡を入れて、ふたりで『マジで?』みたいに笑いあってもいましたね。

 14番への想い? 他の番号と比べるわけではないですが、そりゃアカデミーで中盤をやってきた選手はみんな想いはありますよ。でも今は絶対的な存在であるヤスくん(脇坂泰斗)がいる。自分はそこに関してどうこう言える結果を残していないですから。でもいつかは、良い意味でヤスくんを脅かせるような存在になりたい。それが引いてはフロンターレのためになるはずです」

 そしてもうひとつ、大関には大きな目標もある。前述したU-20アジアカップで日本は準決勝で敗れたが、ベスト4入りを果たし、今年9月にチリで開催されるU-20ワールドカップの出場権を獲得。2005年2月6日生まれの大関はいわゆる“早生まれ”で、同世代の年長者として、2028年のロス五輪出場も目指しているのだ。
 
「(年代別代表は)常に呼ばれないといけない場所ですし、呼ばれるためには川崎での活躍が必要。なので、大前提としてフロンターレで試合に出ること、そして代表に呼ばれて当然だよねという活躍をしたいです。

 ロス五輪は明確な目標です。必ず出たい。(2023年の)夏に、SBS(カップ)に出場するU-18代表に呼んでもらい、10番を初めて背負わせてもらった時に、僕は世代の一番上で、ゆくゆくはこのチームはロス五輪につながるという話を聞かせてもらい、五輪を意識するようになりました」
 
 またその夢には、アカデミー時代から川崎で同学年として切磋琢磨し、先に大舞台に立ったライバルの存在も関係している。

「(2024年の)パリ五輪で、高井(幸大/川崎DF)が活躍している姿を見せられましたからね。そしてA代表にまで駆け上った。『ああ、こうやって人って上に行くんだなって』思いを知らされましたし、正直な話をすると、高井がA代表に呼ばれた時は『おめでとう』と言える心境ではありませんでした。いや、そこはチームメイトとしてさすがに言いましたよ。でも、本当に悔しかった。人生で一番刺激をもらった出来事かもしれないですね。俺もやらなくちゃと。

 自分はパリに出られなかったので、まずロス五輪でしっかりメンバーに選らんでもらうこと。そしてその先のA代表も目標にしたい。そのためにも高井にはずっとA代表にいてもらってその背中を追いかけたいですね」

 以前から線の細さを指摘されることもあったが、「喉が細くて食べるのが本当に遅いんですよ。それも体重が増えにく体質みたいで。なので福島では寝るか食べるかの生活をしていました」と冗談っぽく話しながら、この1年で4キロほど増量したという。

 トップカテゴリーで輝く準備は着々と進んでいる。2月6日には20歳の誕生日を迎えた。

「20歳で迎える勝負のプロ3年目。試合に出て活躍することが第一目標ですし、何より自信は付けてきたので、あとは自分がどれだけ力を示せるかです」

 ちなみに近年は若手の海外移籍が格段に進んでいる。そこへの想いはどうなのか。

「昨年の夏にインタビューしていただいた際にも話したと思いますが、やっぱり選手である以上は、より高いレベルでプレーすることが目標になります。A代表に入るには海外で結果を残す必要もあります。ただ今の自分は海外どうこうと言える選手ではない。それを考えるのはJ1でしっかり活躍してフロンターレを優勝させてから。だから今はフロンターレで活躍することしか考えていません」

 頼もしい言葉である。

 自身は否定はするが、コミュニケーション力にも優れ5歳上のDF佐々木旭を“兄貴”と慕い、「パパみたいな存在」という17歳上の小林悠にも積極的に話かけて、自らの世界を広げている。その意味でも彼の可能性は無限大だ。

 川崎での中盤のレギュラー争いは熾烈を極めるが、その雄姿にぜひとも期待したい。

(全3回/2回目)

■プロフィール
大関友翔 おおぜき・ゆうと/2005年2月6日、神奈川県生まれ。真福寺FC―FC多摩ジュニアーFC多摩Jrユース―川崎U-18―川崎―福島。川崎育ちの新時代の司令塔。プロ2年目の昨季、レンタルで加わった福島では中盤の欠かせない存在として活躍。今季は愛する川崎でのブレイクを期す。ロス五輪を目指す若き代表の中軸選手でもある。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)