ついに劇場公開された劇場版『ヤマトよ永遠に REBEL3199』第三章「群青のアステロイド」。この作品には、これから新シリーズを観ようという気にさせる仕掛けがありました。



『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』メインビジュアル (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 3199 製作委員会

【約20分】さぁ追いつこうぜ! こちら『2199』から『3199』にいたるまでのあらすじです

旧作と新作の『宇宙戦艦ヤマト』の違いとは?

 2025年4月11日より、劇場版『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』が、ファン待望の公開となりました。この『第三章』は、往年のファンにも注目の一篇だといえるかもしれません。

『ヤマトよ永遠に REBEL3199』は、2012年から始まったリメイク版アニメシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2199』の第4作目にあたり、2021年に公開された『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』の続編となります。

 そして、旧作シリーズの劇場アニメ映画『ヤマトよ永遠に』(1980年)とTVアニメ『宇宙戦艦ヤマトIII』(1980年)をベースに、新たな物語として構成されたのが本作『3199』シリーズです。

『2199』をリメイク版と記しましたが、本当のところはリブートといった方が適切かもしれません。それくらい原典である旧作版と異なる部分が多々、見受けられるのです。話の展開はもちろん、キャラクターの性格や配置といった部分がかなり異なっています。

 これは、旧作版におけるいくつかの矛盾点を考慮し、現代的な解釈で再構成したためでしょう。「宇宙戦艦ヤマト」が「戦艦大和」の残骸から改造したのではなく偽装した残骸の中で作られていた点や、波動エンジンが設計図の到着から数日でヤマトに搭載されたように見える点などです。

 なかでも大きいのが艦内勤務の交代制がなかった点でしょう。特に「森雪」が複数のポジションを兼任するのは無理があるため、その役割を分担する新キャラクターを複数、設定しています。これにより、旧作版では雪以外にはあまり見かけなかった女性乗組員が増員することになりました。

 この女性キャラクターが激増した点は、旧作版と『2199』以降の作品との大きな違いといえるかもしれません。近年のアニメ作品では大きな理由がない限り、キャラクターの男女比はほぼ同数です。こういった部分を現代的な解釈にしたのかもしれません。

 筆者がリメイクというよりリブートと感じるのは、主にこういった部分から受ける印象が強いからでしょうか。もっとも旧作版のすべてを現代風にしてしまうと、『ヤマト』である意味がありません。そのため、ここだけは変更してはいけないという「芯」の部分はそのままだったと思います。

 こうした部分は好き嫌いが分かれる点で、ファンのあいだでも改変を良しとしない部分もあり、意見も人それぞれでしょう。もっとも旧作を知る人のなかにも、本編を観る前から評価をする人が少なからずいるようです。

 しかし前述したように、今回の劇場版には往年のファンも大いに注目するであろうポイントがありました。



『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』よりシーンカット (C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 3199 製作委員会

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第三章によって期待感が膨らむ今後の展開とは?

『3199』が『2199』以降の作品と大きく違う点、それが旧作版の『永遠に』と『III』というふたつの作品をミックスしている点でしょう。これまでになかった手法です。もっとも、この部分は往年のファンなら周知の事実でも、若い世代のファンにはピンと来ないかもしれません。

 それまでの旧作版『ヤマト』は、最初のTV版と劇場版、2作目にあたる『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』と『宇宙戦艦ヤマト2』は同じ世界観の物語で細部に違いはあっても、大まかな物語の進行は一緒のものでした。

 しかし『永遠に』と『III』はまったく異なる物語で、本来なら混ぜられるようなものではありません。そういう点で『3199』は『2199』以降のシリーズでもっとも旧作版と違った展開が予想されるシリーズとなりました。

そして、このことがもっとも色濃く出たのが今回上映されている「第三章 群青のアステロイド」です。なぜなら全編にわたってファンには見たこともない展開で物語が進んでいくからでした。

 たとえば「第一章 黒の侵略」では、今回の敵「デザリアム(旧作版での暗黒星団帝国)」の地球侵攻、そこから脱出してヤマトへ向かおうとするヤマトクルー、しかし「古代進」の目の前で行き別れてしまう雪……といった部分は旧作版と同じでした。

「第二章 赤日の出撃」では、イカルス天文台に辿り着いたヤマトクルーたちは消息不明だった「真田志郎」の手によって改装されたヤマトに乗り込み、ヤマトの新艦長となった「山南修」と共に発進するという展開が旧作版と同じです。

 ところが第三章「群青のアステロイド」では、これまでのように旧作版にあった展開がほとんどなく、まったくの新作ストーリーとなりました。いわば、これまでの知識が通用しないストーリーだったわけです。

 こういった部分から、『2199』以降の新作シリーズを観ていなかった旧作ファンが追いつくには、これが最後の機会かもしれません。つまり旧作ファンにとっては重い腰を上げる良い機会となるわけです。

 もちろん、いきなり途中からというのもハードルが高いと思いますので、これを機会に後追いで『2199』以降の作品を視聴していけばいいでしょう。何度も言いますが、かつてヤマトに興味があった世代には千載一遇のチャンスかもしれません。

 また、これまで『2199』以降のシリーズを欠かさず観てきた旧作ファンにとっても、期待感のある物語だったかもしれません。なぜならば、ここまで旧作版ではなかった展開があるのなら、今後のストーリーは大きく変わるかもしれないからです。

 その最大の注目は本来なら死亡するキャラクターの生存ルートがあるかもしれないという希望でしょうか。例を挙げると『永遠に』で戦死する山南や、『III』で戦死する「土門竜介」が生き残る可能性です。

 共にこれまでの作品でキャラクター的に深く掘り下げられ、『2199』以降のシリーズでは旧作版以上にファンの心をつかんでいました。もちろん、このふたり以外にも悲劇を回避してほしいキャラクターはファンそれぞれにいることでしょう。

 そういった点では、第三章で新たな物語の扉を開けた『3199』への期待感は膨らんでいるといえるでしょうか。第四章の予告編にも想像をかき立てられる場面が多々あり、ファンの期待感は盛り上がっていると感じられます。