後方から圧巻のオーバーテイクショーも、デロイトはペナルティ裁定に泣く。笹原右京も厳しい表情「au TOMSを上回る力あった」

 岡山国際サーキットで行なわれたスーパーGT開幕戦は、シリーズ3連覇を目指す1号車au TOM'S GR Supraが盤石の走りで優勝を飾った。まさに横綱相撲といったレース運びだったが、トムスのもう1台、37号車Deloitte TOM'S GR Supraのパフォーマンスも印象的だったと言える。ただ、彼らにとっては非常に悔しさの残るレースウィークとなってしまった。

 Deloitte TOM'Sは予選Q1で敗退し14番グリッドからのスタート。笹原右京曰く、ポール争いができるポテンシャルを感じていながら、Q1のアタックではau TOM'Sに引っかかってしまったようで、チームのSNSに投稿された動画で「チームと話さないといけない。僕らとしては納得がいかない予選になった」と振り返っていた。

 そんな中で迎えた決勝レースで、笹原は会心の走りを見せた。ウエット路面の難しいコンディションの中で後方集団をかき分けていき、au TOM'S、14号車ENEOS X PRIME GR Supraに次ぐ3番手まで浮上した。

 しかしながら、Deloitte TOM'Sに10秒のタイムペナルティが出される。19周目、64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTの大草りきが1コーナーでコースオフしたインシデントの責任を問われ、10秒のタイムペナルティを科されてしまったのだ。

 ジュリアーノ・アレジに交代後も安定したパフォーマンスを見せて3番手でフィニッシュしたDeloitte TOM'Sだが、セーフティカーランなどで各車のギャップが縮まっていたこともあり、5位降着。最終ラップの17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTと8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTのホンダ勢同士討ちがなければ、もっと順位を落としていただろう。

 上記のModuloとのインシデントを映像で振り返る。セーフティカー明けリスタートとなった19周目のホームストレート、笹原は7番手を走行しており、前を行くAstemoに仕掛けるべくイン側にラインをとった。そして1コーナーに向けてアウト側のレコードラインに戻ってくる際、ブレーキングでその後ろから迫ってきたModuloが行き場をなくす形でコースオフした……という流れだ。

 これについて笹原は、Moduloは自分のかなり後ろを走っており、止まりきれないくらいの勢いで飛び込んできたように感じたと説明。そのため、Moduloにスペースを残していないとみなされたことにも納得がいっていない様子だ。

 また、GT300クラスで起きた18号車UPGARAGE AMG GT3と65号車LEON PYRAMID AMGの接触でLEON側に5秒ペナルティが出たことを考えても、なぜ自分たちが10秒のペナルティを受けたかも納得できていないという笹原。レース展開にかかわらず柔和な態度で取材に臨む印象の彼も、今日ばかりは表情がこわばっていた。

 なおチームによると、この件に関して正式に抗議したというが、裁定は覆らなかった。

「僕としては、ひたすら残念な気持ちでしかないです」と肩を落とす笹原。ただマシンのポテンシャルの高さは見せられたのではと話題を向けると、au TOM'Sと同等以上のポテンシャルがあったはずだと述べた。

「スタートでビリに落ちても3番手まで上がってきたことを考えると、予選でのトラフィックがなければ、1号車(au TOM'S)と14号車(ENEOS)と争えるポテンシャルは十分にあったと言えます」

「ブリヂストンは素晴らしいタイヤを用意してくれたし、クルマのセットアップも素晴らしかったと思います。僕としては自分のやれることをコース上でやってきたつもりでした」

「間違いなくポテンシャルがあるということは、皆さんにも見てもらえたと思います。SNS上では、厳しいご意見をもらうこともありますが……僕たちは今まで努力して、頑張ってここまでやってきています」

「今週は1号車とも色々ありましたが、彼らと争えるというか、上回れる力は存分にあったかなと思います。これを継続して、他のコースでも出せるように頑張らないといけません。少なくとも、今までの中では良いスタートだったと思います」