
ベルギーリーグ上位6チームで繰り広げられる『チャンピオンズプレーオフ』、そのスタートにヘントとアントワープは失敗して2連敗。4月13日、両チームの対戦は「俺たちも相手も勝たないといけない試合だった」(渡辺剛/ヘント)という意地と意地が激しくぶつかり合った。
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立ち上がり20分はアントワープが一方的に攻め込み、決定機を何度も掴んだが、ヘントはGKトム・ファンデンベルへのビッグセーブもあって無失点で凌いだ。ここでゲームチェンジャーとなったのが伊藤敦樹。前節のウニオン戦(0-3)で先発したものの前半いっぱいでベンチに下がった伊藤は、アントワープ戦でベンチスタート。しかしFWヒラリオン・ゴーレが負傷したことから15分、ダニイェル・ミリセビッチ監督は伊藤の投入を決意した。2トップ1シャドーシステムから、右シャドーに伊藤を置く1トップ2シャドーへのシステム変更を兼ねた采配が当たり、ヘントの中盤に落ち着きが生まれ、最終ラインはひと息つくことができた。
22分、その伊藤のダイナミックなプレーにより、ヘントが先制ゴールを奪う。CBジョーダン・トルナリガの角度をつけた縦パスを、伊藤が敵陣やや右サイドで受けると、味方とのワンツーから大外を駆け抜けて右ポケットに侵入。ここから二度、低い弾道のクロスを入れるとアントワープゴール前で混戦が生じ、最後は右ウイングバックのノア・ファディガがゴールを仕留めた。この伊藤が絡んだゴールが結局、ヘントの決勝ゴールになって1-0で勝利。5位ヘントは4位アンデルレヒトと勝点26で並んだ。
「チャンピオンプレーオフに入ってから、個人としてもチームとしても難しい試合が続き、前のウニオン戦は前半で代えられてしまって、今日はベンチスタートだった。怪我をしたのがFWの選手だったので、『自分じゃないな』と思って最初、座っていたら急に名前を呼ばれて、ほぼアップのない状態で入りました。でも、うまくすんなり試合に入れて、良い形で2、3回、ボールを受けることができて、そのままゴールにも繋がった。
ゴールに関わるプレーを増やしたいと常に思っていたのが、今日の結果につながってそれが決勝点になりました。前半は良い形を何回か作れました。後半は押し込まれる展開が続いて難しい試合でしたけれど、全員、本当にハードワークして勝利にこだわった結果が勝点3につながりました」(伊藤)
ヘントの鉄人、渡辺はディフェンスリーダーとして、キャプテンとして圧巻のプレーで1-0の勝利に貢献した。特に45分の大ピンチでは、対峙したミッチェル・アンジェ・バリクウィシャのパスを出し際でカットし、背後でフリーだったチャロン・シェリーへ通すことを阻止した。
終盤、ヘントのゴール前は、1点を追うアントワープの死に物狂いの攻撃の前に不法地帯に。とりわけ渡辺は86分にボールのないところで足を踏まれたり、88分にはクロスの競り合いから相手の頭で首を痛めたりして、短い時間で二度、ピッチの上で悶絶した。
そして後半アディショナルタイムには、相手にゴールラインの向こうまで吹き飛ばされながらもデュエルに勝利し、アントワープの勢いを鎮めた。現地全国紙の記者は「この時間帯の渡辺は実に印象深かった」と試合後、唸っていた。
実は88分から治療を受け、しばらく試合が中断してから2分後、渡辺に向けて大ブーイングとビールが飛び交うタッチライン際を、彼は「なにも聞こえないぞ」というポーズでハーフウェイラインまで戻ろうとし、アントワープベンチの前を通った際にはすでに退いていた右SBイェレ・バタイユから怒りの突きを食らった。敵ファンを挑発した渡辺と、報復のバタイユはともにイエローカードをもらった。
「やっぱり流れですよ。痛がるタイミングとか、俺はそういうのを見ている。常々、相手サポーターや相手選手がイライラしているところにつけ込もうとしている。イエローカードをもらったのは良くないこと。でもああいうことで味方が奮起して、最後の締め方にもつながった気がしますね」(渡辺)
昨秋から渡辺がキャプテンマークを巻く回数が増えてきた。チャンピオンズプレーオフでは3戦すべてで主将を務めている。しかし、必ずしも英語を得意としているわけではないことから、円陣での声がけはチームメイトに任せている。だからこそ、アントワープ戦の終盤のような熱いデュエルの連続や、相手の焦りに乗じる態度でチームを引っ張っている。
「そうです。俺はそっちです。言葉というよりプレーで示している。他の“ちゃんとしたキャプテン”みたいに発言とかでチームを引っ張るというよりかは、プレーで引っ張っていってほしいと言われている。それが今日、うまく出せたと感じています」(渡辺)
前半序盤にピッチに入ると、一気に試合の状況を一転させた伊藤は、後半に入って守勢に立つと地上戦と空中戦で身体を張り、機を見て長駆のフリーランニングから相手ボックスに入り込みゴールを狙った。
「今日の試合は自分たちがリードして試合が進み、そこで押し込まれているなかで、チーム全体でできることは最後の場面で身体を張るということ。こっち(ベルギー)はサポーターも含めて、日本よりエキサイトしやすいというか。剛くんのシーンもそうですよね。例えばファウルをもらった後に時間を作ったり、勝っているときの試合の進め方はより頭を使ったり、そういうことをベルギーに来てから、より学んでいます。自分自身も、日本にいるときより感情を出すことが大事だと思ってます」(伊藤)
日本にいるときはポーカーフェイスだったのか? そう伊藤に投げかけると渡辺が「そつなくプレーしてたんじゃないか」とジョーク交じりに言うと、当たるところもあったのか。伊藤は「それもそうだし」と受け止めてから続けた。
「ファウルされたりアフターで蹴られたりしても自分からガっとは行かないですし。(腕を振り上げたりして怒りをオーバーゼスチャーとかで示すことは?)シーンによります」(伊藤)
「こっちは舐められたらダメ。舐められたらつけ込んで来るので。そういうところですね」(渡辺)
熱いプレーの連動と感情の爆発。しかもコントロールされた爆発――。渡辺が身を挺して示すその姿に伊藤も感じ入る部分があるようだった。
名は体を表す。剛という名の通り、頑健な身体を誇る渡辺が、コルトレイク時代からこの3シーズン、試合を欠場したのは本当に稀なこと。
「あと4試合で、ヘントでの公式戦出場が100になるんです。2シーズンで100試合ですよ。ちょっとおかしい(笑)」(渡辺)
コルトレイク時代に続き、今季はヘントでもチームの年間最優秀選手に選ばれた。昨季もMFジュリアン・デ・サール(ヘント→アル・ラーヤン/カタール)に続いて2位だったというから、3季に渡って渡辺は所属クラブを象徴する存在として認められているわけだ。そんな渡辺に今季のヘントを振り返ってもらった。
「チームとしては、まだ完成しきれてないですね。監督が代わってやり方も大きく変わりましたし。今のミリセビッチ監督は(昨季も含め2期、ヘントを率いてレジェンド扱いの)ハイン・ファンハーゼブルック監督のもとでコーチをしていたので、(今季途中まで指揮を執ったワウター・)フランケン監督のやり方から、ハインの戦術が今、ベースに戻ってきた。しかし敦樹もそうなんですが、新しくヘントにやってきてハインのときの戦術を知らない選手もいる。まだ試合が少なく、そのすり合わせができてないので、ここ数試合、実力のある相手に負けた。チームとしてはまだまだですけれど、良い準備ができれば来季は面白いチームになると思います。俺は(ステップアップで)チームにいないという前提で(笑)。俺は外から応援してます」(渡辺)
今季ここまでを振り返り、伊藤は「移籍してきて、最初は慣れるのに多少時間がかかりましたけれど、コンスタントに試合に絡めてます。でも個人的にはもっと得点、アシストが足りてないと思ってます。残り7試合で得点(2ゴール)とアシスト(1アシスト)にもっとこだわってやりたいです」と語った。
「あと2点、取ってほしいね!」(渡辺)
「はい!!」(伊藤敦樹)
ヘンクに0-4、ウニオンに0-3と決壊した守備網をしっかり立て直して得た末のウノ・ゼロ勝利に、ふたりは激戦の疲れが吹き飛んだかのような笑顔を見せた。
取材・文●中田 徹
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