
チームが苦しい時にこそ、敗戦ムードが漂う時こそ、颯爽と現われてピンチを救ってみせる。まさにヒーロー。
そんな形容詞が似合う男が新たな金字塔を打ち立てた。“J1途中出場最多ゴール数(29得点)”でギネス世界記録に認定されたのだ。
川崎が誇るストライカー・小林悠が歩んできた道のりが改めて認められた瞬間であった。
昨年4月のアウェー・広島戦で、途中出場から“カズさん越え”となるJ1通算140得点目を記録していた小林は、同年10月のG大阪戦では途中出場からのゴール数を「28」に伸ばし、播戸竜二氏の記録を破り、J1途中出場最多ゴールを記録。この試合は恩師・鬼木達監督が2024年シーズン限りでの退任発表後のチームとしての初得点としても印象深い。その後、小林は11月の浦和戦で“29点目”もマークしていた。
37歳。膝には数度メスを入れており、同世代や先輩が引退を決断するたびに「俺のほうが身体はボロボロなのに。でも頑張れるところまで頑張ります」と自らを奮い立たせてきた。
ゴールを奪い続けられる秘訣には準備と気持ちの大切さを挙げる。
「準備、そして気持ちの持っていきかた。出た時に気持ちが一番マックスな状態になっているように。心と身体の準備がすべて」
そしてこう誇った。
「(ゴールとは)チームで自分が一番欲しているものだと思っています。そうやってプレーしてきましたし、それがこういうゴール数につながっている。ゴールって自分のなかでは、技術も大事ですが、気持ちの部分がすごく強くて、そういう意味では気持ちがそうさせてくれているゴールはたくさんある。ゴールを欲している自分だからこそ」
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その雄姿は3人の子どもにとっても誇らしい“ヒーロー”と呼べるものだろう。小林も自身に問いかけてきた。
「今は息子たちに対して、自分は格好良いパパでいられているのかなって思ったりすると力が湧いてくると言いますか。試合を見ながらでも、そういうことを考えている時もあります。それが自分の力の源。一番格好良い存在でありたい、と」
家族思いの小林らしい言葉である。
一昨年には同級生の太田宏介、昨年には同期入団の楠神順平らが一線を退いた。それでも託された想いは、エネルギーに変わっているはずである。
ギラギラ感が薄れることはない。いや、短い時間で勝負をすることが増えた分、ピッチに立った際のギラツキはより色濃くなっている。
リハビリから始まった今季は新たに就任した大黒将志コーチの下で新たな動き出しの習得にもチャレンジ。先日、戦列復帰を果たしたばかりだが、その試みも大いに楽しみである。まだまだ観る者に歓喜をもたらしてくれるに違いない。
ヒーローは何度だって立ち上がる。その姿に涙し、勇気をもらう人は多い。私もそのひとりである。
取材・文●本田健介(本誌編集部)
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