
今季のJ1序盤を象徴するような試合だった。
国立競技場で行なわれた第10節の町田対浦和は、2-0で浦和が勝利した。勝てば単独で首位に立つ町田だったが、そうは浦和が卸さず。今季アウェーでの初勝利を挙げた。
町田は9節終了時点で敵陣空中戦勝率が1位と、圧倒的な強みがあるチームだ。ポゼッション時にプレスをかけられれば、ロングボールで打開する傾向が強く、得点パターンもクロスが多い。特徴がわかりやすい。
こうしたストロングポイントが明確な相手と、どのように戦うべきか。対策は大きく二つに分けられる。防止するか、対処するかだ。
昨季の浦和は、町田を防止しようとした。ボールを握って試合を支配し、町田がストロングを出す機会そのものを減らし、未然に防ぐ。特に埼玉スタジアムで戦った16節はその傾向が強く、ボール保持率は66パーセントを記録した。しかし、ボールを支配しつつも一瞬の隙を突かれて失点を重ね、1-2、2-2と、昨季は1分1敗で町田に負け越している。
そして今回、マチェイ・スコルジャが率いる浦和が選んだのは、対処のほうだった。相手のストロングを消すのではなく、受け止める。守備局面は増えるが、予め準備して受け止め、町田の空中戦を想定内にする。
浦和は4-4-2の中盤4枚が中に絞り、常にフィルター機能を維持した。地上戦で中に起点を作らせないのはもちろん、金子拓郎、安居海渡、サミュエル・グスタフソン、マテウス・サヴィオは味方DFをスペースに晒すことなく、空中戦のセカンドボールを回収できる立ち位置を取り続ける。渡邊凌磨、松尾佑介もそれを助けて走り回った結果、ほぼ90分間、町田は中に起点を作ることができなかった。
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一方で、こうして浦和が4-4-2で中を固めれば、3-4-2-1の町田はかみ合わせ上で空いた両ウイングハーフを使い、外回りでボールを運んでくるのは必然だ。ここでズルズルと前進を許せば、空中戦が自陣ゴールに近づいて事故が起きやすくなり、さらにクロスを横角度から放り込まれるため、マーキングやクリアの難易度が増す。これを想定内とは言いたくない。
浦和としては、最優先で中を防ぎつつ、サイドからの前進を制限したい。そこで両サイドハーフの金子とサヴィオは、松尾と渡邊のチェイシングに合わせ、縦ズレして町田3バックの左右にプレスを噛み合わせた。中盤のスペースをガバッと空けるほどの深追いはしない。制限をかける程度だ。
すると町田の両サイド、相馬勇紀や林幸多郎はプレッシャーを受けた3バックをサポートしようと下がるため、合わせて両サイドバックの石原広教や長沼洋一が縦ズレし、サイドで噛み合わせて前進を止める。
ただし、相馬を1対1で止めるのは難しい。縦ズレした背後を取られるリスクが高いため、安居がサイドへ張り出し、石原とダブルチーム対応を行なう。仮に町田に相馬クラスが両サイドに1人ずついれば、ボランチが2人とも左右に振り回されて浦和のフィルターに穴が空いたかもしれないが、林は突破タイプではなく、後半開始から加わった藤尾翔太もほぼ同様だった。もう1枚、町田にウインガーがいればどうなったか。
結果、町田が何もアクションを起こせなかったわけではないが、得意の空中戦も、相馬のドリブルも、浦和が受け止め切った。できるだけ有利な勝負になるように誘い込んだうえで。リアクションで完全なイニシアチブ(主導権)を握ることは難しいが、ある程度までは可能だ。浦和はそれを実践し、見事な勝利を得た。
ところで、今季J1は10節まで終了したが、町田対浦和と似たような印象を抱く試合は多い。
相手のストロングを受け止め切って勝つ、あるいは引き分けに持ち込む。裏を返せば、上位側にも受け止め切られる程度のストロングしかない。だからこそ、リスクを負ってそれを未然に防ぐような積極的アクションを起こす必要がなく、挑むチームも少なく、多くの試合がロースコアで膠着しがち。順位表が団子状態であることと無関係ではない。
同節のFC東京対柏も同じだった。ポゼッションスタイルで注目を集める今季の柏だが、その持ち味を発揮しつつも、直近では引き分けが増え、勝点が伸び悩んでいる。
リカルド・ロドリゲス監督は辛うじて1-1で引き分けたFC東京戦後、「ダイナミックなプレーが足りなかった」「ボールを支配するメンバーを揃えると決定力不足に陥り、決定力を高めるためにカードを切ると試合のコントロールを失うというジレンマに遭遇している」と現在のチーム状態を分析している。
町田に限らず、柏に限らず、ストロングが明確なチームは多いが、それを相手が割り切って受け止めてきたとき、突き破るほどではない。今季のJ1序盤を単語で表すなら、足踏み、ジレンマ。このまま最後まで団子状態のパフォーマンスが続くのはあまりに寂しいので、上の段階へ抜け出すクラブに期待したい。
取材・文●清水英斗(サッカーライター)
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