プレーを流すことでプレータイムを増やすという安易な発想はすぐに止めるべき。欧州でも…【コラム】

 今シーズン、Jリーグはアクチュアルプレーイングタイムを増やす試みをしている。止まった時間を減らし、疾走感やスペクタクルを高める。それが狙いだ。

 欧州トップレベルのゲームと比べて、Jリーグは単純にプレー時間が短い。1試合につき、10分ほど少ないゲームもあるという。そもそも、欧州トップレベルの試合はJリーグの1.5倍速のようなスピード感だけに、Jリーグが真っ先に打つべき手とも言えるが…。

 開幕以来、まだ混乱が見える。

 例えばファウルを流すようなケースが多く、モヤッとした感じが蓄積しつつある。流すこと自体は悪くない。単純に、それだけプレーが長くなる。ファウルで止めた後も、できるだけ早く再開させるべきだろう。しかし速さを求めたことで、危険なプレーまでがやや見逃されやすくなっているのだ。

 おそらく、審判はスピードアップを求められたことによって、一つ一つのジャッジの精度が落ちてしまっている。

 第4節、サンフレッチェ広島対横浜FC戦では、トルガイ・アルスランが膝を痛め、担架で下がった(結局、状態は酷くチームを離脱して治療することに)。接触自体はありうるものだったが、その前後でぎりぎりのコンタクトが増えていた。他にもカウンターで抜け出したシーンで、適当なカードも出されていない。試合後にミヒャエル・スキッベ監督が激昂していたのはアルスランの件だけでなく、試合全体のジャッジに対する不信感ではないのか。

 プレーを流すことでプレータイムを増やす、という安易な発想はすぐに止めるべきだ。

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 欧州でも、危険なファウルには容赦なく笛を吹く。なぜなら、選手を守るためで、放置すると報復行為も起きるからだ。殺伐とした環境にしてはならない。

 おそらく、ゴールキック、スローイン、FK、CKにかける時間を削るだけで、大幅な短縮になるだろう。欧州トップのチームは、プレー再開が早い。Jリーグではゴールキックやスローインで40−50秒もかけるチームもあるが、それらは容赦なく削るべきだろう。FK、 CKでも、Jリーグは20秒近く余計に時間をかけている。試合終盤、ワンプレーにかける状況ならいざ知らず…。

 選手もどこか急き立てられたようにプレーのスピードを上げることによって、技術精度は自ずと落ちる。結果、わずかにコントロールが乱れたたボールに対し、お互いがぐしゃっと潰れるようなシーンが増えている。このままエスカレートすると、深刻な怪我人が出るだろう。

それは選手も、ファンも求めていることではない。

 まずは、ゴールキックやスローインやセットプレーの時間を削るところから始めるべきだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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