キヤノン定番デジの大本命XF605!アップデートと実戦の現場を通した再評価 Vol.05 [XF605 SCENES]

「XF605」はCanonの業務用4Kハンドヘルドカメラである。小型軽量ながらイントラフレームによる4K60p収録対応で、操作系はプロフェッショナルユーザーには必須の3連リングを備えたズームレンズを装備する。

2021年10月28日に発売を開始し、デビューからすでに3年半を迎えるモデルだが、その性能やハンドリングに古さを感じる事はない。筆者のタイムコード・ラボでは発売と同時にXF605を購入し、現在もロケや配信の現場でメインアームとして活躍している。

筆者が主戦場とするテレビ撮影の現場では、昨今はショルダーマウントタイプのENGカメラを要求される案件は少なくなり、ミラーレス一眼系カメラか業務用ハンドヘルドカメラ(以下、デジ)での撮影を求められる機会が多い。

地上波やケーブルテレビはオンエアがHDなため4Kカメラは不要なのだが、実際の選択肢としては現行機は4K対応カメラのみとなるため、それをHDフォーマットで使用するというのが現在の運用だ。そうした中で、XF605はデジの魅力的な選択肢になっている。


バラエティー番組ロケ仕様

現在、当ラボではデジ取材のほとんどをXF605で行っている。導入当初は、制作陣に「今回からXF605という最新機種を使う」「サンプル動画ファイルを送るので、編集上で問題なく取り扱えるか確認して欲しい」、オンエア後には「Canonのカメラはどうだったか?」など、事前申告と事後確認を行った。

結果、XF605を敬遠するディレクターもクライアントも居らず、オンエアも日常的に問題なく行われている。

また、協力スタッフとして当ラボに出入りしてもらっているカメラマン達からも「○○社がXF605を導入して、そちらの現場でも使っているので使い慣れている」という声も聞くようになった。さらに、東京で配信系の現場に私が呼ばれた際、マルチカメラ収録で揃えられたカメラの4台全てがXF605だったという事もある。ほぼほぼ他社のデジしか見掛けなかったこのフィールドで、XF605を選択するユーザーがこの3年余りの間に確実に増えたのを実感した。


XF605が4台揃った配信現場

このようにCanonXF605が選ばれる理由が確かに存在する。XF605登場から4年を迎えようとする今、実戦の現場を通して改めてこのカメラを再評価し、プロが求める業務用ハンドヘルド機を考察したいと思う。

XF605概要


XF605は、1.0型単板CMOS/約829万画素センサー搭載の4K 60P 4:2:2 10bit記録に対応するハンドヘルド型ビデオカメラだ。デュアルピクセルCMOS AFで「頭部検知」や「瞳AF」といった同社のEOSシリーズで培われたオートフォーカス機能が搭載された。光学ズームは15倍で、25.5mm〜382.5mm(35mm換算)をカバーする。


SDXCカードによる多様な2スロット記録

広色域撮影やHDR撮影にも対応し、Canon Log3/Cinema Gamut、HLG、PQといった規格を採用する。SDカードWスロットによる多様な異種同時記録、12G-SDI・HDMIによる出力解像度設定や同時出力も可能。RTP/UDPなどによるIPストリーミングにも対応し、USBモードにUVCを選択しPC接続することでWebカメラとしても使用できる。

発売後も定期的な機能向上のファームウェアアップデートが行われた。その中でもVersion 1.0.3.1ではカスタムピクチャーにCINEMA EOSと共通のガンマであるCanon 709が追加され、IPストリーミングのプロトコルには業界で広く使われているSRTも追加された。

また、Canon Multi-Camera ControlというiOS/iPadアプリにも対応し、Wi-Fiや有線LANで繋ぐことでマルチカメラ撮影時などに各カメラの露出調整や最大4台一括RECをアプリケーション上から操作できるようになっている。

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外観と重量


XF605は4K60pに対応するフラグシップクラスの4Kデジだが、XF605の全長は約333mm、重量は約2010g(本体)となっている。前モデルのXF705が全長約378mm、重量約2710gと重量級カメラであったのだが、約10%の小型化と約700gの軽量化に成功している。右手グリップ部分の形状も良く、本体重量の小型軽量化と相まって手持ち撮影時のホールド感は高い。


独立3連リングを採用するXF605

カメラ本体はコンパクトだが、独立3連リング(Zoom/Focus/Iris)を搭載。放送用ENGレンズのような直感的なレンズ操作をカメラマンが行える。また、物理的なボタンやスイッチが豊富に実装されており、カメラボディー左側面に整然と並んだそれらのボタンで、撮影機能を集中的に管理できる。物理ボタン/スイッチのメリットは、慣れてくるとブラインド操作が可能になることで、撮影画面に集中しながらでも、指先だけでいくつもの機能に直接アクセスできる。デザイン的にはXFシリーズの意匠を踏襲しており、ゴツゴツした質実剛健な雰囲気が個人的には好みだ。


スイッチ/ボタン配置は整然としていて分かりやすい

上部ハンドルの前方上面にはタリーランプが埋め込まれ、カメラマンだけでなくディレクターや音声マンからもカメラが録画状態を把握しやすく、さりげないが実用的だ。またハンドルを握ってローアングル気味に構えた際の左右のバランスも良く、自然と水平が取れるようになっている。


ハンドル上面のタリーランプ

NDフィルターは+/−のボタン式。見た目ではNDポジションが分からないというデメリットがある反面、最も濃いND1/64の次にND Clearに直結できるので、手回しターレット式NDフィルターと同じ扱いができる。また、専用アプリや多機能リモートコントローラーによるNDの切替が可能なのもボタン式のメリットだ。

液晶を収納していた本体部分にはボタンやスイッチがなく、スッキリ

液晶モニターは3.5型の約276万ドット。静電容量方式タッチパネル。ビューファインダーは0.36型・約177万ドットの有機ELパネルが採用されており、小さいながらも見やすいVFとなっている。