七海ひろきの“カッコよさ“に様々なエッセンスを添えた1枚、3rdアルバム『Crystal』レビュー

俳優・声優・アーティストとして様々なフィールドで活躍する七海ひろき。3月に行われた「第十九回 声優アワード」にて新人声優賞を受賞するなど、数多の舞台で培われた表現力とスター性は現在進行形で多くの人を虜にしている。

そんなアーティスト活動6年目に突入した七海ひろきが、4月16日に3rdアルバム「Crystal」をリリースした。初回限定盤のBlu-rayには2曲のMVが収録されているほか、ファンクラブ限定盤には持ち運びサイズの「七海ひろきぬいぐるみ」が付属するなど、特典も含めて豪華な1枚となっている。ここからはアルバムに収録されている9曲のレビューをお届け。これまで多彩なジャンルの楽曲を歌ってきた七海ひろきは、今回はどのような音楽で我々に驚きを与えてくれたのだろうか?

M1「Skyward」




狭い世界に閉じこもっている悩める人たちの背中をバシッと押してくれる、強度の高いアップチューン。重厚感のあるマイナー調のA・Bメロがサビで爽やかなメジャーサウンドに一気に変化することで、世界がブワッと広がるような爽快感が得られる仕掛けとなっている。この曲で最も印象的な部分は、なんといっても七海のアーティスト活動において初挑戦となるラップパート。聴く人の心を鼓舞する、母音を強調したようなクールで力強いフロウと、どんどん上へ上へと上昇していくように盛り上がっていくラストの展開によって、聴く人の気持ちも自然と上向いていくに違いない。

M2「夜の隨」




自身が初の主人公役を務めたアニメ『戦国妖狐 千魔混沌編』エンディングテーマとなったミディアムバラードナンバー。ヒロインを真っ直ぐに想う主人公の気持ちを丁寧に描写した歌詞と、余韻に浸れるようなしっとりとしたサウンドが心地よくいつまでも浸っていたくなる。また、この作品は、最初は感情表現が乏しかった主人公が、どんどん感情を知って成長していく物語でもある。そんな主人公を歌声でも表現するかのように、曲が進むにつれてどんどんエモーショナルになっていく七海の歌声にも注目してもらいたい。

M3「SASSOU」




スピード感あふれるアップテンポな和ロックナンバーは、殺陣で敵をバッサバッサと斬り捨てていく七海の姿が目に浮かぶ、舞台感のある1曲に仕上がっている。一聴したら覚えてしまうリズミカルで覚えやすい古風な言葉の数々に、“ソイヤ!”“いざいざ”といったライブで盛り上がりそうな合いの手など、最初から最後まで聴く人を飽きさせない仕掛けが満載だ。グルーヴ感のあるギターサウンドと、透明感のあるキーボードの音色のコントラストも聴いていて楽しくなってくる。

M4「BuZZ」




所々に挿入されたコールパートやクラップによるライブのコール&レスポンスの応酬が目に浮かぶ、リスナーの心をハイにさせる爽やかなライブチューン。縦ノリしやすいギターロックをベースに、軽快なドラムビートや流れるような鍵盤の音色が混ざり合ったエネルギッシュなサウンドからは楽しさしか感じられないはずだ。「ダメな日でも君らしく未来へ繋げばBest Dayになる」というメッセージを語りかけるようにさらりと歌い上げる七海のボーカル表現もカッコいい。

M5「Not Over」




センスあふれる四つ打ちデジタルサウンドと、七海の艶のある歌声の親和性に聴き惚れるクラブナンバー。ウィスパー気味に囁かれる“耳にKiss”の不意打ちな歌声にドキッとしてしまった人も多いことだろう。歌詞からは過去の恋をいつまでも忘れられない軟弱な部分が垣間見えるが、クール&セクシーな吐息混じりの歌声とオシャレなサウンドのおかげで全くそのように聴こえないのが不思議なところ。韻を意識しながらリズミカルに流れていくサビのフロウのテクニカルさも巧みだ。

M6「Knock down night」




シンデレラの舞踏会に“嘘”というワードを加えたことで、これほどまでに蠱惑的な世界観へと変貌するとは。駆け引き・快楽・甘い罠といった大人の恋愛を思わせる比喩や単語を多用した歌詞に、ブラスライクなサウンドとジャジーなピアノとギターの音色、そして艶のある七海の歌声がプラスされたことで、甘美でアダルティな魅力がこれでもかと振り撒かれている。シンデレラの手を取る王子の心は嘘か真か。

M7「Magic of Love」




ようやく素直になれた不器用な2人の関係を歌ったピュアなラブソングは、聴く人の胸を打つような晴れやかなメジャーサウンドが印象的。“全てを打ち明けていいかな?「あいしてる」”といったストレートな言葉を、温かみのある優しい歌声で丁寧に紡ぐ七海のボーカル表現も非常に心地良い。歌詞に登場する2人の純愛が一層眩しく感じられるのは、大人な恋の駆け引きを描いた「Knock down night」の次に位置していることも影響しているに違いない。

M8「曖昧」




今はもう曖昧にしか思い出せない相手のことを心の片隅に留めながら、前を向いて一歩ずつ歩き出そうとする。アコースティックサウンドをバックに紡がれる、ドラマ性と普遍性を両立させた解像度の高い歌詞が印象的な1曲だ。そんな感動的な曲の魅力をさらに押し上げているのが、時に繊細に、時に力強く歌い上げる七海の歌声。特にラスサビの晴れやかさや儚さといった様々な感情の機微が織り交ざったボーカルは、シンプルに聴く人の心に沁みわたっていくだろう。

M9「Dearest」




アーティストデビュー5周年記念にリリースされた、七海をずっと応援してきたファンへ向けた感謝の歌。“君は僕の道標” ”ありがとう 何度でも言わせてほしい”といった飾らない言葉たちが、ピアノとストリングスの壮大な音色と合わさることで、最大級の愛となってリスナーである私たちの耳に届けられていく。ファンの存在を宇宙や銀河になぞらえることを仰々しいと思う人もいるかもしれないが、七海にとってファンの存在がそれほどまでに大きいという証でもある。

ライブ向きのロックチューンから壮大なバラードナンバーまで、多種多様な9曲が収録された今作。改めて振り返ってみると、七海ひろきの“カッコよさ”という1本の太い軸をすべての曲にしっかりと存在させつつ、ラップや和ロックといった新たなジャンルでアーティスト・七海ひろきの世界を着実に広げようとしているのが伝わってくる。俳優や声優の仕事で得られた経験をアーティスト活動に還元していくポジティブなスパイラルが生まれているということでもあるのだろう。

今回のアルバムを引っ提げて、5月から6月にかけて東京・福岡・大阪の3都市でワンマンライブ「One man LIVE773“Crystal”」が開催予定。七海の魅力がステージの上でさらに増幅されるのはファンなら誰しも知っていることだろう。今作ではライブチューンも多く加わり、さらにライブが楽しみになった人も多いはず。スター・七海ひろきのパフォーマンスを目に焼き付けてもらいたい。

Information



 七海ひろき 3rdアルバム『Crystal』

2025年4月16日(水)発売

buy:https://773.lnk.to/Crystal_CD

listen:https://773.lnk.to/Crystal




【初回限定盤】CD+Blu-ray

税込¥6,050(税抜¥5,500)/KICS-94198




【通常盤】CD only

税込¥3,630(税抜¥3,300) /KICS-4198

■CD収録内容 ※初回限定盤・通常盤共通

1. Skyward

作詞/作曲/編曲:田中マッシュ

プロデュース:植木豪

2. 夜の隨

作詞/作曲/編曲:松本明人

3. SASSOU

作詞/作曲/編曲:賀佐泰洋(SUPA LOVE)

4. BuZZ

作詞/作曲/編曲:廣中トキワ

5. Not Over

作詞/作曲/編曲:ARAKI

6. Knock down night

作詞/作曲/編曲:槇島隆人(SUPA LOVE)

7. Magic of Love

作詞:町田トシユキ(Blue Bird’s Nest)

作曲:五戸力,町田トシユキ(Blue Bird’s Nest)

編曲:日比野裕史(Blue Bird’s Nest)

8. 曖昧

作詞/作曲/編曲:槇島隆人(SUPA LOVE)

9. Dearest

作詞:七海ひろき

作曲:西村奈央

編曲:Soft Boiled Rockers

■Blu-ray収録内容 ※初回限定盤のみ

「Skyward」Music Video & Behind The Scenes

「夜の隨」Music Video & Behind The Scenes

「Crystal」ジャケット撮影 Behind The Scenes

七海ひろき オリジナルキャンディ作り!