衝撃的なラストでファンを驚かせた『機動戦士Zガンダム』の結末。しかし当初の構想は全く異なっていた?
主人公カミーユ・ビダンらが描かれた『機動戦士Zガンダム SPECIAL』ジャケット(キングレコード)
【画像】えっ、スタイル抜群! こちらが『Z』に登場していたかもしれない「セイラさん」です(5枚)
『ZZ』なければ大団円EDだった?
アニメ『機動戦士Zガンダム』は1986年の放送終了から約40年が経過したいまでも、そのシリアスな展開と衝撃的な結末で多くのファンを魅了し続けています。主人公「カミーユ・ビダン」が精神崩壊するTVシリーズのラストは、「ガンダム」シリーズ屈指の衝撃エンドとして語り継がれています。
しかし、実はこの結末、当初は全く違う形になる予定だったようです。
続編『機動戦士ガンダムZZ』の制作が決まる前の段階では、『Z』の最終回はより明るい「ハッピーエンド」に近い形で構想されていた――という趣旨のスタッフの証言が、1986年発行の『別冊アニメディア 機動戦士Zガンダム完全収録版』で紹介されています。
設定制作を担当した高松信司さんによれば、富野由悠季監督がもらしていた話として、当初のシナリオでは「エマ・シーン」の死亡シーンは存在せず、「セイラ・マス」の登場も検討されていたといいます。
「もし『ZZ』が制作されなければ」という視点で考えると、TV版『Zガンダム』でカミーユは精神崩壊しないなどキャラクターの行方も変わっていたかもしれません。TV版『Z』の暗いラストは、続編『ZZ』でカミーユを「退場」させる必要性から生まれた側面があるといえます。
約20年後の2005年より公開された「新訳Z」こと劇場版アニメ3部作『機動戦士Zガンダム A New Translation』では、カミーユの精神崩壊が描かれず、戦いを乗り越えたカミーユが前向きな結末を迎えるという、まさに当初の構想に近い形で描かれました。
しかし、「新訳Z」で描かれた別の結末は、ファンの間でさまざまな評価を呼びました。カミーユの救済を喜ぶ声がある一方で、TVシリーズの重厚なテーマ性が薄れたという意見もあります。
ふたつの異なる結末を持つ『Z』は、アニメ作品がいかに制作環境や商業的要請によって形を変えるのかを示す興味深い例といえるでしょう。