
小泉進次郎農水相といえば、気候変動対策の重要性を説いた際の「セクシー」発言が有名だが、今回の総裁選では「514回の男」と呼ばれるかもしれない。9月20日の出馬表明会見で、小泉氏が手元の資料に目を落とした回数が、実に514回にも及んだからだ。
約1時間の会見中、ご丁寧にも回数を数えたのは、TBS系の番組「ひるおび」。この回数はあまりにも多く、小泉氏は自身が訴える内容を覚えていない、あるいは自信がないため、紙に頼り切っている様子を示したといえる。答弁能力の欠如はかねてから小泉氏の「弱点」と指摘されてきたが、「514回」はそれをまさに露呈した結果だ。
ところが、それを「安全運転」と擁護したのが、政治ジャーナリストの田﨑史郎氏だった。
「この総裁選を勝ち抜くためにどうしたらいいかということにおいては、最善の策をとっている。無理をしないで安全運転をしよう、という発想ですよね」
田﨑氏は菅義偉元首相に近く、菅氏が後ろ盾となっている小泉氏を推し、ライバルと目されている高市早苗元経済安全保障担当相をディスる傾向が露骨だ。
ただ、いかに田﨑氏が小泉氏を擁護しようとも、この「514回」が持つ意味は重い。小泉氏のライバルの4人の候補者は、若さと爽やかなイメージでは小泉氏とは比較にならないものの、政策理解能力では党内でもトップクラスといえる。
9月22日の小泉氏の出陣式に集まった92人(代理も含む)の国会議員は「514回」の現実に眼をそむけたまま、選挙戦を続けるのだろうか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)

