
石破茂首相(自民党総裁)は自身の後継を選ぶ総裁選について9月23日、記者団に対して「どなたということを申し上げることはしない」としながらも「この1年間、政権とともに汗をかき、力を尽くしてくださった方、基本的な政策を引き継いでくださる方が選ばれるといい」との本音をもらした。明らかに官房長官の林芳正氏、農水相の小泉進次郎氏を支持している発言だ。ただ、この石破氏の存在が逆に林、小泉両氏にとっては呪縛となっている。
石破首相が実際に林氏と小泉氏を支援していることは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が9月20日にYouTube「言論テレビ」で配信された動画「櫻井よしこのニュース解説」で明らかにしている。櫻井氏は「私が得た情報」として、石破首相が「反高市」として動いて電話をかけ、林氏と小泉氏を推していると語った。この情報は櫻井氏以外にも、自民党内で広がっている。
石破首相は昨年の総裁選の党員投票で、高市早苗氏の109票に次ぐ108票。小泉氏は61票、林氏は27票だった。
9月22日の所見発表演説会で、石破首相にねぎらいの言葉を寄せたのは、5氏のうち小泉氏のみ。林氏は石破政権を継承する姿勢を示した。高市氏らは石破首相に言及しなかった。このことからも林、小泉両氏が石破首相の「108票」を狙っていることは明白だ。
ただ、石破首相は昨年の衆院選、今年7月の参院選で自民党の惨敗を招いた最大の「戦犯」でもある。石破路線を引き継ぐと言うと、それでは「解党的出直しにならない」との批判を浴びてしまう。
石破政権との違いを見せようとして、林氏は国民一律2万円の給付案について「私だったらやらなかったかもしれない」と発言したものの、「一緒に決定に携わっていた」と発言撤回に追い込まれた。
「石破票」は欲しいが石破首相との違いを見せないと新味に欠ける。そんなジレンマを林、小泉両氏は抱えている。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)

