
自民党総裁選で高市早苗氏が初の女性総裁に就任し、永田町は一気に「初の女性政権」誕生へ向けて動き出した。もっとも、党内の役員人事をめぐっては「麻生色が強すぎる」との懸念も根強く、船出から波乱含みの様相だ。そんな中、決選投票で敗れた小泉進次郎農水相に対して、永田町では厳しい空気が流れ始めている。
ある中堅議員はこう語る。
「序盤は“進次郎政権確実”とまで言われていたが、地方票が伸びず議員票も最後に食われて逆転負け。陣営幹部は“ステマ疑惑報道なども響いて惜敗した。次こそは必ず政権を取りに行く”と息巻いているが、ベテラン勢の間では『次の総裁選でも厳しいのでは』という声が急速に強まっている」
進次郎氏が失速した理由として、党内では3つの要因が挙げられている。まず一つ目は、「小泉純一郎の息子」という看板頼みの政治スタイルだ。二つ目は主要ポストの経験不足。これまで環境相と農水相を務めたに過ぎず、外相や財務相といった重職は未経験。政調会長として党内調整を担った経験もない。要するに勉強不足で、リーダーとしての深みが感じられないという指摘が多い。そして三つ目は、国家ビジョンの薄さだ。「スピーチは上手いが中身がない」「どんな国を作りたいのかが見えない」との厳しい評価が党内外から漏れている。
その一方で、急速に株を上げているのが林芳正官房長官だ。総裁選の序盤こそ本命候補とは見られていなかったが、日を追うごとに高市氏の保守色を懸念する声が強まった。そんな中で「非常時のつなぎ役には、官房長官として安定感を示している林氏のような実務派がふさわしい」との声が広がり、一気に存在感を増した。
林氏は外相、防衛相、農水相、文科相、経済財政相など主要ポストを歴任。安定した手腕から「仕事師」とも呼ばれ、官房長官としての実績も評価されている。総裁選の結果は第1回投票で134票を獲得し3位。決選進出は逃したが、議員票では小泉氏の80票を上回る72票を得て、高市氏の64票を超える勢いを見せた。林支持派の中では「次は地方票がもう少し伸びれば“林総理”も十分ありうる」という声が高まりつつある。
永田町では、次の構図として「高市対林」、もしくは高市氏の後継と目される小林鷹之氏(コバホーク)と林氏の対決を予想する向きも増えている。古参秘書の一人は「進次郎氏の今後の行動次第では、彼の名前が総裁選の舞台から永久に消える可能性もある」とまで語る。
高市新政権が船出した今、注目されるのは進次郎氏がこの結果をどう受け止め、どう動くのかという一点だ。その一手が、彼の政治生命を決定づけることになりそうだ。
(田村建光)

