朝ドラ『ばけばけ』第3週では、雨清水家に訪れた不幸が話題になっています。

雨清水傅役の堤真一さん(2020年10月、時事通信フォト)
【画像】え…っ! 北川景子級? コチラが「松江藩随一の美女」と言われた「タエのモデル」人物の娘、実際の「小泉セツ」さんです
三男は史実よりだいぶマシ?
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し『怪談』『知られぬ日本の面影』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え数々の怪談を語った妻の小泉セツさんの生涯をモデルにした物語です。
第3週目では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が「山根銀二郎(演:寛一郎)」を婿に迎えて結婚し、貧しくも幸せな生活が始まりました。しかし、トキが働いている親戚(実はトキの実父)の「雨清水傳(演:堤真一)」が営む、機織り会社の経営が傾いてしまいます。
雨清水家は長男「氏松(演:安田啓人)」が出奔し、金策に走る傳から社長代理を任された三男「三之丞(演:板垣李光人)」も、どうしていいか分からない状態です。さらに、12話では傳が病気で倒れてしまいました。雨清水家は今後、どうなってしまうのでしょうか。
※ここから先の記事では『ばけばけ』のネタバレにつながる史実の情報に触れています。
トキのモデルである小泉セツさんは、生後7日で生家の小泉家から子供のいなかった稲垣家に、養子に出されました。その後、稲垣家は養父の金十郎さんが商売に失敗して多額の借金を背負ってしまい、セツさんは1879年(明治12年)11歳のときに、実父の小泉湊さんの機織り会社で働き始めます。
湊さんは明治維新後、上級の武家だった小泉家の家禄の一部を奉還して、旧士族の子女たちの働き口となる機織り会社を立ち上げました。一時期は、反物が松江から大阪まで売りさばかれるほど、好調な業績だったそうです。しかし、同じような業態の会社が増えたこともあり、会社の売り上げはだんだんと落ち込み、最終的に倒産します。
記録によると、小泉家は1886年(明治19年)に、一気に不幸が訪れたそうです。セツさんが前田為二さんという男性を稲垣家の婿に迎え、結婚した年のことでした。
まず1月に、次男の武松さんが19歳の若さで亡くなります。さらに、会社の経営が傾き没落した小泉家はかつて家来を住まわせていた門長屋に移り住み、もっと困窮した7月には親戚縁者の家に住まわせてもらうことになったそうです。
それからも不幸は続き、セツさんの10歳年上の長男である氏太郎さんは恋仲だった町娘とともに姿をくらまし、心労が祟った家長の湊さんはリウマチを患って、病床に伏す身となりました。もともと松江藩の家老の娘だった妻のチエさんは看病が苦手だったそうで、セツさんは実父の看病で何度も小泉家を訪れたといいます。
また、小泉家を背負う立場になった三男の藤三郎さんは、ろくに働きもせず、野山にいっては鳥を捕まえ、カゴに入れて餌を与えることに夢中になっていたそうです。そういった事情もあり、小泉家は没落の一途をたどりました。
そして、湊さんの病状は悪化していき、彼はセツさんが19歳となった1887年(明治20年)の5月30日に、51歳で亡くなりました。さらに同年、セツさんは貧しい暮らしに耐えかねた婿の為二さんが稲垣家を出奔するという不幸に見舞われます。
史実通りなら、『ばけばけ』ではこれからしばらく、辛い場面が続くようです。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)、『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)、『小泉セツ 八雲と「怪談」を作り上げたばけばけの物語』(三才ブックス)
