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「性犯罪なんて裁判にすべきじゃない!」理解し難い警察の対応…娘が小学生のころに遭った性被害を告発した親子が加害者に実刑を課するまでの闘い

「性犯罪なんて裁判にすべきじゃない!」理解し難い警察の対応…娘が小学生のころに遭った性被害を告発した親子が加害者に実刑を課するまでの闘い

「諦める選択肢は最初からなかった」

ある日、「上谷弁護士がどうしてそんなに怒っているのか、話を聞きたい」という捜査関係者の方が事務所に来てくれました。

私はこれまでの経緯を説明し、娘さんに落ち度があるようなことを言われたこと、酷い被害なのに性犯罪なんて裁判にすべきではないと言われたこと、迅速に捜査が行われていたら時効に間に合ったかもしれないこと、お母さんが録音した加害者の会話が不要と言われるなど、まともな捜査をしている様子がうかがわれないこと、被害者対応が極めて不十分であることなどを訴えました。

すると、その捜査関係者の方は両手の拳を強く握り締め、全身を震わせながら「そこまで酷いとは思っていませんでした。本当に申し訳ありません。すぐに動きます」と言ってくれたのです。

そこから、本当に事態が動き始めました。警視庁捜査一課の性犯罪専門の捜査官が主体となって捜査することになったのです。

加害者は刑務所に

捜査一課の方から、「被害者が被害に遭った現場の写真を撮らせてほしい」「お母さんの供述調書を作成したい」「加害者がお母さんに話した際の録音データがほしい」などと、次々に依頼がありました。これまでそんなこともやってなかったのか、警察署はいったい何を捜査していたんだろう、という失望もありましたが、捜査一課のスピード感に感謝しました。

そして、改めて画像解析の結果、「強姦未遂罪」に問えそうな写真がある、ということで、まだ時効が完成していない強姦未遂罪での立件に向けての捜査が始まりました。捜査一課が本格的に入ってから一か月半ほどで、加害者は逮捕されました。

加害者は起訴され、刑事裁判が行われました。加害者は、時効となった強制わいせつについては罪を認めていましたが、強姦未遂については否認していました。

しかし、第一審で実刑判決が下され、加害者が控訴したものの棄却され、娘さんの望み通り、加害者は刑務所に入りました。裁判でもいろいろと大変なことはありましたが、娘さんは、加害者が服役したことで少しずつ回復しています。

私は、このお母さんじゃなかったら、事件は立件できなかったと思います。諦めずに3度もハートさんに電話したこと、警察に「不要」と言われた加害者の話の録音を消去せずに持ち続けていたことなどは、なかなかできることではありません。

刑事裁判の判決が確定した時、お母さんに「よく諦めなかったですね。普通は、録音など消してしまうものですが、そのまま保存してあったし、全ての対応が素晴らしかったです」と声をかけました。すると、お母さんは、「諦める選択肢は最初からなかったです」と答えたのです。娘さんの「加害者を刑務所に入れたい」という気持ちに全力で寄り添いたいという気持ちが、実を結んだのだと思いました。

しかし、本来、被害者がこんなに辛い思いをしなくても、捜査や裁判は行われるべきものです。まだ一部の警察でこのような扱いがなされていることはとても残念です。今回はたまたま、「絶対にこの事件は立件されるべきだ」と思ってくれた捜査関係者に出会えたおかげで加害者を刑務所に入れることができましたが、偶然でしかありません。

私自身、何度も「無理かもしれない」と思いました。それでも、立件が難しい未成年者の性被害で、客観証拠がある数少ない事件なのだから、絶対に諦めたくなくて、もがき続けました。

今振り返ると、この事件が闇に葬られたかもしれなかったことには、身震いするような思いです。そのようなことがないように、これからも「諦めない」気持ちで被害者に寄り添っていきます。

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