現在、術後19年が過ぎましたが、がんは再発せずに済んでいます。しかし、がんになりやすい素因は残っているかもしれないので、今後も野菜スープや食事療法は続けます。皆さんも、ご自分の体の状態に合わせて、無理なく生活に取り入れられるものを見つけられるといいでしょう。私は、それが野菜スープだったと思っています。【体験談】岸本葉子(エッセイスト)

プロフィール

岸本葉子(きしもと・ようこ)

1961年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。会社勤務、中国留学を経て、執筆活動に入る。食や暮らしのスタイルの提案を含む生活エッセイを多く発表。同世代の女性を中心に支持を得ている。著書に、『いのちの養生ごはん』(中央公論社)、『ひとり老後、賢く楽しむ』(文響社)、『ふつうでない時をふつうに生きる』(中央公論新社)など多数。

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再発予防の食事療法として野菜スープを活用

2001年10月、私は40歳で進行性の虫垂がんになり、手術を受けました。虫垂は、大腸の一部にあたる、盲腸の下端にあります。

それまでの私は、和食中心の食事をし、お酒もタバコもたしなまず、およそがんになりそうもない生活をしていました。家族でがんになった人もいません。そんな私がなぜがんに? 一時はそう思いました。しかし、いまや2人に1人はがんになる時代。私がなっても、少しもおかしくないのです。

私のがんは虫垂の壁を破ってS状結腸に浸潤していました。その癒着した虫垂と結腸の一部、周りの腹膜とリンパ節を、手術で切除しました。

「手術による治癒率は30%」

術後、主治医の説明にあった数字です。頭の中でとっさに引き算し、再発の可能性が70%なのだと理解しました。

西洋医学の治療は終わり、再発予防の手立てがない状態で、70%という数字は重いものでした。それにどう向き合えばいいのか。座して待つというのでは、あまりにも不安でした。

結果はどう出ようとも後悔したくない、できることはなんでもしようと思った私は、漢方を試しました。西洋医学と東洋医学を統合した医療を行っている漢方医に相談し、漢方薬の処方と食事療法の指導を受けたのです。食事療法は、漢方薬の効果を最大限に引き出すために、必要だということでした。

食事療法の基本は和食です。野菜、海藻、キノコ、小型魚などを中心にとり、肉、卵、牛乳などの動物性食品は控えます。調味料は、伝統製法で作った無添加の調味料を。ご飯は胚芽米を中心にし、雑穀を混ぜて炊くこともあります。

術後の私はかなり体力が落ちており、一方で仕事も家事もこなさなければなりません。その時間を効率よくするために、そして野菜の豊富な栄養をまるごととるために、私がとり入れたのが「野菜スープ」でした。