
「どーでもいいーですよー」の枕詞とともに淡々と毒をはく芸風で、一世を風靡したピン芸人のだいたひかるさん。乳がんの経験を経て2021年5月に45歳で妊娠を発表し、現在は片づけを通して自身の人生を見つめるエッセイ『生きるために、捨ててみた。』の出版が話題を呼んでいます。2回目の今回は、乳がんの治療や病気をきっかけにはじめた片づけについてお話をうかがいました。
2016年に乳がんが見つかった
――ご著書の中では2016年1月に乳がんが見つかったことにも触れています。
だいたさん 以前から自治体の乳がん検診と子宮頸がん検診を受けていたんです。うちはがん家系ではないのですが、ラジオ体操のハンコをもらうような感覚で毎年、検診に行っていました。でも、不妊治療を優先していたこともあり、2015年は乳がん検診を受けていなかったんですね。不正出血で不妊治療の予約をキャンセルし、「予定が空いたから乳がん検診に行ってこよう」と軽い気持ちで検診を受けたら乳がんが見つかったんです。
――その場で乳がんがわかったのでしょうか?
だいたさん そうです。触診で胸を開いた途端、先生が早押しクイズに答えるみたいに右胸をサッと触って「右、しこり」と言ったんです。自分で触ってみても、たしかにしこりが確認できました。
――そのときの心境はどのようなものだったのでしょうか?
だいたさん サッと触っただけで乳がんの可能性が高いと言われるなんて、「ヤブ医者なんじゃないかな」って思いましたね。「先生が間違ってるんじゃないのかな?」って自分の都合のいいほうへと考えようとしていました。
――その後の精密検査で乳がんが確定したということでしょうか?
だいたさん エコー検査で右乳房のしこりの大きさは27mmとわかり、組織検査の結果ステージⅡAと診断されました。先生が手術や治療法について説明をしてくださったのですが、まるでお経を聞いているような感覚でした。「おすすめの治療法は何ですか?」と訊ねたところ「全摘です」とのことだったので、夫とも話し合って2016年2月に右乳房の全摘出手術を受けることになりました。
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手術と抗がん剤治療を受けたものの2019年に乳がんが再発
――乳がんの告知から手術まで怒涛の1カ月だったのではないかと思います。
だいたさん がんイコール死というイメージがあったので、人生お先真っ暗だなと思いました。どうしていいかわからないし、何が起きているのかもよくわからないし、冬の暗い海にひとり放り投げられたような気持ちでしたね。
――暗い海の中で光は見えたのでしょうか?
だいたさん 夫から、がんに関する本やネットの情報は見ないようにと言われたんですね。代わりに鳥越俊太郎さんや登山家の田部井淳子さんなど、がんを克服して元気に過ごしていらっしゃる方の本を買ってきてくれました。そうした本を読むうちに「私もこちら側の人間になれるように頑張ろう」と思えるようになりました。
――手術の際にリンパ節への転移が見つかり大出術になったと著書に書かれています。
だいたさん 脇の下のリンパ節を切除し、周囲の組織もあわせて45mmの塊を摘出する大きな手術になりました。転移が見つかったので、2016年4月から半年ほど抗がん剤治療を受けることになりました。
――抗がん剤治療にはつらい副作用が生じるイメージがあります。
だいたさん 脱毛でハゲ散らかしましたし、痛みやだるさもありました。ただ、体って慣れてくるものなんですよね。私の場合、抗がん剤を投与して2~3日はつらくても、4日目くらいからはスーパーに買い物に出かけたりしていました。あと、乳がん患者は太るのはよくないと言われているので、体調のいい日はサウナスーツを着て走ってレンタルDVDを借りに行ったりしていました(笑)。
――2019年3月には乳がんが再発したことがニュースになりました。
だいたさん 術後に定期的に受けている検査で、右乳房に4mmの腫瘍が見つかったんです。私は右乳房を全摘しているのですが、稀に再発が見られることもあるらしいんです。手術で腫瘍を摘出して、その後は放射線治療を受けました。