たいみち

マルスインキ ガラスの写真版

 2022年となった。今年も引き続きよろしくお願い申し上げる。
 さて、年始一発目は、サクッと軽い内容で行こうと思う。軽いだけでなく、文房具と少し離れる気もするが、全く関係ないわけではないからいいだろう。実はなかなか珍しいものを見つけたので、紹介したいのだ。見つけたのはインクの広告写真だが、紙に焼いたものではなく、その原版だ。そしてそれはあの薄いプラスチックのようなフィルムではなく、ガラスでできている「ガラス乾板」だ。
 と言っても「ガラス乾板」を知っている人は少ないだろう。ガラスの板に薬剤を塗って感光させるガラスの写真用フィルムのようなものをイメージしてもらえれば、大体あってると思う。それがこれだ。

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 何やら汚れたようなガラスにうっすらとインク瓶の形が見える。写真用のネガなので、白黒反転している。これを光に透かすと、かなりはっきり見ることができた。

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 「マルスインキ」というインクの商品写真だ。きっとカタログなどに載せるための写真であろう。ちなみに「マルエス」だったら聞いた事があるが、「マルス」というのは初めて聞いた。一体いつ頃のものだろうか。手前の小さなボトルの中央の四角いタイプは、大正から昭和初期頃のイメージだ。ガラスの大きなボトルは昭和初期であろう。右のインク瓶を手に持っているイラストのテイストも昭和初期の感じがするので、おそらくその頃のものと思われる。
 写真のガラス乾板自体は多く残っており、骨董市などでもまだ見ることができる。だが、大抵は人物なので、文房具が写っているものが手に入ったというのは非常にラッキーだ。
 こんなガラスの板に写真を写して、印刷していたのだ。とても画像がはっきりしているので、白黒反転させれば、写真にできそうと思い、やってみた。ネットで調べると、「スキャンして反転させる」とあったのでスキャンしてみたが、真っ黒いガラス板が写っただけだったので、カメラで光に透かして撮った画像を使うことにした。
 画像加工アプリを見ると「ネガポジ反転」というメニューがあるではないか。
 よし。クリック。

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 できた!すごいな、ちゃんと写真だ。それもかなり画像もきれいだ。昭和初期のカタログや資料もいろいろ持っているが、写真がきれいに印刷されるのは昭和もかなり後の方なので、これだけはっきりした写真はなかなかお目にかかれない。まだイラストの方が明確できれいな時代だ。
 面白いなぁ。この撮影には社長さんが立ち会ったりしていたのだろうか。一度に何枚くらいのガラス乾板を使った撮影したのだろう。こんなものが見つかるのは、デジタル化が進んだ今だからこそ。ああありがたや。

 そして、お気づきだろうか。今回見せたかったのはこれなので、本当はここで終わりなのだ。だが、それではあんまりなので、私が持っているほかの写真も紹介しよう。
 カタログや広告、ポストカードなど文房具や文房具に関係するものが写った写真はいろいろあるが、今回は印刷された写真ではなく、生写真を紹介しよう。なんというか、当時のカタログなどの印刷資料も大好きだが、生の写真というのは、印刷されたものより更に当時の体温というか空気感が生き生きと伝わってくるようで、見ていると楽しくなってくるのだ。

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ライトインキ、墨の元と不思議な動物

 大正時代と思われる面白い写真がある。文具祭り※1などのイベント用に作ったオブジェのようなものが写っている。(大正時代に文具祭りはあったのだろうか。)「墨の元」とラベルの付いた瓶と、オットセイだかドラゴンだかが高く掲げているインク瓶が張りぼてで作られている。

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 最初インク瓶を掲げているのはサツマイモのように見えたが、よく見れば髭と目がついている。
 では、このポーズから考えてオットセイかと思ったが、更によく見ると背中にヒレのようなものもついており、ドラゴンに見えなくもない。なぜ掲げているのがインクビンかというと、得体のしれない動物(多分)の体に「ライトインキ」と書いてあるのだ。

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 そして、「墨の元」は田口商会(現開明株式会社)の明治・大正時代の商品だ。福井商店(現ライオン事務器)の大正元年のカタログに載っているのを見つけた。

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 「墨の元」の「の」の字の後ろのマークがとてもよく描けている。全体的に見て(何の動物かはわからないが)かなりの大作である。頑丈なつくりではなさそうなのと、バランスが微妙だが、リヤカーを引いて移動させることはできたのだろうか。「墨の元」も動かせなさそうだし、移動させる想定ではないのかもしれない。
 制作者は左右の男性と女性であろう。中央の洋装が決まっている紳士は、この店の主だろうか。(余談だかなかなかのイケメンのようだ。)頑張って作って良いものができたので、記念写真を撮ってもらったのであろう。文具祭り(のようなものがあったとして)は盛り上がったであろうか。ああ楽しそうだ。