副作用のめまいに新たな薬が出ることも

薬を勧めない理由は、それだけではありません。これは降圧剤に限った話ではないのですが、副作用があまりにも多いからです。

医師の側は、残念ながら、薬の副作用をすべて把握しているわけではありません。加えて、「この症状は薬の副作用かも」と疑うことも、ほぼありません。

例えば、降圧剤により、めまいやふらつきなどが現れても、それらは高齢者によくある症状なので「年のせい」と片づけられてしまうことが多いのです。

それだけならまだしも、「では、めまい止めの薬を出しておきましょう」などと、新たな薬を追加で処方される可能性があります。これが、ポリファーマシー(多剤併用)の始まりです。

もちろん、薬を飲まないと治らない疾患もあります。薬を飲むことで安心できる、という患者さんもいます。多剤併用が即NG、というわけではありません。

ただ、その薬を飲むことで得られるメリットとデメリットを検討し、必要に応じた処方に調整することがたいせつです。

そのために、医師は副作用を見落とさないよう注意する必要があります。同時に、患者さんの側も、体調の変化に気をつけてください。薬を処方されてからの経過をメモしておくなど、自衛策を取ることです。

私の患者さんの例を挙げましょう。40代・男性のAさんは血圧が高めで、降圧剤を数種類服用していました。血圧は低く抑えられていましたが、ふらつきがあり、私の著書を読んだことから来院されました。

Aさんの口の中を診ると、上下の歯肉が腫れています。カルシウム拮抗剤には、歯肉肥厚の副作用があるのです。

そこで、様子を見ながら徐々に薬を調整。半分まで減らしたところ、ふらつきが減ったうえ歯茎の腫れも引き、「食事がしやすくなった」と喜んでおられました。薬を減らしたことで、血圧は10mmHgほど上がりましたが、AさんのQOL(生活の質)はグンと向上しました。

もし、Aさんが歯科にかかっていたら、どうでしょう。歯科治療をいくら行っても、根本原因(降圧剤の副作用)が取り除かれないので、歯茎の腫れは引かず、ふらつきも改善されないままだった可能性があります。

最初に述べたように、年齢とともに血圧が高くなるのは自然なこと。高血圧は生活習慣病ですから、まずは食事を見直し、運動に励みましょう。

自分の体をコントロールできるのは自分だけ。「薬は最後の選択肢」と考えるくらいで、ちょうどいいのです。

年齢が上がれば血圧も上がる!

「◯◯阻害薬」「◯◯拮抗薬」「◯◯遮断薬」は人間の生理反応を抑えて無理に血圧を下げようとするので、かえって体に不具合が生じることも。
 
血圧が年齢とともに上がるのは、自然の摂理。基準値より多少高めでも、元気なら降圧剤を飲む必要はない。
 
血圧を下げたいならまずは生活習慣の改善を!

この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b598809.html