漢方治療は胃腸の症状と相性がよい

そもそも、これはH2ブロッカーやPPIに限らず全般的にいえることですが、薬には多くの副作用があります

ふだん飲んでいる薬があればぜひ添付文書を見てください。小さな字で読みづらいですが、重要なことが書かれています。

試しに、あるPPIの副作用を列挙してみましょう。

ショック症状、頭痛、ふらつき、肝炎、腎障害、肺炎、呼吸困難、皮膚の壊死、筋肉痛、脱力感、視力障害、錯乱……多過ぎて、とても書ききれないほどです。胃腸薬にもかかわらず、便秘や下痢、腹痛、嘔吐までが副作用とされています。

そもそも、薬はなんらかの作用をするものです。全身は一体で、部分ごとに分かれているわけではありません。各所に影響が及びます。それを人間が、都合のいい効果は「作用」、それ以外は「副作用」と、勝手に仕分けしているだけなのです。

とはいえ、かくいう私も、患者さんの希望によっては、H2ブロッカーやPPIを処方しています。肝心なのは、2~3日で効果が現れたら、速やかに中断することです。その後は、別の薬に切り替えてもらいます。

私は漢方を専門としているので、漢方薬をメインに処方します。実際、漢方治療は胃腸の症状と相性がよく、「●●胃散」という名前の市販薬は、たいてい漢方の生薬が主成分です。

重曹を出すこともあります。重曹は、炭酸水素ナトリウムという成分で、日本薬局方にも収載されている、れっきとした胃薬です。アルカリ性なので胃酸の中和に働き、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎、胃酸過多などに効きます。使うのはもちろん掃除用ではなく、精製度の高い食用の重曹です。

もっといえば、胃腸の症状に効果を発揮するのは、胃薬だけではありません。

27歳の女性は10年前からおなかの張りやゲップ、ガスがよく出て悩んでいました。胃痛もありましたが、処方されている胃薬が効かないとのことで、来院されました。

問診から、ストレスにより胃腸の機能が阻害されていると診断。ストレス緩和に効く漢方薬を処方したところ、10日ほどでゲップが半分になり、1ヵ月で症状が治まりました。心理セラピーも功を奏しました。

胃はメンタル面の影響を受けやすい臓器です。悩みがある人は、心の内側に目を向けてみましょう。問題解決に伴い、胃腸の症状も快方に向かうかもしれません。

胃酸を止める胃腸薬は短期間だけ使う!

長期使用で栄養状態が不良になり副作用の発症リスクも増大する。

数日使ったら、体への負担がより少ない薬に切り替える。胃の不調を招く根本原因を取り除く。

この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b598809.html