「新車を購入したから、万が一事故で大破したときに備えて車両保険に加入しておこう」と考える方は少なくないでしょう。
実は車両保険をつけていても、車の買い換え費用の全額をカバーできるとは限りません。
新車の買い換え費用のすべてを補償してもらいたいのであれば、車両保険に「新車特約」を付けておくと安心です。
本記事では、新車特約の補償内容や必要かどうか判断するときのポイントなどをわかりやすく解説します。
【自動車保険とは?種類や補償内容、等級制度をわかりやすく解説】
新車特約とは事故時に新車の買い直し費用を補償する特約
新車特約(車両新価特約)とは、契約する自動車が事故によって所定の損害を負ったとき、再購入費用を補償してもらえる特約です。
事故にあったとき車両保険を使うと、車の時価相当額を限度に保険金が支払われます。時
価相当額は、車の用途や車種、車名ごとに保険会社が設定しており、初度登録から経過した年数に応じて減少していきます。
そのため、事故にあったとき車両保険を使っても、買い換え費用のすべてを保険金で賄えるとはかぎりません。
新車特約を付帯していれば新車価格相当額の保険金を受け取れるため、車を買い直す費用をカバーできます。
ただし、新車特約を付帯できるのは新車登録(初度登録)から一定期間内の車に限られます。
車両保険はいらない?補償内容や必要か判断する基準をわかりやすく解説
任意保険とは?自賠責保険との違いや必要性、入らない場合のリスクをわかりやすく解説
(広告の後にも続きます)
新車特約から支払われる保険金
新車特約を付けると、車を買い換える際に支払った以下の費用が補償されます。
新車特約の補償対象となる買い換え費用
車両本体価格
付属品
消費税
新車特約の対象となるのは、事故によって車が一定以上の損害を負ったときです。
車の損害が基準を満たしていないと、新車特約は使えません。
ここでは、新車特約が使える条件や対象外となるケース、保険金の支払われ方などを解説します。
新車特約の補償を受けられる条件
新車特約の補償を受けるためには、「車が事故によって全損」または「修理費が新車価格相当額の50%以上」のどちらかに該当する必要があります。
全損とは、車が修理不能な状態や、修理費が車両保険の保険金額を上回る状態などを指します。
全損でなくても、修理費が新車価格相当額の50%以上であれば、新車特約の補償対象です。
新車価格相当額は、自動車保険の補償対象となる車の新車販売価格に相当する額であり、保険会社が個別に決めています。
例えば、新車価格相当額が250万円、車の修理費用が200万円である場合、修理費が新車価格相当額の50%以上であるため新車特約の補償対象となります。
新車特約を使えないケース
一方で、新車特約の補償対象外となるケースは、主に以下の3点です。
新車特約の補償対象外となるケース
車の損害が軽微である
車が盗難にあった
車両保険の補償が受けられない
車の損害が軽微である
車の修理費が新車価格相当額の50%未満であると、新車特約は補償対象となりません。
例えば、新車価格相当額が250万円、修理費が100万円であると、修理費は新車価格相当額の40%であるため新車特約の補償対象外です。
また修理費が新車価格の50%以上であったとしても、損傷箇所が内外装外板部品のみである場合、新車特約は利用できません。
車体の本質的構造部分(エンジンやシャーシなど)に著しい損害が生じていなければ補償対象とならないためです。
保険会社によって、新車特約の補償対象となる条件が異なります。
新車特約を付けるときは、補償が受けられる条件をよく確認することが大切です。
車が盗難に遭った
車両保険の場合、盗難は全損扱いとなって保険金の全額が支払われます。
しかし新車特約では、車が盗難にあったときは補償の対象となりません。
盗難された車を新たに買いなおすときは、車両保険の保険金のみを請求することになるため自己負担が発生する可能性があります。
新車特約を付けていたとしても、入念な盗難対策は必須です。
一方で盗難後に発見され修理不可能な状態であったときや、修理費が車両保険の保険金額以上になったときなど、要件に該当すると新車特約の補償対象となります。
車両保険の補償が受けられない
車が事故によって全損したり新車価格の50%以上の修理費が発生する損害を負ったりしても、車両保険の補償対象にならなければ、新車特約も対象となりません。
車両保険には、相手がいない事故も補償する「一般タイプ」と、自損事故や当て逃げが補償対象外となる「エコノミータイプ(車対車+A)」の2種類があります。それぞれの補償範囲は、以下の通りです。
例えば、エコノミータイプの車両保険に加入している場合、電柱にぶつかって車が全損になっても車両保険金は支払われないため、新車特約も補償対象外です。
他にも以下のようなケースでは、車両保険および新車特約の補償対象外となります。
車両保険(新車特約)の補償対象外となる具体的なケース
地震・噴火・津波による損害
無免許運転や酒気帯び運転によって生じた損害
欠陥や摩滅、腐しょく、さび、その他自然の消耗による損害
法令で禁止された改造を行った部分品または付属品に生じた損害 など
保険金の支払い例
新車特約を付けていると、事故によって車が所定の状態になったとき、契約時に設定された価格の保険金が支払われます。
例えば、300万円の新車を購入した2年後に事故で大破したとしましょう。
車両保険の保険金額(保険金の支払上限額)は、1年で20%ずつ減少するのが一般的です。
そのため、新車登録から2年が経過していると、車両保険の保険金額は190万円程度に減っていると想定されます。
修理費用が、新車価格の60%である180万円である場合、車両保険から180万円の保険金が支払われます。
しかし300万円の新車を買いなおすのであれば、残りの120万円は自己負担しなければなりません。
新車特約を付けており新車価格相当額が300万円に設定されていた場合、車両保険の保険金と合わせて合計300万円までの買い換え費用が補償されます。
よって120万円の自己負担をせずに、車を買い換えられます。
保険会社によっては購入時の諸費用も補償
車を購入する際は、登録費用や自動車取得税、重量税、自賠責保険料などの諸費用も支払う必要があります。
保険会社によっては、新車特約を利用するとき所定の要件を満たすと、買い替え時の諸費用について一定の限度額まで補償してもらえます。
新車特約を検討するときは、どこまでの費用が補償の対象になるのかを確認すると良いでしょう。