賃貸住宅で火災保険は事実上必須! 加入すべき理由と補償範囲まとめ

現在、賃貸住宅にお住まいの人は、賃貸契約を結ぶ際に不動産会社から事務的に火災保険の案内をされ、「こちらに加入して下さい。」と言った形で、半ば強制的に保険の加入をさせられたという人は多いのではないでしょうか?

実際に、賃貸契約の条件に火災保険も含まれており、さらに保険会社も指定されているといったことも多いのが事実です。

確かに、保険会社が指定されているというのは、自ら保険会社を探す手間を省けるという点は良いかもしれませんが、不動産会社が案内する火災保険は一般的に少額短期保険という種類で保険料が割高なため、おすすめ出来ない商品です。

やはり、賃貸契約時の火災保険はご自身で民間の損害保険会社に連絡をして、加入をした方が割安で補償の手厚い保険に加入することが出来るでしょう。

この記事では、ご自身で納得して賃貸住宅の火災保険を加入できるために、「加入すべき理由」と「補償範囲」を解説していきます。

火災保険とは? 補償内容や選び方、タイプ別(戸建て・マンション・賃貸物件)の必要性をわかりやすく解説

賃貸住宅の入居時は、火災保険の加入が事実上必須

大家さんの立場から考えると、借主が何か事故を起こして、お部屋のリフォーム費用が必要になった場合に、その費用を回収できるかどうかはとても大事なポイントです。

ゆえに、借主に請求をしても借主のお金がなく、支払うことができないと困るので、借家人賠償責任特約を義務付けています。

火災保険と呼ばれる場合が多いが、風災や水災、盗難や外部からの衝突など

火災保険は火災のためだけの保険ではありません。火災総合保険です。

火災以外にも、各種自然災害や盗難、外部からの衝突、漏水、不測かつ突発的な事故まで広範囲に補償される商品です。

「住まい」に関するリスクを総合的に補償

火災保険は住まいに関する様々なリスクを補償することができます。

例えば、自宅で火災を発生させてしまい、大家さんに現状復帰のリフォーム費用の請求を受けた場合やお風呂の水を出しっぱなしにして、下の階に漏水をさせてしまった場合など、様々なリスクに備えることができます。

火災保険は大きく分けて、3つの保険で構成されている

火災保険は、大きく分けて以下の3つの保険で構成されています。

家財保険

借家人賠償責任保険

個人賠償責任保険

一つ一つ詳しい内容を確認していきましょう。

家財保険

保険の対象が家財の火災保険のことです。
家財とは、簡単に説明すると、「入居した時に持ってきた物」全てを対象にしています。

家財は机、TV、冷蔵庫などの大型な物だけではなく、洋服、時計、鞄なども含んでいますので、思っている以上に金額が大きくなります。

例えば、家財が火災で焼失してしまった場合には、通常、全て新品を買い直す必要が生じますので、家財の保険金額は時価ではなく、新価(新しく買い直すためのお金)で契約するようにしています。

家財保険は賃貸物件に必要?持ち家との比較や補償範囲を解説

借家人賠償責任保険

大家さんへの賠償責任を補償する保険です。

例えば、家の中で火災を起こしてしまい、大家さんからリフォーム費用を請求された際に補償をしてもらうことができます。

この借家人賠償が賃貸契約において、火災保険が必要な一番の理由になっています。

借主の過失によって高額なリフォーム費用が発生しても大家さんが借主から確実に回収できるように、借家人賠償を付帯された火災保険を賃貸契約の条件にしているのです。

個人賠償責任保険

日常に起因する賠償責任を補償する保険です。

マンションなどで一番多い事故例は、漏水事故です。
下の階の室内まで漏水させてしまったというケースです。

例えば、お風呂の排水口を詰まらせてしまった場合や洗濯機のホースが外れて水が出しっぱなしになり、部屋中が水浸しの状態になり、下の階の室内まで漏水した場合など事故の例は様々です。

また、個人賠償責任保険の適用範囲は、自宅での事故だけではありません。
日常生活に起因する事故全ても対象になるので、例えば自転車に乗っていて、他人を怪我させた場合やスポーツ中に他人を怪我させたなど補償範囲が広いのが特徴です。

こちらは、火災保険以外にも、自動車保険や傷害保険にも特約として付帯ができるので、重複して入らないように注意しましょう。

家財保険・借家人、個人賠償責任保険の役割と補償範囲

類焼損害保険など、特殊な補償は特約で加入する

類焼損害は自分が火元になって、隣家に類焼させてしまった場合のリフォーム費用や類焼しなくても、消火活動に伴う損害に基づくリフォーム費用も補償されます。

ただし、煙損害や臭気不着といった被害は、対象外になりますので、注意しましょう。

実際に、火災が起きると煙が充満し、煙は上に上がるため、上階の人に煙による匂いの損害を与えてしまうケースがあります。

ただし、目に見えない損害であり、損害額の算定も出来ないことから、対象外になっています。

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賃貸住宅で火災保険が必須な理由

賃貸住宅では賃貸借契約書を結び、大家さんに対してさまざまな責任が生じます。

その一つに建物に被害を与えてしまった場合の修繕義務です。

例えば、借主が火災を発生させてしまい、原状復帰のリフォーム費用が発生した場合、保険に入っていなければ、全額自己負担でリフォーム費用を払わないといけないことになります。

高額な自己負担を強いられるリスクを避けるために、保険があるのです。

貸主(大家)に対して原状回復義務を負うため

大家さんに対して、借主は経年劣化を除き、現状回復義務を負っています。
借主は入居中に様々なリスクがあり、時に大家さんの建物に対して、被害を与えてしまう可能性があります。

保険に加入していれば、自己資金ではなく、保険から払ってもらうことができるので、安心して住むことができます。

隣室・隣家からの火災被害で、損害賠償請求ができないため

火災は、隣家や隣室からの類焼によって被害を受けても、火元に対して、賠償請求が出来ません。
その理由について、説明を致します。

失火責任法

日本には古来からある法律で、失火責任法があります。

これは、日本はもともと長屋が多かったことから、火災が起きると、多くの建物が類焼します。火元に賠償責任があるということにしてしまうと、火元に過大な請求が生じてしまうことになります。

火元に過大な賠償請求がいかないために、故意や重過失を除いて、火元に賠償責任かないという法律を失火責任法と言います。

重過失の例

重過失とは、一般人に要求される注意義務を著しく欠くことをいいます。
事例としては、寝たばこにより火災を発生させてしまったものなどがあります。

判例では、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないまでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」と判示しています。
(最高裁/昭和32年7月9日判決)

下の階にお住まいの人に漏水をして被害を与えてしまった時のため

こちらは、個人賠償責任特約の補償範囲になります。

事例としては、「お風呂の水を出しっぱなしの間に、寝てしまって部屋中が浸水してしまい、下の階にお住まいの人の部屋に漏水してしまった」場合など入居者の過失による漏水事故が対象になります。

補償される項目としては、下の階にお住まいの人の部屋の現状復帰のためのリフォーム代や家財への損害があれば、クリーニング費用があります。

また、住むことができない状況になった場合には、仮住まい費用も補償します。
更に、仕事場にしている人であれば、休業損害も補償対象になります。

漏水事故が起きると、下の階にお住まいの人に大きな損害を与えてしまうケースが多く、保険に入っておくことで、自己資金ではなく、保険で補償されるので安心して住むことができます。