脳幹は呼吸や内臓の働きなどをつかさどる自律神経系やホルモン系、外敵から身を守る免疫系などの司令塔の役割を担っています。しかし現代人は、長期の精神的なストレスや、前かがみの姿勢による頸椎のゆがみで、脳幹が痛めつけられているため、思うように健康維持ができないのです。【解説】沼田光生(海風診療所院長)

解説者のプロフィール

沼田光生(ぬまた・みつお)

海風診療所院長。山口大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、阪和記念病院、大阪脳神経外科病院で勤務。2003年に、山口県周南市に地域に開かれた「遊びに行ける診療所」「予防医療の拠点」として、海風診療所を設立。脳外科医としての経験を活かし、「脳幹」の正常化を促す治療などを行う。著書に『「首を温める」と万病が治る』(マキノ出版)などがある。

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ほとんどの現代人が弱っている「脳幹」

ストレスと首のゆがみが脳幹の機能低下を招く

突然ですが、ほとんどの現代人は「脳幹(のうかん)」が弱っています。

この脳幹は、脳の一部分で、脳の最も下部にあります。親指くらいの太さで、縦に長い構造をしています。さほど大きくはありませんが、脳幹は呼吸や内臓の働きなどをつかさどる自律神経系やホルモン系、外敵から身を守る免疫系などの司令塔の役割を担っています。

この脳幹に腫瘍や出血があれば、脳外科医の大半は「これは厄介だ」と治療の難度の高さを覚悟します。それほど、脳幹はデリケートで大切な部分なのです。

脳幹が機能しなくなれば、生きるか死ぬかの問題に直結します。そこまで極端な事態でなくても、働きが低下するだけで、多くの問題が起こるのです。例えば、難聴、視力低下、手のふるえ、のぼせなどの発症や悪化です。

本来、脳幹の働きがきちんと維持できていれば、不調や病気に襲われても、しっかり回復できる見込みがあります。しかし、脳幹は現代人の間違った生活習慣で痛めつけられているため、思うように健康維持ができないのです。

脳幹が痛めつけられている原因は?

痛めつけられる要因の1つとして、長期にわたる精神的なストレスがあります。

なぜなら、大脳が脳幹に覆いかぶさっており、精神的ストレスを感じると、大脳が異常に興奮し、その刺激が脳幹に伝わるからです。

すると、ストレスに対抗するため、脳幹は自律神経系、ホルモン系、免疫系に指令を出して対処します。しかし、その状態が長期化すると、脳幹は疲れ切ってしまうのです。

2つ目の要因は、頸椎(首の部分の背骨)のゆがみです。

脳幹の下部は、後頭孔および上部頸椎の内側の穴(椎孔)を通る構造になっています。現代人は、長時間スマホやパソコンを見て前かがみになることが多く、頸椎のゆがみを招きがちです。それによって、脳幹は圧迫され、機能低下を招きやすいのです。

脳幹が収まっている頸椎のスペースは、ちょうど親指ほどと余裕がないので、頸椎が少しでもゆがむと、脳幹が圧迫されてしまうというわけです。

つまり、精神的ストレスと頸椎のゆがみが、脳幹の機能低下を招いているのです。

当院では、手技を取り入れて、後頭骨と第1・第2頸椎(上から1番目と2番目の頸椎)を中心に調整することで、全身状態をよくしています。

これによって、圧迫された脳幹を解放し、先ほど挙げたような脳幹の働きの低下による不調の改善に高い効果が得られています。