なぜ、ひじを温めるとよいのか

指を酷使すれば頸椎に疲労がたまる

ではなぜ、ひじ湯でこれらの症状がよくなるのでしょうか。その理由は、頸椎の力が抜けるからです。

頸椎とは、首にある7つの骨のことで、ここにはたくさんの神経が通っています。先ほど言った指の動作も、頸椎から伸びる神経によって行われます。

つまり、指を酷使すれば頸椎にも疲労がたまっていき、さまざまな不調が起こるのです。特に多いのは顔周りの不調で、疲れ目などの目の症状、鼻づまりなどの鼻の症状、耳鳴りやめまいなどの耳の症状が出やすくなります。

そして、この頸椎から指に伸びる神経の中継地点にあたるのが、ひじです。ここを温めることで、神経の疲れを取ることができ、顔周りの不調もよくなっていきます。

ひじ湯によって腕の疲れが取れると、頭の働きも自然とよくなります。

整体の中には、腕が疲れると頭も硬直して、自由な発想ができなくなるという考えもあります。このような、柔軟な考え方ができない人を「頭が硬い」といいますが、これは比喩ではなく、本当に頭骨が硬くなっているのです。

ひじ湯には、この頭骨の硬直をゆるめる働きもあるので、発想が豊かになり、物事に積極的に取り組めるようになります。

また、整体では指と頸椎に加え、胸部の骨である胸椎にもつながりがあると考えます。そのため、ひじ湯で胸椎の緊張が抜ければ、肺が広がりやすくなり、呼吸が深くなるといった効果も期待できます。

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ひじ湯のやり方

ひじ湯の詳しいやり方は、下項を参考にしてください。ポイントは、20分を目安にひじを浸けること。お湯が冷めてきて、ぬるくなったと感じたら、お湯をつぎ足してください。

ただ、体の感覚が鋭敏になると、「これでいい」という終わりどきがわかるようになります。この場合は、その時点で切り上げても構いません。

なお、ずっとひじ湯だけをしているのは退屈ですから、テレビなどを見ながら行うのがお勧めです。私の場合は、動画サイトを見ながら行っています。

ひじ湯を続けていると、だんだんと体がいい方向へと変化していくはずです。特に、鼻づまりなどの症状は、すぐに効果が実感できますから、ぜひ試してみてください。

症状が重い人は様子を見ながら行う

なお、慢性的な耳鳴りやめまいなど、重い症状を持っている人は、ひじ湯をすることで、一時的に嘔吐や頭痛などが出ることがあります。しかし、これは健康を取り戻す過程で現れる症状で、体を元に戻そうとしている証拠です。つらくならない程度に、様子を見ながら続けてみてください。

▼やり方

おけなどの容器にお湯を入れ、熱いと感じる温度(42~45℃)にする。ひじから先をお湯に浸け、20分を目安に温める。

ポットやケトルをそばに置き、冷めてきたらお湯を足す。追加する際は、必ずひじをおけから出して行い、やけどに注意する。
体が「これでいい」と感じたら、早めに切り上げてもよい。
大きなおけがない場合、衣装ケースなどを使用してもよい。
リビングで行う場合は、お湯がこぼれてもいいように、タオルなどを敷く。

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b599545.html