汗によってからだから減った水分を摂取する方法について。水を飲むだけでなく、汁物や野菜・果物からも水分摂取はできるのです。


文/おくだじゅんこ(管理栄養士)
イラスト/いしわたりきわこ



「飲む」だけじゃない。汗の季節の水分摂取法

暑くなると汗をかく。体温調節をするために、からだにとってはとても大切な機能です。しかし、汗をかくとからだの水分が減るため、結果的に、血液中の水分量も減ってしまうので、血流が悪くなったりします。すると体温調節がしにくくなったり、酸素が十分に回らず疲労を感じることがあります。水分摂取は、からだの機能維持のためにも、とても大切なことなのです。

水分摂取に関しては、特にスポーツの世界でいろいろな研究がされています。日本スポーツ協会が推奨する熱中症予防のための飲料は、「食塩0.1~0.2%(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだもの」とされています(1ℓのお水に、塩2g、砂糖を50g程度を溶かしたものと考えてください)。腸管からの吸収に最もよい比率とされ、これを基にスポーツドリンクがつくられているのです。

スポーツのときや、外の仕事で極端に汗をかいたとき、素早く水分を取り入れたい場合は、「塩分と糖質の入ったものを」と覚えておくとよいでしょう。

食事でも脱水症を防止

「スポーツのときは」と言いましたが、ふだんの生活で少し汗をかく程度なら、水やお茶などの水分摂取でも十分です。

人間のからだは約60%が水分といわれています。日々、人間のからだからは、尿から約1500ml、皮膚や呼気からの蒸発量として約900ml、それに汗などが加わり、1日に合計約2500mlの水分が体外に出ていきます。

では、入ってくるほうの水分量はというと、飲料水から約1200ml、食事から約1000ml、それに糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素が体内で代謝される際に発生する代謝水が300mlあり、合計約2500mlといわれています。食事だけで1日に入ってくる水分の半分を摂取していることになるので、夏場に食欲が落ちたり、高齢の方が食事を摂取できなくなると、当然からだに入る水分も減ってしまいます。これが脱水症状の一因でもあります。

1回の食事で、水分はどれくらいとれるのでしょうか? 例をあげてみましょう。

・ごはん(150g)   :水分 約90ml
・みそ汁       :水分 約150ml
・アジフライ(100g) :水分 約50ml
・野菜サラダ(60g) :水分 約50ml
・オレンジ(100g)  :水分 約90ml
            水分合計 約430ml

上記の食事であれば、1食で500ml近い水分がとれることになります。汁物が水分でできていることはわかりますが、注目したいのは、野菜や果物からもかなり水分がとれるということ。野菜や果物は8~9割が水分です。暑い時期に熱い汁ものの頻度が下がったとしても、果物や野菜の摂取でも、水分摂取の手助けにはなるのです。

また、暑くなると食欲がなくなってしまう人におすすめなのが、バナナジュースです。牛乳のタンパク質+バナナの糖質やミネラルが一度にとれる優れもの。特に、キツめの運動後の牛乳(ヨーグルトなどの乳製品も同じ)摂取には、血液量を増やす効果も期待でき、熱中症対策に効果的との報告もあります(一般社法人Jミルク「牛乳で熱中症対策2015年版」より)。食事がとれないときには、甘くて飲みやすいバナナジュースで乗り切るのもよさそうです。



おくだじゅんこ/管理栄養士

広島生まれ。2004~2012年の8年にわたり株式会社ワコールに勤務。陸上選手から社員まで幅広く健康管理に携わる。
病院栄養士を経て、現在は広島酔心調理製菓専門学校にて、調理師やパティシエの卵たちと「健康且つおいしい!」を追求し、日々奮闘中。