全国各地で花々が春を告げるなか、富士の麓に新名所がオープンしました。富士山を望む広大な敷地いっぱいに広がるのは、マゼンタピンクの芝桜の絨毯。そして、傍らにはイギリスの絵本から飛び出した愛らしいピーターラビット™のオブジェが来場者を出迎えます。ガーデンデザイナー、マーク・チャップマンさんが手掛けた「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」の最新風景を編集部がレポートします。

富士山と芝桜の美しい競演に感無量!

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美しい芝桜と雄大な富士山の見事なコラボレーションが絶景として知られる富士本栖湖リゾート「富士芝桜まつり」。富士の裾野をピンク色に染め上げるこの花の名所の一画に、今年新たに世界的に愛される絵本を題材としたガーデンが登場しました。その絵本とは、ガーデンファンにも愛読者が多い「ピーターラビット™のおはなし」。田園に囲まれた農場を舞台に、野うさぎのピーターラビットと動物たち、農場主のマクレガーおじさんが繰り広げる一大騒動を愛らしく描いた物語です。

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ピーターラビット™の可愛さに思わずときめくイングリッシュガーデン

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園内に入って左側に広がる「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」。ガーデンの門をくぐると、おなじみの青いジャケットを着たピーターラビットや、お母さんうさぎのジョセフィン・バニー、また彼らが住むウサギ穴が出迎えてくれ、入っていきなりの可愛い映えスポットの宝庫!

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「マクレガーおじさんの畑にだけは行かないように!」と怒られているのでしょうか?(笑)
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この庭を監修したのは、英国人ガーデンデザイナーのマーク・チャップマン氏。彼が手がける350種類にも及ぶ植物たちと、ピーターラビットのコラボレーションが、春から秋にかけてさまざまな表情で、見る人を楽しませてくれます。

この場所は、ピーターラビットの故郷、湖水地方に似ている

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英国の田園を舞台としたピーターラビットの庭が、なぜ富士の裾野に? と思われるかもしれませんが、じつは、原作の舞台となった英国の湖水地方と本栖湖周辺は気候が似ているのです。富士の裾野は頻繁に霧が発生し、特にその中におぼろげに現れる竜神池などは、まさにピーターラビットの世界観そのもの。立ち込める霧の中に咲く草花、その中に点在するピーターラビットたちのオブジェに囲まれていると、絵本の中に入り込んだような幻想的な体験ができます。

「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」に対するマーク・チャップマン氏の想い

「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」を手がけたマーク・チャップマンさんに、お話を伺いました。

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ガーデンデザイナー、マーク・チャップマンさん。

今回、ピーターラビットとコラボレーションしたこのガーデンを作るに至った経緯を教えてください。

マーク(以下M):多い時で50万人を集める、この「芝桜まつり」ですが、今までは開催期間が1カ月くらいと限られていました。しかしこの富士山を臨む景観をそれだけで閉めてしまうのはもったいないので、もっと長期に渡りこの風景を楽しんでもらうために、イングリッシュガーデンをつくることになりました。ピーターラビットが庭のテーマになったのは、この本栖湖とピーターラビットの舞台となった湖水地方は湖があり、霧が立ち込めるという点で気候や条件がよく似ていたからです。ピーターラビットのおはなしの舞台は私の故郷でもあり、とても思い入れが強い作品なので、ガーデンのお話しをいただいた時は喜んでお引き受けしました。

このガーデンに湖水地方のように霧が立ち込めるシーンも見ることができるのですね?

M:はい。時間や気象など、条件が整えばその時は大変幻想的な世界を楽しむことができると思います。カフェなどが入っている建物も、このガーデンのそんな世界観にマッチするようにつくったため、その二つのイメージが相まって、きっと忘れられない光景になるはずです。

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マークさんデザインの「The Café」では、オリジナルのフードやドリンクのほか、グッズなども販売している。

このガーデンで、特に気に入っているところを教えていただけますか?

M:Oh! いっぱいありすぎて選ぶのが難しいですね(笑)。やはり富士山とのコラボレーションがとても素晴らしいので、その中で子供たちが駆け回って遊んでいる光景が、私はすごく好きですね。ここの350種類にも及ぶ植物は、今はまだ生育途中のものもありますが、それらがすべて花開いたときに、同じような光景が繰り広げられたら、それは夢のような世界なのではないかと思います。

このガーデンで最も表現したかったものはなんですか?

M:私はプランツマンの一人として、さまざまな植物を皆さんに見ていただきたいという想いがあります。今回、限られたエリアの中で350種類の植物をデザインすることには、とてもやり甲斐を感じました。とにかく私は植物が大好きで、日本の北から南まで、多くの植物を見てきました。しかし、それらを全てここに集めることは不可能なので、今回は富士を臨むこの場所の風土に合ったものをセレクトしています。それらの植物がこの場所の自然に順応し、毎年大きくなっていく過程を楽しんでいただきたいです。

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ガーデンを手がけるときに、大切にしているものはなんですか?

M:今回、デザイン面では「ナチュラルであること」ということを意図しましたが、じつは、ナチュラルというのはとても緻密な計算が必要です。ナチュラルガーデンというと、手入れをせず自然のままに任せたガーデンというように捉えられがちですが、むしろ逆です。さまざまな草花を混ざり合うように咲かせるには、個々の植物の生育特性を考慮して配置し、それらが支えあったり、競い合ったりして生育していく過程での手入れもあらかじめ計算が必要です。

ここでは一面をピンクに染める芝桜という圧巻の景色と、さまざまな草花が織りなすナチュラルなピーターラビットガーデンという2つの異なる風景が同時に楽しめます。その対比も面白く、それぞれの魅力が際立って感じられると思いますので、その部分も皆さんにぜひ見ていただきたいですね。

最後に、ガーデンストーリーの読者に、何かメッセージをいただけますか?

M:多くの植物の中から自分の感性を刺激するものに出会い、それをライフスタイルに取り入れていただけたら日々の生活がより豊かになると思います。また、住宅事情によっても植物が育てられる環境が人それぞれ違います。自分の住環境に合った植物を見つけ、そしてそれを育てるための手入れなどの勉強も大切です。ガーデニングはシンプル・イズ・ベスト。自分の好きな植物をシンプルに楽しんでください。

マークさんありがとうございます。

ピーターラビット™イングリッシュガーデンでは今後、マークさんからガーデニングにまつわるさまざまなことをトータルに学べる企画なども予定しています。ガーデニングファンにとっては目が離せませんね。