低血糖症の症状

症状は、大きく2つに分けられます。ひとつは血糖値が下がるときに出る症状、もうひとつは血糖値を上げようとして起こる、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)系の症状です。具体的な症状は、下の表をご覧ください。

(1)血糖値の降下により起こる症状
食後に耐えられない眠気が襲ってくる
めまいなどの症状が起こる
気が遠くなったり、うつっぽくなったりする
思考力が低下する など

(2)血糖値を上げようとして起こる症状
動悸や多汗が起こったり、手足がふるえたりする
異常な空腹感がある
ピリピリ・チクチクするような違和感がある など

低血糖症になると、こうした症状が、人によってはいくつもめまぐるしく起こります。

問題なのは、通常の検査では発見されないこと。空腹時血糖値もヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態がわかる数値)も正常なことが多いので、私は「隠れ低血糖」と呼んでいます。

なお、低血糖症の人は例外なく糖質が好きなので、気づかないうちに糖質依存症になっていることがあります。糖質が切れると具合が悪くなり、脳も体も働かなくなってしまうのです。

それを解消するために、手当たり次第に糖質をとることで、低血糖症がさらに悪化したり、肥満や糖尿病に近づいたりしていきます。

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低血糖を防ぐ方法「肉ファースト食」

低血糖症の食事のポイント

治療法のない低血糖症に、とても効果があるのが「肉ファースト食」です。これは、高たんぱく・高脂質・低糖質の食事でもあります。具体的なポイントを紹介しましょう。

(1)肉をしっかり食べる

肉をたくさん食べることで、たんぱく質の代謝を円滑にします。これにより、低血糖を起こしにくくなります。

人の体には「糖新生」という働きがあり、糖質を摂取しない場合は、肝臓がアミノ酸を原料に糖をつくります。アミノ酸の多くは筋肉に蓄えられているので、低血糖が起こると、筋肉からアミノ酸が供給されて血糖値を維持します。

(2)肉を食事の最初に食べる

食事の最初に野菜を食べるとその後の糖質の吸収が抑えられて、血糖値の上昇がゆるやかになります。これと同じように、食事の最初にたんぱく質をとることで、血糖値の急上昇を抑えられます。

女性の多くは野菜を先に食べると、それだけでおなかがいっぱいになり、肉を食べられなくなります。これを防ぐために、体にとって一番大事なたんぱく質を最初にとるのです。

なお、サバなどの魚介類もたんぱく質が豊富なので、こちらを最初に食べても構いません。

(3)朝食に肉を食べる

夕食から朝食までの空き時間は、一般的に10時間以上あります。その間の血糖値を維持するために、体内では盛んに糖新生が行われます。

その材料の供給源は筋肉なので、寝ている間に筋肉が壊されます。この壊された分の筋肉量を維持するために、朝から肉を食べてたんぱく質を補います。

お勧めなのは、たんぱく質の代謝に必要なビタミンB6やB12の多い赤身肉です。高齢者の場合は、霜降りの赤身肉が特にお勧めです。霜降りの脂肪はエネルギー源として使われるので、たんぱく質が無駄使いされず、筋肉づくりに使われます。

私が低血糖症に気づいた20年前は、医師の間でもほとんど認知されていませんでした。しかし、昨年ようやく「低血糖・血糖値スパイク研究会」が心療内科医を中心に発足しました。これを機に、低血糖症への理解が深まってほしいと思います。

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b601538.html