「朝、手指に力が入らず、物がうまく握れない」「手指が痛む」、そんな症状はありませんか? 40~50代になると、手指の動かしにくさや関節の痛みなど、手指に不調を感じる女性が増えるそう。いったい原因は何なのでしょうか? 整形外科医の中村光伸先生に聞きました。

教えてくれたのは…
監修/中村光伸先生(光伸メディカルクリニック院長・医学博士)

整形外科医の知見から骨の仕組み、体の動かし方を活かした骨のトレーニングを提唱する骨の専門医。骨の強化と全身の機能回復を両立する「骨たたき」を考案。若々しい体を取り戻す「リバースエイジング」の専門家としてメディアにも多数出演。著書に『医者が考案した骨粗しょう症を防ぐ1分間骨たたき』(アスコム)。

症状が起こる要因は?

加齢や女性ホルモンの減少、生活習慣など

不調を感じる女性

40~50代になると、手指の不調(腫れ、痛み、しびれ、動かしにくさ)が現れることが。特に閉経が近づく時期から、両手がこわばる(握力が出ず、コップや包丁が握れないなど)などが起こることも。症状が起こる主な要因は以下の3つあるそうです。

要因1. 女性ホルモンの急激な減少
エストロゲンという女性ホルモンには腱などの動きを滑らかに保つ役割が。閉経に伴い女性ホルモンが急激に減少し、ホルモンバランスが崩れることが一因と考えられます。通常、閉経前後が最も症状が強く出る傾向があり、閉経後数年で少しずつ消えていきます。

要因2. 加齢
筋肉は年を重ねても鍛えることができますが、筋肉と骨をつなぐ“腱”は、加齢とともに衰えてしまうため

要因3. 日常生活における習慣
パソコンやスマホによる手指の酷使、スポーツ、楽器、編み物といった手指を使う趣味など、日常の習慣や趣味が一因となることも。

「加齢に加え、日々の疲労が積もり積もったところに、女性ホルモンの急激な減少が起こることで発症することが多いようです」(中村先生)

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代表的な疾患は?

多く見られるのは「ヘバーデン結節」

手指が痛む女性のイラスト

40~50代の女性に見られる手指の関節の疾患には、主に以下のようなものがあります。

●ヘバーデン結節
ヘバーデン結節は、指の第1関節の軟骨が摩耗することで、関節の変形、腫れ、屈曲などを起こす病気。すべての指について起こる可能性があり、指の変形性関節症に分類されます。赤く腫れたり、痛みを伴ったりします。

また、動かしにくくなり、関節が変形することも。
原因ははっきりと解明されておらず、手の使いすぎ、遺伝、ホルモンバランスの乱れなどとの関わりが指摘されています。

●ブシャール結節
へバーデン結節と同様の症状が、指の第2関節にみられるものをブシャール結節と言います。

●ばね指(弾発指[だんぱつし])
「ばね指」とは、指に発症する腱鞘炎の一種。腱鞘炎になると指の付け根に痛み、腫れなどが生じます。さらに進行すると、引っ掛かりが生じ、ばね現象(ばね指)が起こります。

指の使い過ぎが一因。日ごろから手や指を酷使している人(パソコン作業、スポーツ、楽器など)は、腱と腱鞘に常に大きな負荷がかかっているため、炎症が起こりやすいと言われています。女性は、年齢が上がり、女性ホルモンの分泌が低下すると、筋力や骨密度が低下するだけでなく、腱や腱鞘自体ももろく傷みやすくなるため、ばね指を発症する可能性が高まります。

●ドケルバン病
手首の親指側で痛みや腫れを感じるものを、「ドケルバン病」と言います。親指に起こる腱鞘炎の一種。パソコンやスマホの使い過ぎにより起こることが多く、オフィスワーカーに多いようです。

●母指CM関節症
母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)は、「握る」「つまむ」など、母指に力を必要とする動作で、母指のつけ根で痛みが起こります。進行すると膨らんできて母指が開きにくくなったり、母指の指先の関節が変形したりします。家事などによる指関節への負担、スポーツ、遺伝などが一因と言われています。

●手根管症候群
手の親指から薬指にかけてしびれ、痛みを感じる病気です。手のひらの付け根部分にある「手根管」の中を通る正中神経が圧迫されて起こります。原因は特に不明で、妊娠・出産期や更年期の女性が多く生じるのが特徴。女性のホルモンの乱れによる滑膜性の腱鞘のむくみも原因の1つと考えられています。

●関節リウマチ
関節内の滑膜に抗原抗体反応(体にとって異物となるもの[抗原]が体内に入ってきたとき、それに対抗する抗体を作って、抗原を排除しようとする反応)が起こることによって、関節内に慢性の炎症が生じます。指関節だけの病気ではなく、全身に起こりうる疾患です。関節がこわばり腫れて痛むことから始まり、進行すると関節の変形や破壊が起きて機能障害を引き起こします。30代後半から女性に多く発症。原因はまだよくわかっていません。