ほぼ全ての肝疾患に効果がある

糖尿病と並んで、最もよく研究されているのが、肝臓病に対するコーヒーの効果です。

コーヒーは肝機能の数値を改善し、ウイルス性肝炎、アルコール性肝機能障害、非アルコール型脂肪性肝疾患、それが進行した非アルコール型脂肪肝炎(NASH)、さらに肝硬変や肝臓がんまで、ほぼ全ての肝疾患の予防・改善効果があることが、これまでの研究で確認されています。またその効果は、肝臓を患っている患者さんほど強く現れます。

例えば、慢性のウイルス性肝炎には、B型にもC型にも改善効果が認められています。コーヒーに含まれるカフェインや、コーヒーを焙煎したときにできるコーヒー酸に抗ウイルス作用があり、肝炎ウイルスの増殖を抑えるのです。

データが豊富なC型肝炎では、コーヒーを飲む習慣のある人は、飲まない人に比べて、肝臓の線維化(肝臓の細胞修復の過程で、異常に大量の瘢痕組織がつくられること。線維化が進むと、肝臓の細胞が本来の機能を果たせなくなる)や肝硬変への進行が抑えられていました。

肝硬変や肝がんのリスクが高いNASHには、コーヒーが肝臓の炎症を抑え、脂肪の蓄積を改善して脂肪肝を元に戻すような作用があることが、動物実験でわかっています。

また、これまでの研究で、コーヒーを常飲している人には、肝臓の線維化の進行や肝硬変が少ないことも報告されています。それを裏付けるように、2015年に発表された論文で、コーヒーを飲むことによって線維化の危険性が27%、肝硬変の危険性が39%低減することが判明しました。

さらに、別の論文によれば、コーヒーを1日3杯以上飲むと、肝細胞がんのリスクを56%も減らせるそうです。

このようにコーヒーは、糖尿病にも肝臓病にも、まるで薬のような効果を発揮するのです。しかも、効果は1日2〜3杯から現れます。多くのデータを見ると、3〜5杯が推奨されています。ですから、それくらいを常飲すると、糖尿病、肝臓病だけでなく、さまざまな病気を予防し、結果として寿命を延ばすことができるのです。

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一時的には上がるが長期的には高血圧を防ぐ

「コーヒーを飲むと、血圧が上がる」 そう信じ込んで、コーヒーを避けている人もいるのではないでしょうか。

しかし、それは誤解です。コーヒーの常飲で高血圧になることは、まずありません。それどころか、動脈硬化や心筋梗塞(心臓の血管が詰まって起こる病気)など、心血管系の疾病によい影響をもたらすのです。

コーヒーが血圧によくないイメージが強いのは、カフェインが多いからでしょう。カフェインは脳に作用して、興奮作用や覚醒作用を起こします。また、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうちの交感神経を刺激して、心臓の働きを強めたり、脈拍を増加させたりします。

そのため、コーヒーを飲むと、確かに血圧がわずかに上がり、脈拍も少し速くなります。しかし、それは一時的な反応で、時間がたてば元に戻ります。むしろ長期的には、高血圧のリスクを減らす働きがあるのです。

その朗報は、コーヒー豆の最大の生産国、ブラジルからもたらされました。

35〜74歳の一般住民約1万5000人の疫学データから、高血圧のない8780名を抽出し、コーヒーの摂取量と高血圧の発症リスクを解析したところ、コーヒーを1日1〜3杯飲む人は、飲まない人に比べて18%リスクが低下。非喫煙者に絞ると、そのリスクは21%に低下したのです。

つまり、毎日習慣的にコーヒーを飲んでいると、血圧が上がるどころか、高血圧になりにくいのです。タバコを吸わなければ、さらによいということです。

コーヒーは、インスリンの感受性を上げて、ブドウ糖の肝臓への取り込みを増やしたり、動脈硬化を抑えたりする作用があります。そうした血管へのよい作用が、血圧を下げる方向に働くのでしょう。

とはいえ、カフェインに血管を収縮して血圧を上げる作用があるのも事実です。コーヒー200〜3000mlを一気に飲んで、収縮期血圧が8mmHg上がったという報告もあります。

しかし通常は、こんなコーヒーの飲み方をしません。普通の量を普通に飲んでいれば、こうした急性の作用は起こりえないことです。

また、毎日コーヒーを飲んでいると、カフェインの刺激に体が慣れてきますから、カフェインの作用はあまり考えなくていいでしょう。

ただし、普段コーヒーを飲まない人で高血圧があり、血圧が不安定な人は、念のため、主治医に相談してください

カフェインが気になるようなら、ノンカフェインのコーヒーを飲むのも一つの方策です。コーヒーの健康効果は、ノンカフェインでもそれほど大きく変わりません。