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 新宿の喧騒とは少し離れた場所に店を構える隠れ家鮨店『鮨あかつき』が注目を集めています。2022年3月にオープンしたばかりの店が脚光を浴びるきっかけとなったのが、応援購入サービス『Makuake』で実施中の特別コースが味わえる限定会員募集のプロジェクト。『日本酒好き泣かせの鮨×日本酒の完全なるペアリングを楽しめる、特別会員』を募集したところ、目標金額50万円のところを6/22現在で591万9000円、なんと1183%もの達成率になったのです。

 寿司10貫×日本酒10種のコースは1人前12000円。店主がこの寿司ネタにはこのお酒を、と一つ一つ吟味するため、一貫ごとに日本酒も変わります。全10種類の握りに、10銘柄の日本酒をぐい呑みに一杯ずつペアリングで提供するというスタイルに、食べる前からワクワクが止まりません。

店主のこだわり、寿司と日本酒、一つ一つの表情が楽しい極上の時間


店内はカウンター席と個室テーブル席があり、白木を基調とした落ち着いた空間。愛らしい箸置きも心和ませる

 店主は、街場にある小さな鮨店で修行を重ねたのち、ホテルの高級鮨店や和食料理店、無国籍料理店など、さまざまな業態を経験。元々この地にあった『鮨あかつき』の屋号はそのまま引き継ぎ、店内をリニューアル、3月にオープンしたとのこと。

 今回のコースが生まれたきっかけは「日本酒の旬を最も感じてもらうこと」。寿司のネタと同じように、日本酒にも旬があり、春は「無濾過生原酒」、秋は「ひやおろし」など季節を感じることができます。

「魚と組み合わせることで、日本酒をもっと美味しく味わえる。そして、その美味しかった思い出が、日本酒の楽しみに繋がっていきます」(店主)。だからこそ、寿司1貫に日本酒1銘柄での提供となったのです。今回は、話題の寿司10貫×日本酒10種のコースを一足先に堪能してきました!

この日の先付は初夏を感じるとうもろこしと新じゃがいも


とうもろこしの豆腐と新じゃがの芋餅のいそべ。海苔で挟んで食べる

 この日、最初に出てきたのは、豆鉢にとうもろこしの豆腐、そして海苔の上に甘辛味の醤油が塗られた新じゃがの芋餅。とうもろこしの豆腐には上にワサビがのっています。とうもろこしの豆腐はほんのり甘く、さっぱり涼やか。とうもろこしの粒々がプチプチといい食感。逆に新じゃがの芋餅はもっちり&海苔のパリパリ感がいい。

「芋餅は、以前働いていた店に北海道出身の方がいて教わったんですよ。毎年この季節になると作りますね」と店主。新じゃがの季節にしか味わえないお餅です。

 この後、酸味とフルーティーさを感じるトマトの茶碗蒸し(これも初夏限定)も出され、いよいよお寿司と日本酒のスタートです。


イサキの握りには、山口県、永山酒造の「Drunk Monkey」純米吟醸酒。器もガラスで涼やか

 一皿目はイサキの握りと「Drunk Monkey」純米吟醸酒。この日のイサキは長崎で採れたもの。お酒はさっぱりかつ、スッとした喉越しです。

「10種出すお酒は全部辛口です。甘みや酸味、しっかりしている、スッキリしているなど、それぞれ特徴が違います。味の奥行きを感じてほしいですね」と店主。1杯目ということもあり、飲みやすさも意識して「Drunk Monkey」をセレクトしたとのこと。イサキの淡白かつさっぱりとした味とのバランスも絶妙です。

 お寿司1貫にぐい呑みのお酒1杯は、お酒の量が多いように感じますが、「お酒は一貫ごとに飲み干さなくても、お漬物などを間で出しますので一気に行かずに楽しんでくださいね」とのこと。この日は握りが出てくる合間にワサビの茎のお漬物や、ガリなどが出てきました。


兵庫のアジには佐賀の基峰鶴、夏酒純米生酒。鳥獣戯画のような絵の杯も素敵。酒器を愛でる楽しさも

 脂がのった兵庫のアジに合わせるのは、佐賀にある基峰鶴酒造「基峰鶴」の夏酒純米生酒。その名の通り、夏限定のお酒で、最初に甘味と旨みが、後からキレを感じる味わいで、アジの強さと好相性。アジの上には生姜の他に梅がのっているのも初夏らしさを感じます。


北海道の毛蟹と李白のうすにごり酒生酒。おかめの顔の酒器が愛らしい

「これは一口で食べてもいいですし、上からちょっとずつ、つまみながらお酒を、という楽しみ方のできる握りですね」。と言われて出てきたのが、蟹の握り。お酒は島根にある李白酒造のもの。ほんのりですが炭酸感もあります。

 蟹には蟹酢がかかっていてフワッと甘く、繊細かつほどけるような食感。薄濁りのお酒はしみじみとした美味しさが感じられます。かにをちょっと摘んでお酒をちょこっと飲んで。このちびちび感も大人の寿司とお酒の味わい方。がっつかずに上質のものを少しずつ。これがたまらない。


マグロの赤身(漬け)に、誉国光の、日本酒仕込みの柚子酒 炭酸割り。フルーティーな美味しさ!

 そして、今回のマッチングで一番意外性があったのは漬けマグロに半分だけゴマをまぶした握りと柚子酒の炭酸割とのマッチング。群馬の土田酒造が作る「誉国光」の柚子酒は、日本酒で仕込んだ柚子酒。フルーティーかつ爽やかな味わいです。漬けマグロにゴマ、というのも初めてですが、そこに柚子のお酒を合わせるのも初めて。

「これは遊びですね。自由に感じてください」と店主。日本酒なのにカクテルのような感覚で味わえる柚子酒の炭酸割りとお寿司。固定概念に縛られていない。だからこその「遊び」なんですね。


北海道のうにと洗心の純米大吟醸。究極の贅沢を感じる

「久保田の千寿、万寿の上、一番ハイグレードのお酒なんですよ」と出されたのは新潟の朝日酒造、洗心の純米大吟醸。これも少しずつ味わいたい、うっとりするほどの美味しさ。

 蟹同様、ウニも一気に行かずに、上の方を少しつまんでお酒と味わうと、思わずにやけてしまう組み合わせ。ウニだけとお酒を堪能した後、赤酢のシャリとウニを味わい、そしてお酒へ。ウニのとろける感覚、そして赤酢の鮨飯の存在感、さらに洗心の淡麗ながらもふっくらとした味わいが全てをまとめ上げる感覚。寿司と日本酒のマッチング、終盤になっても新たな驚きと喜びに浸れます。

ルールはなし!あまり考えず、感じて自宅のような感覚で楽しんでほしい


シメのとろ鉄火巻。芽ねぎのシャキシャキ感がいいアクセントに

 この日、最後に出されたのは、とろ鉄火巻きに辰泉の特別純米酒。海苔のパリパリ感、芽ねぎのシャキシャキ感など、食感も楽しい巻物です。福島の地酒、辰泉の特別純米酒は超辛。今回飲んだ10種の中で一番キレが良くスッと消えていきます。個人的には、シャリやネタもとてもいいけれど、このお酒は海苔と合う! 海苔とお酒だけでもいける気がします。

「この海苔も実はいい海苔なんですよ」と店主。海苔は丸山海苔の「こんとび」。有名寿司店やミシュラン掲載店などでも採用されている極上の海苔で、寿司の旨みを引き立ててくれる海苔として知られているものです。

 10貫、10種のお酒を味わった後、お味噌汁が出てコースは終了。あっという間の贅沢な時間でした。


「自由に楽しんでください。作り手の意図は気にせず感じたままに」(店主)

 寿司やお酒はもちろんのこと、器の一つ一つを愛でるのも楽しく、店主との会話も心地よい『鮨あかつき』。このプロジェクトはAll in型。目標金額の達成に関わらず、プロジェクト終了日の2022年7月9日までに支払いを完了した時点で、応援購入が成立するとのこと。『Makuake』で応援購入した方だけがいただける今回のコースは、7月10日より電話予約がスタートし、13日から店舗で楽しむことができます。

「有名で高いお酒が美味しいのは当たり前、それより、まだあまり知られてない蔵元の、さほど高くないお酒の中にもこれは、というお酒がある。そんなお酒をこのコースで知ってもらいたいですね」。と語る店主。

 自らのことを感覚人間だと話す店主。だからこそ、食べにくるお客様は堅苦しく考えず、大袈裟だけれどまるで自宅にいるようなイメージで味わってほしいとのこと。

 そして、提供する寿司のネタは「来てからのお楽しみ。全部前もって伝えたら楽しくないでしょ。基本的には全部隠しておきたいぐらいですよ」。なので、どんなお寿司が出てくるのか、そしてどんなお酒が一緒に出されるのかはその日次第。だからこそ、春、夏、秋など期間を空けて複数予約を入れるのもおすすめですよ。

(取材・文◎いしざわりかこ)

●SHOP INFO

店名:鮨あかつき

住:東京都新宿区西新宿7-8-11 中川ビル 1F
TEL:050-3628-4925
営:12:00~15:00(L.O.14:00)、18:00~22:00(L.O.21:00 最終入店20:00)
休:不定

「Makuake」
日本酒好き泣かせの鮨×日本酒の完全なるペアリングを楽しめる、特別会員を募集
https://www.makuake.com/project/sushiakatsuki