バラ園で育まれた美意識
バラの花のデッサンを続けたディオールは、デザイナーとして発表したコレクションに、「ティーローズ」「ポンポンローズ」「ローズガーデン」「イングリッシュガーデン」と、バラにまつわる名前を付けている。
1956年の春夏コレクションでは『ローズ フランス』というアフタヌーンドレスが登場した。プリントは、バラの花だけでなく葉や茎をもモチーフとし、まさに彼のバラ園そのもののように見える。
また船の航海の際の羅針図を意味する「コンパスローズ」と名付けたコレクションもある。彼にとってはバラが行先を示す羅針図だったのでは、とも思える。美しいだけでなく、ノルマンディーの海からの強風に耐えて咲く、野生のバラやオールドローズの強い姿が脳裏にあったのかもしれない。
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花のような女性
彼のファッションは、常に「花のような女性(femme-fleur)」を目指した。
「女性をバラの花のように美しく、幸福にしたい」という言葉も残している。
亡くなるまでに活動した期間はわずか10年間。だが彼がフランスのファッション界に残した遺産は、計り知れない。