バラの香り

香水「ミス ディオール」
香水「ミス ディオール」の広告のために、ルネ・グリュオーが描いたイラストレーション。Rene Gruau / Dior

ディオールはドレスだけでなく、バッグや、靴、帽子など、すべてをトータルにデザインすべきと考えていた。そしてその最終仕上げが、フレグランス=香水だった、1947年に最初の香水「ミス ディオール」が発表された。

「ミス ディオール」は、ジャスミンとバラのエッセンを用い、バラはオールドローズのロサ・ケンティフォリアの香りだった。香料のためのバラは、南仏のグラース近くのディオール専用の有機バラ園で、妹のキャサリン・ディオールが主に栽培部門を担当していた。

ディオールのヘッドドレス
野の花と蜂で飾られた、シルク地のヘッドドレス。Photograph by Tierney Gearon / Dior。

『ディオールとバラ』の記述によると、2020年にグランヴィルの美術館近くの約5万㎡の土地に、香料採取用のバラ園がつくられ、何千株ものバラが植栽された。そこにはフランスの育種家アンドレ・イヴが、ディオール家の庭園にあったバラのルーツをたどり、長年の試作の末に生み出したバラが植えられている。そのバラは‘グランヴィルのバラ’(‘The Rose de Granville’)と名付けられた。

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クリスチャン・ディオール美術館

クリスチャン・ディオール美術館の正門
グランヴィルの小高い丘に佇むクリスチャン・ディオール美術館の正門。AnnDcs/Shutterstock.com

パリから西に340kmほど行くと、ノルマンディーの港町グランヴィルに至る。

イギリス海峡を一望する丘の上に建つディオールの生家は、1938年にグランヴィル市の所有となり、1997年に「クリスチャン・ディオール美術館」としてオープンされた。

2021年の「ディオールとバラ」に続き、2022年は「ディオールの帽子」(「Chapeaux Dior!」)(10月30日まで)という展示が開催されている。

バラ‘クリスチャン・ディオール’‘Christian Dior’

バラ‘クリスチャン・ディオール’‘Christian Dior’

1958年、フランス、メイアン作出。

ディオールが亡くなった翌年、デザイナーに捧げられたバラ。

四季咲きで、長い枝に剣弁高芯咲きの鮮やかな赤色の花をつける。

花径10~15cmの大輪。

樹高150~180cmで、樹形は直立性。

枝変わりに‘つるクリスチャン・ディオール’がある。

Information

Musee Christian Dior

住所:1 Rue d’Estouteville 50400 Granville France

電話;+33 2 33 61 48 21

開館:2022年は5月14日~10月30日10:00~18:30

入館料:大人9€ 学生7€、

庭園:年中無休(季節により開園時間が異なる)、入園無料

H.P.:www.muse-dior-granville.com

アクセス:パリ、モンパルナス駅からグランヴィル駅まで、電車で約3時間。駅から徒歩約20分。

 

取材協力:クリスチャン・ディオール株式会社

Credit

写真&文/松本路子

写真家・エッセイスト。世界各地のアーティストの肖像を中心とする写真集『Portraits 女性アーティストの肖像』などのほか、『晴れたらバラ日和』『ヨーロッパ バラの名前をめぐる旅』『日本のバラ』『東京 桜100花』などのフォト&エッセイ集を出版。バルコニーでの庭仕事のほか、各地の庭巡りを楽しんでいる。2018-22年現在、造形作家ニキ・ド・サンファルのアートフィルムを監督・制作中。

『秘密のバルコニーガーデン 12カ月の愉しみ方・育て方』(KADOKAWA刊)好評発売中。www.matsumotomichiko.com/news.html