糖尿病の予防効果がある特許取得成分を含有

●血糖値を下げる

梅干しはまた、糖尿病対策にも役立ちます。

糖尿病治療に使われる「α-グルコシターゼ阻害剤」という経口薬があります。α-グルコシターゼは、小腸での糖質の吸収を促す酵素です。この酵素の働きを妨げることで、糖質の吸収を遅らせ、食後の血糖値上昇を抑えます。

私たちは実験により、なんと梅干しにもこの薬と同じ働きをする成分が含まれていることを発見しました。それが、梅のポリフェノール成分であるオレアノール酸です。糖尿病の予防効果があると認められ、α-グルコシターゼ阻害剤として、特許を取得しています。

●脂肪の燃焼を促す

高血圧、動脈硬化、糖尿病ときたら、肥満も生活習慣病のひとつです。しかも、歳を重ねると代謝が悪くなり、脂肪を燃焼しにくくなります。そうした経年の変化も、ダイエットを難しくする要因です。

けれども、そんな人こそ梅干しを活用してください。梅干しには脂肪燃焼作用のある「梅バニリン」という機能性成分が含まれています。

バニリンの効果については、疫学調査によっても、その有効性が示されています。和歌山県紀南地域に住む女性201人を対象にした疫学調査によると、梅干しを毎日食べている人は、食べていない人に比べて、BMI値(肥満度の指標)が低いということがわかりました。

脂肪細胞を培養して調べたところ、梅干しは脂肪細胞に刺激を与え、その燃焼を促すことがわかりました。その成分の主体が、バニリンだったのです。

ちなみにバニリンは、加熱すると増えることがわかっています。軽くあぶって、「焼き梅干し」にして食べることで、より高い効果が望めるでしょう。梅干しを食べてダイエットが成功に近づくなら、肥満に悩むかたは試す価値があります。

体液の酸性化を防ぐ

その酸っぱさから酸性食品と思われがちですが、梅干しは代表的なアルカリ性食品です。かたや、主な酸性食品を挙げると肉や魚、卵、穀類です。現代人はしばしば、酸性食品のとり過ぎが指摘されます。

私たちの体液は常に弱アルカリ性に保たれており、わずかでも酸性に傾くと、体内で炎症が起こりやすくなり、さまざまな病気の発症につながります。梅干しのようなアルカリ性食品を積極的にとることで、酸が中和され、健康体に近づきます。

梅の健康効果は、枚挙にいとまがありません。次項で、さらに詳しく解説しましょう。

(広告の後にも続きます)

胃がんの原因・ピロリ菌の動きが止まった!

前項に続き、梅の多彩な効能について検証しましょう。

●細菌の増殖を抑制する

「梅はその日の難逃れ」といいますが、梅干しを口にすることで逃れられる災難のひとつが、食中毒です。

梅干しを弁当に入れておくと食材が傷みにくいというのは、よく知られています。これは主に、梅干しに含まれるクエン酸などの制菌作用によるもの。食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌や病原性大腸菌の増殖を抑制してくれるのです。

かつて我々が携わった研究グループが行った実験でも、試験管内に梅干しを加えた物は、そうでない物に比べ、細菌の増殖が抑えられていました。

梅干しが細菌の増殖を抑制するなら、胃炎や胃潰瘍の原因となるピロリ菌にも効果があるのではないか──。そう仮説を立てた私たちは、また別の実験を行いました。元気に動き回るピロリ菌に梅干しを添加して観察したところ、10分もしないうちに、ピロリ菌の動きがピタリと止まりました。

ピロリ菌の活動を止めた成分は、梅干しに含まれる梅リグナンというポリフェノールのうち、シリンガレシノールという成分と判明。さらにピロリ菌に感染させたマウスに梅を与えると、胃がんが抑制できることも確認しました。梅干しには抗がん作用もあるとわかったのです。

●ウイルスの増殖を抑制する

細菌に対する効果だけではありません。梅干しは抗ウイルス作用にも優れています。私たちは、梅干しの中にインフルエンザウイルスの増殖を抑えるエポキシリオニレシノールという成分があることを、世界で初めて発見しました。

実際、梅の名産地である和歌山県ではインフルエンザ対策として「梅酢うがい」が家庭や学校で、普通に行われています。

梅酢とは、梅干しを作る工程の副産物で、非常にしょっぱくて酸っぱい液体です。塩だけなら白梅酢、シソ漬けなら赤梅酢ができます。これを水で10倍に薄めて、うがいをするのです。

地域の役場の話によると、梅酢うがいのおかげで、和歌山ではインフルエンザによる学級閉鎖が少ないとのこと。梅干しに含まれる有効成分が、免疫力の向上に寄与していると考えられるでしょう。私自身も、毎日梅酢うがいをしており、長年インフルエンザとは無縁です。

梅酢うがいで感染症対策!

梅酢は、100倍程度に薄めれば、スポーツドリンクがわりにもなります。疲労回復や、真夏の熱中症対策にも有効です。梅の成分が溶け出しており、梅干しと同様の効能が期待できます。捨ててはいけません。

梅酢の使い方として、ぜひお勧めしたいのが「梅酢塩」。底の浅い容器に梅酢を入れ、天日でカラカラになるまで乾燥させて塩を作るのです。おにぎりを握るときにつけたり、肉を焼くときに振ったりすると、それだけで抜群においしくなります。

高濃度の塩分が含まれているので、とり過ぎには注意が必要ですが、家庭に梅酢があるかたは、ぜひお試しください。