発酵デパートメントから新発売の「発酵丸。」が労うものとは

世界の発酵食品が集まる専門店『発酵デパートメント』(東京・下北沢)が新たなオリジナル商品を販売すると聞き、一足お先にいただいてきました。これまでも「アウトドア納豆」「黒麹あまざけ」「土と種の味がするぶどう酒」など、独自の商品開発がファンの獲得につながってきた発酵デパートメントにとって、今回はオリジナル商品初のお菓子です。

オリジナル菓子、その名は「発酵丸。」

「以前から、差し入れやおもたせになる発酵食品のリクエストをもらうことがありました。僕の好きな中国の食文化には、お月見などでみんなで集まったときに月餅を食べる習慣があるんですけど、あんな風に老若男女みんなが食べられて、ちょっとしたお祝いやめでたい感じのあるお菓子をイメージしました。さらに日本らしさと、発酵デパートメントらしさもあるものを目指してできたのが発酵丸。です」(小倉ヒラクさん)

飲食エリアに加えて、さまざまな発酵食品がところ狭しと並んだ発酵デパートメントの販売コーナーにて。ここはさながらテーマパークのように、同類であっても多様な発酵食品が集まっています
新発売の「発酵丸。」は「。」までが商品名

体(たい)を表す名の通り、見た瞬間に思わず気持ちがゆるむような、まあるいフォルム。個包装を開けると、焼印された発酵デパートメントのロゴから香ばしさが鼻孔をくすぐります。 

「小麦とあんこで作られた月餅をイメージしながら、具体的には、精進料理のお菓子である、くるみ餅みたいな味を考えていました。結果として、今回の発酵丸。の最大の特徴は、納豆入りの月餅になったことです」(小倉ヒラクさん)

納豆といっても、それは「一休寺納豆」のこと。蒸した大豆に、大麦を炒ったはったい粉をまぶし、麹と一緒に発酵させてつくるものです。納豆と名はつくものの、糸を引くこともなく、納豆菌を使った発酵食でもありません。

とんち名人として有名なあの一休さんが晩年を過ごしたという京都府京田辺市のお寺、酬恩庵(しゅうおんあん)、通称「一休寺」さんでは、庫裏(くり)と呼ばれる境内の一角でこの「一休寺納豆」を作り続けています。

「一休寺納豆は味もおいしいんですが、何よりもエピソードがいいんです。約500年前、一休さんは中国の豆豉(とおち)に似たこの一休寺納豆の作り方を考案し、お肉を食べない僧侶たちのタンパク源にしていました。1467年に応仁の乱が起きると、焼け出されてしまった人々に一休寺納豆を配ったそうです。その話から、誰かの苦労やがんばりを労うようなお菓子にしたいと思って、新商品に使うことをご住職に相談しました」(小倉ヒラクさん)

発酵デパートメントの店頭およびオンラインショップでも購入できる一休寺納豆

(広告の後にも続きます)

初めてなのに知っている味

初めてなのに知っている味

発酵丸。のあんこに「たっぷり練り込まれている」という一休寺納豆ですが、食べてみると、存在を消してはいないものの前面に出過ぎることはありません。それでもほんのりと効いた塩気と、遠くから手を振ってくれている程度に感じる豆の味わいと発酵感。初めて食べるはずなのにどこか懐かしく、安心感のあるおいしさです。これは確かに、家族や親戚、気のおけない友達との時間にぴったり。

発酵デパートメントはオープン以来一貫して、食べる人の「味覚の拡張」や「おいしいの範囲を広げる食体験」をテーマに、誰も食べたことないけどおいしいフードメニューを提案してきました。今回の発酵丸。も、想像力をフル回転させながら一口目を頬張り、絶妙な味わいから二口目以降はやみつきになる、そんな味覚の新体験を実現しています。

「ふだんのお菓子としてはもちろん、ちょっとしたお祝いごととか、お月見やお花見のような季節を愛でるときに、みんなで楽しんでもらえると嬉しいです」(小倉ヒラクさん)