ある暑い夏の盛りのことです。営業の外回り中だった夫に突然のめまいと吐き気が襲いました。帰宅するなり大量の汗をかいて、玄関先に倒れ込んだ夫。いつも忍耐強い夫の尋常ではない様子に、慌てて救急外来を受診した結果と原因は……。今回は、当時39歳だった夫のことをお話しします。

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突然のめまいと吐き気で夫が帰宅

当時、私はまだ子どもがいない専業主婦でした。夫は営業職をしており、数年前に新会社設立のスターティングメンバーとして鳴り物入りで親会社から出向していました。

設立当初は順調に活躍していましたが、国の制度変更で会社の経営は右肩下がりに……。夫は慣れない土地に転勤を強いられた上、パワハラ体質の社長に日々罵倒されるという理不尽な環境での勤務が続いていました。さらには炎天下の中、飛び込み営業をしろという指示を受ける日が続いていたのです。

 そんな日々が当たり前になってしまっていた暑い夏のある日、私が家で涼しくテレビドラマを満喫していると玄関が開く音がしました。どうやら、仕事で外回りをしているはずの夫が帰ってきたようでした。しかし、どれだけ待っても夫が部屋に入ってくる様子はありません。

しかもよく聞くと、玄関から「助けて……」 と切羽詰まった声で訴えているのです。 私は突然のことで状況がつかめず、「助けてってなんだろう? なんかのサプライズかな?」とそこまで深刻にも思わずに部屋から夫を出迎えました。

しかし、どうやら様子がおかしいのです。膝をつきながらトイレまではっていき、便器にしがみつく夫。額には大量の汗をかき、めまいと吐き気を訴えていました。夫は暑い中を歩いて帰ってきたとのことだったので、初めは熱中症の可能性も疑いました。

私は過去に看護師として働いていた経験があったため、熱中症だった場合に緊急性の高い症状をひと通り確認しましたが、どれも当てはまりませんでした。

また、ろれつなどにもおかしい部分はなかったので、脳に何かの異常がある可能性もこの時点では低いと想定しました。夫の様子に慌てて救急車を呼ぼうかとも迷いまいしたが、このときは一旦思いとどまりました。

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そのまま救急外来を受診

とはいえ、夫の尋常ではない様子から症状があるうちに病院を受診したほうが良いと感じ、すぐ車に乗せて最寄りの病院にある救急外来に行きました。

金曜日の夕方だったこともあり、待合室は順番待ちの人でいっぱい。不安も相まって、ずいぶん長い時間待ったような気がしました。待合室でつらそうにする夫に横になるよう促しましたが、なぜか横になるのを嫌がっていました。

幸か不幸か、順番を待っている間に夫の症状は軽快してきました。

診察室で、問診と医師の指示により頭を傾けたり、起き上がったりという診察を受けた夫。診断の結果は、「良性発作性頭位めまい症」でした。

良性発作性頭位めまい症は頭の向きを変えたときや、ある特定の位置に頭を向けたときに発作性のめまいを生じるのが特徴だそう。待合室で夫が頑なに横になりたがらなかったのは、横になることでめまいが強く感じられたからだったのです。

この病気の原因は、内耳の耳石が剥がれたことによるものだそうです。耳石とは、方向などを感知するための耳の中にある炭酸カルシウムの結晶です。何らかの原因で剥がれ落ちた耳石が耳の奥を刺激すると、強いめまいが引き起こされるとのことでした。

医師が言うには、耳石が落ちる仕組みについては不明な点が多いものの体質や過労、ストレスが原因だと考えられるとのこと。夫の症状も軽快していたため、めまい止めの薬をもらい自宅で安静にすることになりました。