おひとりさま暮らしになると、料理研究家の私でさえ、食事の支度はどうしても面倒に感じてしまいます。ですから「ちゃんと食べる」ためには「なるべくがんばらない工夫」も必要。それには、野菜とたんぱく質が一度にとれるおかずを常備しておくのも一つの手です。今回は「サバ缶酢タマネギ」をご紹介します。【解説】村上祥子(料理研究家・管理栄養士)

解説者のプロフィール

村上祥子(むらかみ・さちこ)

1942(昭和17)年、福岡県生まれ。福岡女子大学客員教授。1985年より福岡女子大学で栄養指導講座を担当。治療食の開発で、油控えめでも1人分でも短時間においしく調理できる電子レンジに着目。以来、研鑽を重ね、電子レンジ調理の第一人者と注目される。生活習慣病予防改善のためのレシピ開発も行っており、「たまねぎ氷」や「バナナ酢」など、数々のヒットを持つ。『60歳からはラクしておいしい頑張らない台所』(大和書房)は、料理レシピ本大賞2020エッセイ賞を受賞するなど、現役高齢料理研究家としての生き方にも注目が集まっている。

(広告の後にも続きます)

野菜とたんぱく質が一度にとれるおかず

私は現在80歳。自慢じゃありませんが、かなり元気です。毎日、自宅の2階の料理スタジオと3階の自室を何度も往復していますし、食材の買い出しも自分で行きます。

1日の歩数はだいたい1万歩。重い圧力鍋を片手でひょいと持ち上げて、生徒さんたちに驚かれたこともありました。

その元気の源は、「ちゃんと食べる」こと。私は、30代後半から40代にかけて大病を患い、大がかりな手術を10回も受けています。満足に食事をとれなかった当時の経験から、「命を支えるのは日々の食事」と悟りました。

しかし、子供たちが独立し、夫にも先立たれておひとりさま暮らしになると、料理研究家の私でさえ、食事の支度はどうしても面倒に感じてしまいます。だからといって、食事を抜いてはパワーが出ません。

ですから「ちゃんと食べる」ためには「なるべくがんばらない工夫」も必要だと思います。

例えば、ご飯やパスタは1食分ずつ小分けにして冷凍保存。もちろん、市販のパックご飯などでも構いません。主食をいつでも食べられるようにしておけば「面倒だから、食事はお菓子で済ませてしまおう」なんていうことは防げます。

では、「ちゃんと食べるための、なるべくがんばらないおかず」はどうすればいいでしょうか? それには、野菜とたんぱく質が一度にとれるおかずを常備しておくのも1つの手です。

今回は、そんなおかずの1つである「サバ缶酢タマネギ」をご紹介します。

サバ缶酢タマネギは、サバの水煮缶とスライスしたタマネギを、酢とサバ缶の汁、ハチミツを煮立てたものであえて作ります。使う食材には、健康維持に役立つ栄養が豊富に含まれています。

サバの水煮缶の栄養というと、EPAやDHAを思い浮かべる方が多いでしょう。EPAは、いわゆる善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やして動脈硬化を予防します。また、GLP-1というホルモンの働きを高め、食後の血糖値の急上昇を抑える力もあります。DHAは脳を活性化する働きがあり、認知症やアルツハイマー病の予防にうってつけ。

他にも、骨粗鬆症(骨の量が減り、骨折しやすくなる病気)予防に役立つビタミンDやカルシウム、筋肉の材料となるたんぱく質、老化を抑制するビタミンEやB2など、シニア世代の健康維持に役立つ栄養が、たっぷりと含まれています。

タマネギのケルセチンには強い抗酸化作用があり、動脈硬化や花粉症の予防が期待できます。よく知られている、タマネギの血液サラサラ効果は、辛味成分である硫化アリルによるもの。硫化アリルは疲労解消効果も期待できます。

酢の健康効果は、酢酸によるものです。酢酸には食後の血糖上昇を穏やかにしたり、高めの血圧や総コレステロール値を下げたりする効果があるといわれています。

サバ缶の健康効果
EPA
血流をスムーズにし、善玉コレステロールを増やす作用がある。GLP-1というホルモンの働きを高め、食後の血糖値の上昇抑制にも役立つ。
DHA
脳を活性化する働きがあり、記憶力、学習能力の向上や認知症予防効果が期待できる。
ビタミンD
骨を丈夫にするのに欠かせない。カルシウムと一緒にとると、骨密度アップ効果がある。骨ごと食べられるサバ缶は、最高の食材。
ビタミンB2
エネルギーがスムーズに作られるのを助ける。たんぱく質の代謝と合成にも関わり、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがある。美肌づくりや動脈硬化、老化防止にも役立つ。
ビタミンB12
造血作用に関わる。悪性貧血を防ぎ、血色のよい肌色にしてくれる。
ビタミンE
強い抗酸化作用を持つ。血行をよくし、冷え症や肩こりの改善に役立つ。
ロイシン
必須アミノ酸の1つ。肝機能を向上させる働きがある。腰痛や骨折を防ぎ、ロコモ予防にも役立つ。

タマネギの健康効果
動脈硬化を予防する
辛味成分の硫化アリルには、血液サラサラ効果がある。色素成分のケルセチンには、高い抗酸化作用があり、血管の老化を防いで、動脈硬化の予防に役立つ。
がんを予防する
胃がんへの予防効果が、世界がん研究基金のデータで示唆されている。

酢の健康効果
①疲労回復を助ける ②食欲を増進させる ③高めの血圧を下げる ④高めの総コレステロール値を下げる ⑤食後血糖値の上昇を穏やかにする ⑥カルシウムの吸収率を高める ⑦減塩につながる ⑧防腐・制菌作用がある